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タカシの外資系物語

人間国宝並みに “間(ま)” を空けろ! 2014.07.29

    人間国宝並みに “間(ま)” を空けろ! 

    前回の続き) 前回までのコラムでは、私が人前で話すときに気をつけていること 「(1) 略語を使わない」「(2) (日本語で同じ意味の言葉が存在する場合は)横文字 = 英語 を使わない」 についてお話しました。どちらも、ここ10年ほどの間に、ビジネス社会に跋扈してきた悪弊のように思います。双方に共通しているのは、語感がいいので、自分が仕事してるぜ! カッコいいぜ! 的感覚を持つことができること。ただし、その一方で、相手にとっては、かなりの可能性でわかりにくい言葉となっていることに留意しなければなりません。相手に伝わらないということは、単なる自己満足であって、コミュニケーションではありません。 私自身は、「田舎の母親が聞いても理解できる言葉遣い」 で話すよう心がけています。さて、今回は残り3つについてお話しましょう。


    まずは、「(3) 意識的に “間(ま)” を空ける」 です。“間(ま)” の空け方がわからない、“間(ま)” の静寂に耐えられない・・・、というなら、脱線話をしてもいい。わざと “噛んでも” いい。とにかく、間隔を入れて話すことが重要なのです。


    間を空けて話すことのメリットは、以下の通りです。


    ① 聞き手に “ちょっと一息” の時間を作る。話し手にとっては当たり前の話でも、聞き手にとっては初めて聞く話が大半のはずです。頻繁かつ定期的に、話の整理ができる時間を設けることが重要です。 
    ② あまりにも淀みなく、“立て板に水” で話すと、かえって胡散臭い。これは私の経験なのですが、私はこれまでに2回、「あなたの話はうますぎて、信用できない」と言われ、大ショックを受けたことがあります。このことは、TVショッピングを見れば、よくわかります。プロのアナウンサーが淀みなく話すのは胡散臭い。一方で、ジャパネットたかたの高田社長がたどたどしくも信念を持って話すのは好感が持てる・・・、そういうことなのです。 
    ③ 間を空けることで、自分自身を落ち着かせる。大きな会場ならば、5分に一度は間をとって、会場全体を見渡すぐらいの余裕は欲しいところですね。


    先日、人間国宝に認定された柳家小三治氏(その師匠の柳家小さん氏も人間国宝!)や桂米朝氏(これまた、人間国宝!!)など、頂点を極めた落語家さんは、“間” の取り方が本当にうまい。人間国宝諸氏と比べるなど、おこがましいにもほどがありますが、われわれビジネスパーソンも、大いに見習う点が多いように思います。

    プレゼンのたびに成長する、とは?!

    次は、「(4) 自分が100%理解していることしか話さない」 です。実はこれ、私の経験則から来ていまして、自分の理解が少しでも不足していると、話しぶりに自信がなくなり、全体がグダグダになります。たとえその部分を、質問等で突っ込まれなかったとしても、いいプレゼンにはならない。私はそもそも、小心者の心配性なので、こうなってしまうのかもしれませんが・・・


    ただし、私のように小心者でなかったとしても、自分が話す内容を100%理解しておくというのは重要です。1つには、自分のプレゼン内容をより深く理解する助けになるということ。もう1つは(これが重要なのですが)、どんなに話がうまい人でも、「あ、この人、今話している内容を十分に理解していないな!」というのは、聞き手に瞬時に伝わるものなのです。聞き手がそう感じた瞬間、それ以外の部分をいかにうまく話そうと、全体が台無しになってしまいます。


    「何か話をするたびに、その内容を100%理解して話せ! なんて、そんな暇あるかーーっ!」


    ま、そうおっしゃるなら仕方ない(暇=時間 というのは、与えられるものではなくて、自分で作るものなんですがね・・・)・・・。 
    でも一言、プレゼンのたびに、わからないことを理解する、プレゼンのたびに、自分の知識レベルが上がっていく、って、何だか素敵じゃありませんか? これは、プレゼンだけではなく、ルーティンの日常業務にも当てはまるように思います。

    役員がビジネスクラスに乗る理由

    最後は、「(5) 事前に十分な練習を積むとともに、十分に休養をとって、話す体力を温存しておく」 です。そのプレゼンが重要であればあるほど、直前まで修正作業に追われ、十分な練習もできず、徹夜&フラフラで会場に向かう・・・ ありがちなパターンですよね。相手によっては、


    「よくぞ、フラフラになるまで頑張ってくれた! 感動した、ありがとう!!(T-T)」 


    などと、無茶な働きぶりを評価してくれる向きもありました(今でも、この手の浪花節系役員さんって、結構いますが・・・)。しかし、私の感覚では、5年ぐらい前から、この手の働きぶりに対する評価の “潮目” がガラッと変わったように思います。つまり、


    「最初のプレゼンからこのようなバタバタ状態では、先が思いやられる。本当にこの人たちに任せて大丈夫なのか?」


    というネガティブな評価が多数派になってきたということです。確かに、聞き手にとってみれば、まだスタートもしていないという段階で、プレゼンターが目の下にクマを作って壇上に立っていたのでは、心配で仕方ありません。気合で働く時代は、すでに終わったのです。計画的に、余裕を持って、涼しい顔でプレゼンをすることが重要なんですよね。


    私の場合、自分がプレゼンターの場合には、前日が徹夜になりそうでも、絶対に寝ます(家に帰るのは気が引けるので、近くのビジネスホテルですが・・・)。部下がプレゼンターの場合も同様に、休養を取らせます。 
    また、海外でプレゼンを実施する際、プレゼンターである上級役員に随行することがあります。その際、「タカシ、コスト削減のために、私もエコノミーにするよ・・・」 などという役員がいたら、張り倒してください。ビジネスに乗れ、ビジネスに! ゆっくり休んで、しっかり話すのが、アンタの仕事じゃーーーーーーーーーーーー!!!


    どんなにITが進歩しても、コミュニケーションの基本は、人 対 人 です。自分なりの譲れない基準を持って、重要な商談やプレゼンに立ち向かっていただきたいと思います。では!

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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