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タカシの外資系物語

告白! “タカシ復活” までの 道程 (その5)2013.10.29

    退院したタカシを迎えてくれたのは?

    (前回の続き) 2ヶ月間の入院生活を経て、ついに退院し、自宅療養をスタートしたタカシ。仕事をイメージしないように、新聞やビジネス書は避け、娯楽小説を読みながら、ジムで軽く汗を流す日々を送っていました。そんなとき、想像もしなかった試練が、われわれ家族を襲ったのです・・・


    退院当日は、奥さんと5歳の娘、1歳の息子が迎えに来てくれました。 
    「今日はね、パパのお迎えするから、幼稚園休みになったんだよーー。おうちに着いたら、絵本読んでねーー!」


    屈託のない娘の笑顔を見た途端、また、例の “黒いドロドロした涙” が溢れそうになりましたが、グッと我慢して、タクシーに乗り込みました。


    つい最近になって、奥さんから聞いたのですが、私が倒れて入院した直後から、娘の頭に一円玉大の脱毛(ハゲ)が、複数見つかったそうです。表情には出さないものの、娘にも相当な心労を与えていたようです。ホントにゴメンね、パパを許してね・・・


    自宅に戻り、玄関のドアを開けた瞬間、もう一人(一匹)の家族である、愛犬ゴルゴが飛び出してきました。古くからの読者のみなさんはお馴染みだと思いますが、ゴルゴというのは、ブチ模様のフレンチブルドッグ(オス)。なかなか子供が生まれなかったわれわれ夫婦にとっては、まさに第一子、“長男” としてかわいがってきました(以下のサイトに、奥さんが描いたイラストがあるのですが、私の左肩に乗っかっているのが、ゴルゴです。また、イラストレーターのつがおか一孝さんによるゴルゴの肖像画が、横浜元町ショッピングモールにある有名な某かばん屋さんに飾ってあります。詳細は、No.586 『 “プロ” って、なあに?』 参照のこと)。 
    http://www.daijob.com/support/campaign_takashi


    実はこのゴルゴ、知る人ぞ知る “アスリート犬” でもありまして、「イヌリンピック」という犬の運動会(かけっこ)にて、フレンチブルドッグの部で優勝しています。参加者(犬?)5頭、優勝=自動的に日本記録という、何ともゆるい基準の大会でなんですがね・・・。


    自宅に戻ってしばらくの間、私は大半の時間を、ベッドに伏して過ごしていました。病院とは違って、常に家族がそばにいるという安心感があるものの、やはり、日に数回は “黒いドロドロ涙” → 嗚咽 → 激しい動悸と発作 という地獄のサイクルに悩まされていました。7月に入っても、状況は大きく変わらず、9月からの職場復帰を真剣に目指していた私は、気ばかり焦って、家族に当り散らしていました。本当に申し訳ないことをしたと思っています。

    私の “毒” を吸い取ったゴルゴ

    家族に当り散らして、ベッドでオイオイ泣いていると、いつもゴルゴが枕元に来てくれました。私の流す涙を、ペロペロとなめてくれるのです。


    「ありがとう、ゴルゴ・・・ でも、もういいよ。こんな汚れた涙をなめたら、ゴルゴが病気になっちゃうからさ・・・」


    犬を飼っている方はわかると思んですけど・・・、こんなこと言っちゃなんですが、犬の口臭というのは、かなりのもんでして、妖怪ヘビ女並みに臭い!(妖怪ヘビ女の口臭をかいだことがある人はいないと思うが・・・) かつ、私は犬に顔を舐められるとアレルギーが出て、皮膚が真っ赤に腫れ上がってしまうのです。だから、ゴルゴには申し訳ないんですが、しばらく舐めさせた後は、無理やり別室に追っ払って、部屋のドアを閉めていました。ドアの外では、ゴルゴが寂しそうに、クンクン鳴いていました。


    退院後は、週一回通院して、主治医の診察を受けていました。病院から戻って、ドアを開けると、いつもゴルゴが玄関口に座って待っていました。奥さんによると、


    「あなたが病院に行ってから戻るまで、ずーーっと、玄関で待ってたわよ・・・」


    とのこと。出張で一週間家を空けたときでも、こんなことはなかったそうですから、今回の件では、ゴルゴも相当心配してくれていたのだと思います。



    私 「ありがとうな、ゴルゴ・・・ あ、あれ? トモミぃ・・・ ちょっとこっち来て・・・」 
    奥さん 「どうしたの?」 
    私 「ゴルゴ、なんか右の顔が腫れてるっていうか、引き攣ってない? 気のせいかな?」 
    奥さん 「実は、私も少し前から気になってたんだけど・・・ なかなか獣医さんに連れていけなくて・・・ 持病の歯槽膿漏だと思うんだけど・・・」 
    私 「赤ちゃんがいて、幼稚園の送り迎えがあって、僕まで入院してたんだから、仕方ないよ・・・。 今日は体の調子もいいからさ、一緒に獣医さんまで行こうよ」


    いつものように、かかりつけの獣医に行って、待合室で待っていると、奥さんが心配そうな顔で戻ってきました。


    奥さん 「ゴルゴ・・・ 悪性の腫瘍ができちゃったかもしれないんだって・・・ 細胞を大学に送って、詳細に検査するって言われた・・・」


    数日後、獣医さんから電話がかかってきました。携帯を持つ奥さんの手が震え、声が詰まっています。私は思わず携帯を奪い取って、獣医さんに状況を確認しました。


    「ゴルゴちゃんですが、右頬に悪性の腫瘍・・・、つまり癌が見つかりました。中でも、最も厄介な “未分化癌” というやつで、既にかなりの転移が想定されます。申し上げにくいですが・・・、あと1ヶ月、もつかどうか・・・」

    ゴルゴ、逝かないで・・・

    「僕のせいだ、僕の “毒” を、ゴルゴが吸い取ってくれたんだ・・・。絶対に死なせやしない、絶対に治してやるからな、ゴルゴ、心配すんなよ!」

     


    医者に見離されようが何だろうが、関係ありません。私の “うつ” なんて、この際どうでもいい。ゴルゴが治るなら、ゴルゴが治るなら・・・ 


    それからというもの、ゴルゴを治すために、私と奥さんは、まさに東奔西走しました。継続して、“うつ” 症状は出ていたのでしょうが、ほとんど気になりませんでした。「たとえ1時間でもいいから、ゴルゴと長く一緒にいたい・・・」 それだけの思いが、私と奥さんを支えていたように思います(一番辛かったのは、奥さんのトモミだったと思います。私とゴルゴのダブルパンチで、肉体的にも精神的にも、相当キツかったろうと思います。トモミ、本当にゴメンね、そして、ありがとう・・・)。


    川崎市にある「日本高度動物医療センター」という施設があります。末期癌の犬や猫を専門で診てくれる病院です。藁にもすがる思いで、そこに連れて行きました。  
    「未分化癌に、間違いありません・・・」


    サメの肝油がいい、馬のプラセンタ(胎盤)が効くらしい、田七人参で犬の癌を治した人がいるよ・・・ 知り合いやネットから情報をかき集めて、全て与えました。でも、でも、ゴルゴの右頬は日増しに、ボールのように腫れ上がり、ついには、片方の鼻の穴がただれた皮膚で塞がってしまいました。


    呼吸を少しでも楽にしてやるため、ペット用の 「酸素室」(高濃度の酸素を供給するアクリルのボックス) もレンタルで借りました。しかし、どんな薬を与えても、どんな注射を打っても、効きません。症状はどんどん悪化し、ついには、口から絶えず血を流しながら、朦朧と歩いては寝る、激しい呼吸困難を起こしては倒れる、そんなことを繰り返すようになりました。粗相(おしっことウンチを決められた場所に排泄しない)も頻繁になってきました。床にはゴルゴが吐いた血溜りと血しぶきがあちこちに広がっていきます。奥さんと私は、ゴルゴのお腹を撫でて、泣きながら、血を拭き取って回りました。来る日も、来る日も、常にトイレットペーパーを片手に生活していました。


    「もう、ゴルゴちゃんの血液は、通常時の6 ~7割になっています。普通、この状態では生きられない。気力だけで持ちこたえているんでしょう。 ここ数日・・・ だと思ってください・・・」 8月のある日、主治医から “最後通告” がありました。


    最後通告から一週間、ゴルゴはほとんど寝たきりになりましたが、何とか持ちこたえていました。奥さんのトモミが添い寝して、口から流れ出る血を拭き取る等、寝ずに看病をしていました。


    最後通告から10日目の朝方、ゴルゴは私の枕元に、自力でトコトコと歩いて来ました。そして退院直後と同様に、私の顔を舐め出したのです。 「もういいよ、もういいから・・・」 


    しばらくして、私の足元で寝ていたゴルゴが、「くぅーーん」 と、甘え声を発しました。元気だった頃、粗相をしたときに、決まってこの鳴き声で、甘えるように許しを請うていた、まさにあの声です。同時に、ウンチの臭いもしてきたので、私はそれを片付けてやろうと、立ち上がりました。


    「ウンチしちゃったのか、ゴルゴ・・・ すぐにお尻拭いて、キレイにしてやっからな・・・」 
    「・・・ ・・・」 
    「ゴルゴ?」 
    「・・・ ・・・」 
    「ゴ、ゴルゴ?! ゴルゴ!! ゴルゴーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」


    そこには、前足と後ろ足を突っ張って、堅くなったゴルゴが横たわっていました。口からは大量の血を流し、ウンチも垂れ流していました。でも、その顔は安らかで、散歩に出かける際に、首輪をかけてやったときのような、お腹をさすってやったときのような、何ともいえない満足感に満ちた表情をしていました。 「パパさん、ママさん、僕は世界一幸せな犬だよ、本当に、ありがとう・・・」


    妻と娘、私たち家族は、声を上げて泣きました。何時間も、何時間も、堅くなって動かないゴルゴを抱きしめて、泣きました。泣いて、泣いて、泣いて・・・ 本当に涙が枯れ果てるほど、泣きました。


    午後になって、ペット専門の火葬場に連絡し、私は久しぶりに自分の車を運転して、ゴルゴを運ぶことにしました。その道中、本当に、不思議な不思議な出来事が起こったのです。そして、それを境に、私の “うつ” は、急速に治っていったのです。

     

    (次回へ続く)

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

    「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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