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タカシの外資系物語

流通戦争勃発!・・・日本モデルは生き残れるか?2012.12.04

    タカシの自宅近所で、流通戦争勃発!

     私は横浜の街中に住んでいるということもあり、自宅から徒歩圏内に、実に7件のコンビニがあります。一般的に、コンビニというのは、店構え・品揃え・接客サービス等、どこに行ってもだいたい同じ。つまり、究極の “標準化” 仕様です。どこに行っても同じなら、結局はブランド力と立地条件が差別化の最大要因となります。 


     確かに、この2つの要素は大きいのですが、それだけではないような気もする。地域で流行っているコンビニは、たとえ立地条件に劣っても、店内のPOPにがかわいかったり、イベント開催時に雨が降りそうなら、店の外側で傘やレインコートを売ったり・・・と、“標準化” を越えた創意工夫をしているような気がします。“標準化” の世界でも、やはり最後は “個性” がモノを言うのでしょうねぇ・・・ という話を、過去のコラムでしたことがあります(No. 376 『標準化の先にあるもの』参照)。  
    今回のコラムでは、私の近所のコンビニが、その後どうなったか? について、お話しましょう。 

      

     前回のコラム後数年間、上記7件のコンビニは存続を続けていました。ま、一部のコンビニでM&Aがあったりして、ブランドが重複する店も出てきたのですが、そもそも立地が重複しているわけではないので、コンビニ間で、うまく “住み分け” をしていたというわけです。 
    それが! ですよ、この1ヶ月で激変が起こったのです。 なんと、2件が撤退! それも、上位ブランドの2件が相次いで!! 加えて、その2件が私の自宅から最も近い!!! パジャマでも行ける距離だったのにぃ・・・(T-T) 一体、何が起こったのでしょうか? 


     うちの近くのコンビニが相次いで撤退した理由、それは、「大手ドラッグストアが出店してきたから」 なんです! この ○○薬局 というドラッグストア、出店するなりコンビニの顧客層を奪い、今や地域の王者として君臨しています。 


     みなさんもご理解の通り、最近のドラッグストアというのは、薬だけではなく、日用雑貨やドリンク・パン・お菓子なども取り揃えています。ないのは、雑誌と弁当ぐらい。また、コンビニのようにATMや公共料金収納サービスもありません。しかし、最大の違いは、「価格」 でしょう。安いんです、このドラッグストア・・・。通常、コンビニで140円で売っているドリンクが、このドラッグストアでは、なんと 88円! 客が流れるのも致し方ないところです。 


     深夜近くに帰宅する際、コンビニで雑誌の立ち読みをするのが楽しみだった私にとっては、本当に悲しい事態となっています・・・(T-T) 

    コンビニの「閉店マニュアル」、恐るべし・・・

     コンビニのビジネスモデルというのは、ATMや公共料金収納サービスなどで客を呼び込んで、ドリンクや弁当、日用雑貨などを 「定価」 で売る、というものです。ATMや公共料金収納サービスなどは、ほとんど儲からないのは自明です。あくまでも、客寄せのためのサービスに過ぎません。それが、ドラッグストアが乗り込んで来たことにより、ドリンクや日用雑貨はドラッグストアで買い、コンビニはATMや公共料金収納サービスだけで使う、となってしまったわけですから、コンビニにとっては大誤算。即座に撤退を決めたのも理解できます。 


     興味深いのは、撤退を決めた2つのコンビニブランドの対応速度です。まず撤退したのは、コンビニ最大手で、なんと、ドラッグストアが出店した1週間後(!)に、早々と店を閉めていました。もう1件は、業界2位のコンビニで、ドラッグストア出店から1ヵ月後に閉店。いずれにしても、超即断です。 


     おそらく、この2つのブランドには、「閉店マニュアル」というか、「閉店基準」のようなものがあって、「ドラッグストアが近隣に出店した場合には、とにかく店じまい!」となっているのでしょう。ドラッグストア出店後1週間で店を閉めた最大手コンビニの場合、ドラッグストアの影響でコンビニ店内に閑古鳥が鳴いている状態を、消費者に見せることなく去って行きました。ブランド価値の毀損を最小限に抑えているわけで、そういう意味でも、このコンビニ最大手、恐るべし・・・ という気がします。 

    日本の生き残りをかけて・・・

     草創期のコンビニは、「24時間(または、それに近い長時間)いつでも開いているお店」というコンセプトで、アメリカのモデルを真似たものです。しかし、そのモデルに、「ATMや公共料金収納サービス」を付加し、徹底した標準化オペレーションを確立したのは、間違いなく日本です。コンビニというのは、日本の流通業が確立した、1つの究極的なビジネスモデルでした。 


     これは個人的な見解ですが、最近のドラッグストアを見ていると、「アメリカっぽいなぁ・・・」という印象を受けます。10年以上前の話なので最新事情はよくわかりませんが、アメリカに数ヶ月滞在していた際、ドラッグストアなんだけど、食品や日用雑貨を売る店を、よく目にしました(当時、日本にはそのような販売形態のお店がなかったので、よく覚えています)。一方、日本のコンビニに該当するお店は、当時のアメリカでは影が薄かったように記憶しています。 


     また、日本における最近のドラッグストアは、品揃えについては、「これでもか!」とばかりに豊富である一方、接客サービスが悪い。そもそも、店員が少ない。レジは常に長蛇の列だし、薬剤師さんとかがレジ打ちをするので、手際悪いし・・・ これも、アメリカっぽい。 


     上記の仮説からいくと、近所で起こっている流通戦争は、日本における究極のビジネスモデルであるコンビニが、アメリカスタイルのドラッグストアに負けたことになります。もちろん、アメリカスタイルのドラッグストアは、コンビニのように町のブロックごとに出店するようなきめ細かさはなく、儲かりそうな立地に、ドカン!とやってきますので、両者の住み分けはできるのだと思います。しかし、最大手のコンビニが早々と地域から撤退していくのを見ると、悲しい。 「結局、アメリカには勝てないのか・・・(T-T)」 と、少し憂鬱になったりします。 



     では、ドラッグストアに勝てる流通形態はないのでしょうか。実は、私の自宅近くに出店してきたドラッグストアの真横で、ドラッグストア以上の待ち行列を誇る店があるのです。“店” というか、時間限定で出店する “屋台” なんですけど・・・。それは、近隣の居酒屋がやっている、お昼限定の 「弁当屋」 です。ここの弁当、単価700円と、決して安くはない。でも、おいしい! このお店、夫婦2人とバイト数名でやっているのですが、昼も夜も大繁盛です。夜のメニューのうち、その時節に合わせて、人気のあるメニューを弁当に組み込んでいるため、ほぼ毎日おかずが変わります。もちろん、お店で手作り。まさに、品質と創意工夫のなせる業 というわけです。 



     「ドラッグストアが扱っていない商品(弁当)に資源を集中投下する」「高い品質を保持し、常に創意工夫を継続する」・・・ これって、これからの日本が生き残る道を示唆しているように思えませんか? 品質そこそこだが安い(かつてのアメリカ、今は中国・アジア) vs 高品質・高サービス・標準化(日本) の構図は、前者の品質向上を受けて、日本側の敗色濃厚です。日本の家電業界なんて、その典型でしょう。使い古されたコトバですが、天然資源を持たない日本は、高度な人的資源=知恵&創意工夫 で攻めるしかないんだと思うんです。そうすることで、当初は、一部マニア受けでしかなかったものを、グローバルに汎用化していく。ゲーム、アニメ、おもてなしのサービス・・・ 可能性を秘めた分野への資源投入がまだまだ足りないように思います。みなさんは、どう思われますか?  


      
     ・・・以上、タカシの雑感でした。それにしても、あの弁当屋の弁当は絶品です。横浜関内にありますんで、みなさんも是非お試しください!(って、これだけじゃ、わからんか・・・) 

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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