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タカシの外資系物語

リーダーを“つくる”条件(その2)2014.01.14

    ACミランの本田選手は、リーダー? コーチ? それとも、両方? 

    (前回の続き) リーダーを “つくる” 条件とは何か? 前回のコラムでは、【リーダー育成5要素】として、以下を挙げました。 
    ① リーダー候補自身の資質・能力・モチベーション 
    ② ロールモデルとなる現行リーダー(≒上司) 
    ③ 的確なアドバイスをくれるコーチ 
    ④ 育成の場 
    ⑤ 厳しい顧客 
    ま、当たり前といえば当たり前なんですけど・・・ でも、この5つの要素について、日系企業の経営者や人事部門が誤解していることがあるんですよね。逆にいうと、外資では重視していること。はて・・・、それは、何なのでしょうか?


    まず、日本企業がよくやる過ちの1つに、「②=③とすること(②と③を兼務させること)」 があります。 「確かに・・・ 優秀な選手が、必ずしも優秀な監督とは限らない、って言うしね!」 いやいや、そういう話ではないのです。私が言いたいのは、そうじゃなくて・・・


    (a) 仮に、②と③を兼務できるようなスーパーマンがいたとしても、兼務させずに役割を分けて、another person を③とすべき 
    (b) ただし、リーダーとして育成したい候補者は、②をリーダーとするチームに入れて、その配下で育成をはかるべき


    ということです。


    サッカーで例えてみましょう。このたび、ACミランに移籍した(すごい!)本田圭祐選手は、ロールモデルとなりうる優秀なプレイヤーであり、リーダーです。ACミランでは右のMFになるという噂ですが、日本代表では、彼の定位置は不動のセンター下MF、いわゆる “司令塔” と呼ばれるポジションであり、マッチメイクするリーダーでもあります。もし、彼の役割を引き継ぐリーダーを育成したいのなら、彼のチームに入れて、その動きを間近で見せなければなりません。試合全体のダイナミックな動きや柔軟なウィットなどは、ベンチやビデオでは身につかないでしょう。あくまでも、同じフィールド(会社においては、同じ課やプロジェクトチーム)で、試合に勝つ(組織として業績を上げる)という、定量的でわかりやすい目標を共有しなければなりません。


    【リーダー育成5要素】には、②の項目に、(≒上司) と書きましたが、必ずしも上司である必要はありません。同僚や先輩でも構わない。ゲームを(サッカーの試合、ビジネスの商談)をマッチメイクする役割の人であれば②の適任となります。

    “塩漬け” にされる優秀な人材

    では、どうして ②(リーダー、ロールモデル) と ③(コーチ) の兼務は難しい、というか、避けるべきなのでしょうか。


    理由は2つあります。1つ目は、「どんなに優秀なリーダーも、自分の優れたリーダーシップを、他人に対して客観的に伝えることは極めて難しい」 からです。“技術” や “テクニック” というものは、伝承可能なものだと思います。しかし、“リーダーシップ” というのは、「こうしろ、ああしろ・・・ あぁーー、そうじゃないってば!」 と言って伝えられる類のものではありません。ロールモデルとなりうる優れたリーダーのそばにいて、そのやり方を客観的に教えてくれる 第三者=コーチ が、リーダーの振る舞いとその意義を説明してやる必要があるのです。


    もう1つの理由は、「②の役割をする上司・先輩というのは、短期的で明確な目標を共有せざるをえないため、リーダーの育成を最優先にはできない」 という事情です。サッカーなら試合に勝つ、ビジネスなら商談を進める、これらは極めて短期的な事象です。


    一方、ある人をリーダーに育てる というのは、中長期的な目標です。リーダー育成のために、ときには、候補者を違う部署に異動させたり、海外赴任させたり・・・ という経験を身に付けさせるべき局面があります。「リーダー育成」という中長期目標は、「商談に勝つ=業績を上げる」という短期的目標とは背反します。優秀なプレイヤーを手元に置いておきたいというのは、組織に所属する人間なら、当然の欲求でしょう。よって、優秀な人材ほど、特定の部署・仕事への関与期間が長くなる(異動させずに塩漬けになる)傾向が強くなるのです。

    コーチやメンターの強力な権限とは?

    外資の場合、②と③を明確に切り分けています。よって、②(リーダー)の承諾なしに、③(コーチやメンター)の判断で、ある社員がいきなり海外赴任を命じられたり、スペシャル・プロジェクトに配置されたりすることが、結構頻繁に起こります。


    日本企業なら、「ちょ、ちょっと、半年だけ待ってくれ!」という②の言い分が聞き入れられるケースが多いと思いますが、外資の場合、短期的な収益目標 も リーダー育成 も 同様に、極めて重要な事項だと認識されています。いや、むしろリーダー育成の方が、ちょっとだけ優先順位が高いイメージです。だから、前者の都合で後者が劣後することはないのです。むしろ、プレイヤーが1人抜けたぐらいで収益に大きな穴が開くようなオペレーションをしていたリーダーが悪い、となりますので、どのリーダーも突然に人事異動に対して、文句を言えないのです。


    また、③(コーチやメンター)に、絶大なる権限を与えるというのも、外資にあって日系には乏しい部分でしょう。コーチやメンターというのは、だいたい2~3段階ぐらい職位が上の人が引き受けます。私の場合、③は専務クラスで、日本支社No.5 の外国人です。彼は、社長とも直接話ができる立場です。コーチに権限があるからこそ、短期的になりがちな人員配置に偏重せず、中長期でのリーダー育成を推進することができるというわけです。


    日本企業がリーダー育成について誤解している、もう1つの内容は、「④(育成の場) と ⑤(厳しい顧客) という要素を軽視している」 ということです。特に、⑤の軽視は甚だしい・・・、って、そもそも、“厳しい顧客” って、何を指すのでしょうか? この続きは次回、お話しすることにいたしましょう。

     

    (次回へ続く)

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

    「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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