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タカシの外資系物語

“インド式” が世界を制す?! (その2)2014.03.25

    IT業界のCIA

    前回の続き) ベストセラー 『英語はインド式で学べ!』(安田正著・ダイヤモンド社)によると、インドでは官民あげて、“インド式” の英語学習法を自ら確立し、1990年代~2000年代の約20年間で、英語人口を 10倍(!) に増やした結果、2020年には、英語を話すインド人が、世界で最も多くなるとのこと。これは私見ですが、私は2020年の段階で(もしかしたら、もっと早く!)、英語だけでなくビジネス社会全体で見ても、インドが世界をリードする時代が到来するように感じています。なぜそう思うのか? 今回のコラムでは、その理由 -ビジネス社会における “インド式” の強さ- についてお話したいと思います。


    あれはそう、2年前のこと。冒頭の内容を予感させる象徴的な出来事が起こりました。わが社において、インド支社の社員数がUS支社のそれを抜いたのです! わが社はコンサルティングのほかに、システム開発や開発後の保守作業(日常の運用・メンテナンス)も事業の柱にしており、インドはUSを中心とする英語圏の “オフショア” 拠点の中心となっています。


    “オフショア” というのは、人件費の高い自国を避け、比較的人件費の低い海外に業務をアウトソースすることを指します。かつては、US・ヨーロッパのオフショア拠点はインド、日本の場合は中国、という感じでしたが、今となってはインド・中国の人件費が高騰しており、業務推進上のオーバーヘッド・コスト(業務内容を引き継いだり、人材を育成したり・・・。文化の違いも、スムーズな業務推進という意味ではネックになる場合があり、その克服のためにコストがかかります)を勘案すると、費用対効果上、ペイしない事例も出てきました。よって、最近では、フィリピンやマレーシア、インドネシアなどに加え、東欧・ミャンマー・バングラディシュなどをオフショアとして活用する企業が増えています。


    このように書くと、「インドは欧米のオフショアとして、下請け作業を専門にしている」 とお感じになるかもしれませんが、なんのなんの、そんなことは一切ありません。いわゆる、“上流” の業務でもインド人の活躍は目覚しく、IT企業を中心に、多くのインド人経営者が誕生しています。ちなみに、私が所属する部門のグローバル・リーダー(=私の上司の上司の上司)は、インド人 です。私が専門とするコンサルティングの拠点もインドにあります。特に、インド支社が持つリサーチ能力は超がつくほど強力でして、「そんな情報、どこから見つけてきたんだ・・・」と感心することしかり。ホント、IT業界のCIAかFBIと言っても過言ではありません。

    “おもてなし” はあっても “受け皿” のない日本

    インド人ITエリートの典型的なキャリアパターンは、インド国内で英語と理数系の知識を身につけて、アメリカにMBA留学するというもの。MBAを取って、シリコンバレーで起業する。または、グローバル有数のIT企業に、幹部候補として、アメリカ人エリートと遜色ないランクで入社する。


    中国人エリートも同様のキャリアパターンを辿りますが、ことIT分野に関しては、人数という観点で、インド人エリートの方が圧倒的に多いように思います。ただし、中国人の場合は、自国が目覚しい経済発展を遂げたので、「中国に戻って起業する」 という選択肢がある分、インド人エリートより有利だと思います。マーケットとしてのインド市場は、まだ草創期の域を出ませんからね。


    さて、ここで質問です。どうして、インドや中国のエリートは日本に来てくれないのか? もちろん、アメリカのマーケットの方が、日本のそれより大きいのは事実でしょう。それは人口比以上の規模感での格差だと思います。制度的にも、アメリカで起業する方がやりやすいし、ベンチャーキャピタルやエンジェルのような投資家も山のようにいます。 加えて、日本語の特殊性や、日本社会の排他性など、色々と理由はあると思うのですが、私は、ことインド人に関して言えば、“受け皿” がない ことが大きな阻害要因になっているように思います。


    ここで言う “受け皿” とは何か? それはすごく基本的かつ単純なことなんですが、インド人にとっては死活問題となること。それは、一日三度の “食事” です。ほとんどのインド人は肉を食べない、ベジタリアン です。日本にもベジタリアンを対象にしたレストランは多数ありますが、その多くはお洒落で、どちらかというと値段が高い。食欲は人間の基本的な欲求ですから、それを抑えることはできません。その欲求を満たすために、三食全てを小洒落たレストランに通っていたのでは、いくらエリートでも早晩破綻します。


    日本人は「おもてなし」ブームが示すとおり、相手を気遣う文化が根付いているように思われがちですが、私は個人的には、日本人は外国人に対して、かなり無頓着な民族だと思っています。やれお寿司だ、やれ天ぷらだと、外国人を歓待するのはいいのですが、長期的に日本に滞在して頑張っていこうという外国人の日常生活をケアする仕組みが絶対的に不足しているのです。だから、外国人は非常に限られたコミュニティを作らざるをえない。結果、外国人と日本人とのクロスオーバーが阻害され、イノベーションが起きないのです。


    その点、“受け皿” 先進国であるアメリカの対応は徹底しています。数年前、アメリカ西海岸に出張した際に、時間ができたので、オラクル社とスタンフォード大学に行きました。で、ビックリ! オラクル社はインド人社員用に、スタンフォード大学はインド人留学生用に、完全ベジタリアンの食堂を提供していました。仮に私がインド人だとしたら、やはりアメリカ行きを希望すると思います。それほどの御しがたい差がある。


    私はダイバーシティの基本は、“対象となる相手の日常生活を保証すること” だと思っています。外国人ならば、衣食住の環境を整える。女性ならば、育児しやすい制度を作る(誤解いただきたくないのですが、育児は女性の仕事 と言っているわけではありません。事実として、女性の活躍推進を阻害している最大の要因が “育児しにくい制度” にあるということを言っています)。“受け皿” というのは、肩肘張った小難しい制度ではなくて、日常生活に立脚した “普通の環境” の提供なのだと思っています(これについては、先日、ある女性経営者との面白いやり取りがあったので、追って、このコラムでもご紹介したいと思います)。

    コブラ と マングース のバトルを仲裁する ハムスター?!

    話を戻しましょう。インド人というのは非常に面白い人たちで、私は彼ら・彼女らと付き合っていて、飽きたことがありません。本当に面白い。もちろん、長所も短所も持ち合わせているわけですが、そのどれもが “極端” なんですよね、呆れるぐらい・・・


    よく言われることとして、「インド人は自説を曲げない」 「決して No と言わない(知らないことでも知ったかぶりをする)」 という特徴があります。これらは、長所でもあるし、短所とも言えるのですが、私はビジネスにおいては間違いなく有利に働くと思っています。


    以前、社内の研修で、こんなことがありました。その研修は、短期MBAのクラスでして、アメリカの某有名大学院で行われました。その日のクラスは、「携帯電話の可能性」というタイトルだったと記憶しています。Chairman(問題提起人、というイメージ)が私で、私が自説をプレゼンして、それについてみんなで議論するという形式でした。ちなみに、立候補してChairmanになったのではありません。輪番なので仕方なし・・・。


    私は、日本の3大携帯キャリアである、NTTドコモ・au・ソフトバンクの戦略を紹介し、加えて、いわゆる「携帯電話のガラパゴス化」のような話をしたように記憶しています。私のプレゼン後、真っ先に発言したのは、見るからに仕切るのが好きそうな・・・、良く言えば、リーダーの素養があるアメリカ人でした。一般に、海外にて英語で行われる研修というのは、アメリカ人リーダーが引っ張っていく傾向が強い。というか、そのアメリカ人に、おんぶにだっことなるケースがほとんどです。Chairmanとしてアタフタしていた私は、“救世主” が現れたのでホッと一息。あとは彼に任せようと、コーヒーを取りに行こうとした瞬間、「Chairman!」と手を上げるインド人女性がいるじゃーあーりませんか!


    そのインド人、名前はNadiaというのですが、しゃべるしゃべる! 私がプレゼンした「携帯電話のガラパゴス化」をフルボッコでメッタ切り、仕切り屋のアメリカ人のプレゼンにまでケチを付け出したのです!!!


    私はともかく、アメリカ人は黙っちゃいません。その後、20分にわたり、延々とマシンガントークでの議論が繰り返されたのです。まさに、コブラとマングースの戦い! 私はさしずめ、一歩も動けずにプルプル震えるハムスターでしょうか・・・


    そのうち、クラス全体が、「Chairman、何とかしろ!」という雰囲気を醸し出してきました。みんなの視線が痛い・・・(T-T) タカシ、大ピーーーーーーーーーーーンチッ!!! さて、か弱いハムスターちゃんは、コブラとマングースの戦いを、どうやって仲裁したのか? それは、次回お話したいと思います(引っ張るね、と・・・)。

     

    次回続く

     

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

    「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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