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タカシの外資系物語

“War Room” で スッキリ?! (その2)2012.11.27

    War Room = 役員を働かせる場所?

    (前回の続き) 軍事や政治活動のための作戦ルームである “War Room”。そこでは、戦略的な意思決定が即断即決で下されます。では、外資における “War Room” の実態とはいかなるものなのでしょうか? 

      

    「来週からプロジェクトが開始されるのに、メンバーが集まりません・・・(T-T)」 
    「メンバーが一週間缶詰で作業する場所・設備がありません・・・(T-T)」 
    「社内ソフトウェア開発に手間取り、コストが足りなくなりました・・・(T-T)」 


     “War Room” に持ち込まれる issue(課題)は、まず、上記のような “ヒト・モノ・カネ” に関するものが挙げられます。それに加え、「最新のオンラインマーケティングに関するグローバル事例が集まりません・・・(T-T)」といった、“情報” 関連もありますね。 


     しかし、これらの課題は、むしろ少数派。“War Room” に持ち込まれる課題の大半は、“社内ルール” に関するものです。 


     例えば、「原価100円のものを売る場合、最低でも20円(20%)の収益を乗せて、120円で売らなければならない」、という社内ルールがあったとします。しかし、競合他社は、ほぼ同じ内容の商品を110円で売りに出している。このままでは、競合に負けてしまう・・・ このような場合に、「最低でも原価の20%にあたる収益を乗せて売る」 という社内ルールを曲げて、110円で売りに出すという決定をするのが “War Room” なのです。 


     一般に、世の中における役割は、「ルールを作る人」 と 「ルールを守って処理をする人」 に分かれます。当然のことながら、前者のほうが責任が重く、高度なスキルが要求されるわけで、だから、給料も高い。外資の場合、両者の給与格差は極端に大きい。ならば、「ルールを作る人」 には、もっともっと働いてもらわねばなりません。“War Room” とは、役員を中心とした高額給与の連中を、もっと働かせる機能もあるわけで、私はその点も評価しています。 

    120円のコーラは、110円でしか売れない?!

     「社内ルールを曲げて、120円で売りに出すところを、110円でやらせてください!」 こういうお願いをすると、役員連中からは、120%同じ反応が返ってきます。 



    「アホか、君は・・・ 競合他社より価値のあるものを売っている自信があるなら、定価のまま売らんかい、ボケーーーっ!」(外国人役員が、関西弁で言っているわけではないが・・・) 


     ま、正論ですわな。しかし、現実問題として、クライアントの買う・買わないの判断は、ほぼ 価格 で決まります。価格が同程度のもの同士という前提で、双方の価値を比較する、これが消費者心理です。定価120円のものを、競合が110円にした場合、少なくとも112-3円ぐらいで提示しなければ、検討の俎上にすら上げてもらえません。 
     この状況は、コンサルティング業界にも当てはまります。十数年前なら、基準価格などあってなかったような業界ですので、クライアントはかなり高額のフィーでも払ってくれた。しかし、今となっては、 
    「タカシさん、競合の○○社は110円と言ってますよ! タカシさんのところも、120円なんて言わずに、少なくとも112円ぐらいにはしてくれないと、社内の合意が得られないんですけどねぇ・・・ 112円なら、決めちゃうんだけどなぁ・・・」  
    という 甘く危険なささやきに誘導されて、結果、“War Room” に駆け込んでいる・・・、という実情があります。コンサルも、完全にコモディティ化しているのです、悲しいですが・・・ 

    決められない・・・、外資の現実

     さて、ここまで “War Room” のメリットばかりを説明してきましたが、実は、負の側面も持ち合わせています。 


    タカシ 「・・・ということで、完全にホワイト(=新規)の分野になりますが、ここへの営業推進のため、○○円の投資をお願いしたいと思います」 
    役員A 「うーーむ・・・ で、どれくらい儲かるんだ?」 
    タカシ 「新規分野ですからねぇ・・・ 何ともいえませんが、私としては、1年で△△億はいけると踏んでいます」 
    役員A 「その証拠は? 数値的根拠は?」 
    タカシ 「説明した以上のものは、ちょっと・・・ (新規やと言うとるやろーーーっ!前例ないんやから、わからんわーーーっ!)」 
    役員B 「一方、リスクはどうなんだ?」 
    タカシ 「リスクについては、新規ですので、万が一撤退する場合にも、経済的損失 および ブランドの毀損も最小限にできるかと・・・」 
    役員B 「その証拠は? 数値的根拠は?」 
    タカシ 「・・・(うがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ! こいつら、Animal spiritのかけらもないわーーーーーーーーーっ!!(T-T))」 


     外資系企業の役員というのは、可視化できないことに対して責任を取ることを、極端に嫌います。というか、一切責任を取らない! あらゆる収益期待やリスクを定量化できるなら、既に競合他社がやっているし、または、同じことを考えているはずです。よくわからんけど、「やってみなはれ!」と意思決定するのが、経営陣の仕事のはずではないですか? 


     もちろん、日系企業でも、役員が責任を取らないという傾向は強いでしょう。しかし、日系企業の場合は、最終的には、社長含めた役員の合議(多数決)で、Yes or Noを決めると思うんです。しかし! 外資の場合は、担当の役員が責任を取らない場合、社長も同じ反応をします。US本社の社長も同様でしょう。つまり、Yes or No が決まらないまま、“店晒し” になってしまうことが多いのです。やれとも言わないし、やめろとも言わない。どないせぇ、っちゅうねん! 


     「そうかなぁ・・・ スティーブ・ジョブズなんて、即断即決で何でも決めてくれそうだけど・・・」 これは、“外資” だからではなく、“オーナー” “ベンチャー”(大企業になっても、その精神が残っている) だからです。ソフトバンクの孫さんなども、その部類だと思います。“オーナー” “ベンチャー”ではない一般企業の場合、 


    ・ 日系企業 = あらゆる意思決定は遅いが、最終的には合議でYes or Noを決める(“No” という結論が大半ですが・・・) 
    ・ 外資系企業 = 数値化できる意思決定は速いが、決まらないこと(≒担当役員が、決めたくなくて逃げている事案)は、どこまでいっても、一生決まらない 


    「日系だって、決まらないことは決まらないよ・・・」というアナタ。その5倍ぐらい、外資は決まらないんですよ、ビックリするぐらいに・・・。意思決定の迅速さに期待して外資に転職したのに、決められなさに失望して外資を去っていく人は結構多い。じゃ、どうするか? つまるところ、自分が信念を持ってやりたいと思うなら、“起業” するしかないんだと思います。  


    “War Room” でも、スッキリしないことは結構多い! 日系よりも、むしろ外資の方が、スッキリしないことが多い! 外資に転職をお考えの皆様は、ご注意ください。では! 

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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