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タカシの外資系物語

リーダーを“つくる”条件(その3)2014.01.21

    若手をOJTで鍛えられない理由とは?!

    (前回の続き) リーダーを “つくる” 条件として、「①リーダー候補自身の資質・能力・モチベーション」 「②ロールモデルとなる現行リーダー」 「③的確なアドバイスをくれるコーチ」 「④育成の場」 「⑤厳しい顧客」 の5つを挙げました。今回は、その最終回です。日本企業におけるリーダー育成施策において、最大の問題点である(と、私が思っている) 「④育成の場 と ⑤厳しい顧客 という要素を軽視していること」 についてお話しましょう。


    順番が前後しますが、まずは、「⑤厳しい顧客」 から説明します。ま、これは読んで字の通り、厳しいお客様に直接対峙して、鍛えてもらうということ。前回と同様、サッカーでいえば、FIFAランキングの低い国と何度も試合をあうるより、ランキングの高い国と真剣に勝負した方が実力がつくのと同じ理屈です。


    「そんなの、当たり前だろ!」 その通り、当たり前。しかし、最近の日本企業では、以下のような理由から、この当たり前が実践できていないのです。


    最近の若手社員は、厳しい顧客の前に出される機会そのものが、非常に少なくなっています。なぜか? それは、若手社員がお客様からクレームを受けた際、その後始末が面倒だからです。


    本来なら、営業現場においては、若手に一人ずつ、教育係の先輩がついて、一人前に育てていきます。お客様から多少のクレームを受けても、先輩の教育係はグッとこらえて、若手に自力で解決させるように誘導します。さすがに、「もうダメだ、やばい・・・」となった場合には、先輩が登場して事態を収拾するわけですが、原則、若手に任せて育てる。少なくとも、1990年代の営業現場は、そのような体制を組んでいました。


    しかし、2000年に入ったあたりから、状況が一変しました。バブル崩壊以降、景気が長期間にわたって低迷する中、企業は採用を極端に減らしました。結果、新入社員自体の数も減りましたが、並行して、新入社員の面倒を見る教育係の数も減ったため、OJTで若手を鍛えることができなくなってしまったのです。加えて、ここ数年、新入社員の数は徐々に増加傾向にありますから、ますます教育係が足りない状況になっています。


    そもそも、現場はギリギリの人数で回しています。若手の不始末に付き合っている暇などありません。お客様からクレームを受けたら、あたふたする若手をサポートするよりも、先輩や上司が即座に謝罪した方が楽なのです。このように、若手が厳しい顧客との接点を持てなくなったため、線の細い、もやしっ子(って、死語に近い・・・)のような若手ばかりになりました。いきおい、その中から、リーダーが輩出される可能性自体、極めて低くなってしまったのです。

    若手は “フルボッコ” にされるべし!

    このような状況を生んだ背景として、採用人数の減少以外に、日本企業はクレーマーに滅法弱いということがあります。道理の通らないクレーマーには、毅然とした態度を取ることで、それを横で見ている若手の勉強にもなるわけですが、ほとんどの場合は平謝りです。これではOJTになりません。


    また、現場の人数が慢性的に足りない理由として、絶対数が少ないことに加え、コンプライアンス(法令順守)に関する作業の負荷が大きすぎることが上げられます。日本人は真面目が度を越しているので、コンプラも完璧にやる。やりすぎで、いわゆる “コンプラ疲れ” の状況となり、若手を育成する時間など、到底取れなくなっているのです。


    お客様は、社員を育ててくれます。教育係の先輩の数が少ないなら、逆に、若手をどんどん前線に出して、お客様にフルボッコにされながら、育てていく方法を採ってもいいのではないでしょうか。現場のマネージャーには、それを受け止める度量を期待したいものです。

    タカシが突然、“MBA推進派” になった理由とは?!

    最後に、「④育成の場」 についてお話します。上記の通り、リーダーを育成する最適の “場” = “機会” は、現場でお客様と対峙する局面です。しかし、現場一辺倒では、リーダーは育ちません。ときには、現場から離れ、自分の仕事ぶりを振り返り、スキルをたな卸しし、また、同業他社や異業種の取り組み、マーケティングやリーダーシップ、経営戦略の理論などの勉強も必要となります。


    しかし一方で、多くの日本企業が社員に提供している研修は、各年次の同窓会みたいな形式的なものか、優秀な営業パーソンの売り方をロールプレイで見せる程度のものでしょう。これでは、大半の社員には、ほとんど役に立ちません。


    そこで、国内のビジネススクールが提供するMBAプログラムを活用してはどうでしょう。「国内のMBAって・・・、本当に役に立つの?」 そう思われる方も多いと思います。実は私もそう思っていました、つい最近まで・・・。それが、たとえ海外の有名なビジネススクールであったとしても、多少英語が達者になる程度のことであって、MBAなんぞ、ほとんど役に立たないと思っていました(自分がMBAに行き損ねたので、その妬みもあるのですが・・・)。いわんや、国内MBAをや、です。しかし、今この場において、その考えを改め、MBA推進派に “転向” いたします。


    何が私を変えたのか? 実は、休職から復帰する際、1ヶ月ほどの間、“試用期間” として午後3時に帰宅している時期がありました。そのとき、ちょっと試しに、国内のビジネススクール数校の模擬授業を受けてみたのです。で、受けた感想・・・ 面白い! ためになる!! リーダー育成にもってこいじゃ、あーりませんか!!!


    多くの日本人の発想は、研修という場は、黙って座って話を聴く “場”。ついでに、午後のひとときは、軽くお昼寝に興じる “場” という認識だと思います。しかし、MBAの授業は、教師は基本的に、サポート役に徹します。授業を進めるのは、あくまでも参加している生徒のみなさんです。初対面の人とチームを作り、リーダーとなって、クラスを推進し、時間内に何らかの結論を出す。これこそ、格好のリーダー育成を目的としたトレーニングの “場” なのです。


    国内MBAの授業は、私が所属する外資系企業の研修に、非常に良く似ています。というか、わが社の研修は、ハーバード・ビジネススクール(HBS) や 欧州経営大学院(INSEAD) のクラスを、ほぼそのまま取り入れていますので、似ていて当然なのですが・・・。


    一方で、通常の日本企業が、いきなりMBAのメソッドを取り入れて研修プログラムを作るというのは、ハードルが高いと思います。よって、国内のビジネススクールに、研修を “アウトソースする” という発想で、リーダー予備軍を派遣してはいかがでしょうか。国内なら夜間と週末で履修できますし、優秀な人材が抜けて、仕事に穴が開くことも回避できます。


    ちなみに、私は東京にある、ほぼ全ての国内MBAについて “お試し授業” を受けてみましたが(ヒマか、わしは・・・。ちゅうか、MBAフェチ?)、一番良かったのは、「グロービス」 です。あくまでも個人的な見解という前提で言えば、グロービスの授業は、他の国内MBAに比して、あらゆる点において、頭1つ抜き出ていると思います。クラスに参加してみるとわかるのですが、座っている暇がないくらい、アクティブにチームでの作業を進めなければなりません。こと、リーダーシップを育成する目的なら、グロービスが最適だと思います。 
    (注: 私はグロービスとは何の関係もありません。個人の意見として、客観的に評価しただけです。実際にビジネススクールを選ぶ際には、オープンのクラスを最低でも3つは受講してから決めた方がいいと思いますよ!)


    さて、3回にわたって、リーダー育成の条件について、話をしてきました。では、最後に質問。 “一流のリーダー” は、先天的か?、 後天的か(つまり、何らかのプログラムで育成することが可能か)? と問われたら、みなさんはどう答えますか? 私は “後天的” である、と答えます。しかし、自分ひとりの力では、一流のリーダーになることは難しい。大枚を払って、国内のビジネススクールに通ったとしても、やはり、メインは実際の現場において、実際のお客様と接点を持つことによってしか、スキルは向上しないと思います。現場=8、勉強=2 ぐらいのバランスが、20代から30代半ばの、“リーダー予備軍” 世代には、ちょうどいいように思います。今年46になる私も含め、みなさんも、まだまだ間に合います。一流のリーダー目指して、頑張りましょう!


    PS: では、“超一流のリーダー” は、先天的か? 後天的か? この問いについては、私は前者だと思います。“超一流” とは、“一流” + “センス” です。“センス” は生まれつき持っているもので、育成できるものではありません。松下幸之助、本田宗一郎、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ・・・ しかし、ひとまず “一流” の域まで引き上げないと、“超” という原石を見つけることができないと思っています。本人に相応の覚悟があれば、“一流” を目指せる “場” を提供する。それが、家庭であり、友人であり、パートナーであり、コミュニティであり、学校であり、企業であり、国家なのだと思います。では!

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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