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タカシの外資系物語

外国人エグゼクティブとのコミュニケーション術 (その2)2012.10.23

    タカシの説明は、“水に流される” ?!

    (前回の続き) 前回のコラムでは、外国人とのコミュニケーション・ミスが起こる最大の原因は、論理的に話していないことにある、という説明をしました。
    ポイントは、ここでいう “論理的” というコトバ。昨今流行っている “ロジカル・シンキング” などといった小難しい話ではなくて、要は、「問われたことに的確に回答しつつ、筋道立てて話す」ことを指しています。
    私はこれを、“線形” の会話 と呼んでいます。一方、日本人の多くは、先を見越して、話をどんどん省略しながら進める “非線形” の会話 が主流なので、誤解されやすい。よって、注意が必要だということです。では、相手が外国人で、かつエグゼクティブだったら、さらにどんな点に留意しなければならないのでしょうか。 


     ビジネス上の英会話で、まず第一に留意しなければならないのは、「相手がだれか?」ということです。相手が、クライアントか身内か、というのも重要な要素です。しかし、それ以上に、クライアントであろうが、身内であろうが、相手がエグゼクティブ(役員層)の場合に心得ておくべき、必須の事項があります。それは、「必要最小限のことを、できるだけ短時間で話す」 ということです。 


     日系・外資系問わず、エグゼクティブというのは、時間に追われています。業種によっても異なりますが、多くの日系企業のエグゼクティブは、基本的に30分単位、最短で15分単位でスケジュールを埋めるケースが多いと思います。一方、外資系のエグゼクティブは、「5分(!)単位」 でスケジュールを作ります。5分て! そうなんです、はっきり言って、5分刻みのスケジュールなんて、無謀極まりない! 以前、社内のある外国人エグゼクティブから5分間の説明機会を得たのですが、その役員、当日お腹をこわしたとかでトイレにこもってしまい、私の “5分” が吹っ飛んだことがあります。文字通り、“水に流した” ってか?! なんやねん、それ!! 
     一方で、日系と外資系を比較すると、外資系の方が3倍早く物事が進んでいる・・・ というのも、納得感あり。ならば、役員スケジュールの最小スロットが、日系=15分、外資系=5分 というのも、うなずけなくはないのですが・・・ 


     また、「できるだけ短時間で話す」と言っても、早口で話すという意味ではありません。むしろ、普段、外国人の同僚と話しているよりも、ゆっくりと話さなければなりません。つまり、無駄は一切省いて、“超” 論理的に話す必要があるわけです。一体、どうすればいいのでしょうか?  

    “5W1H” の中で、より重要なのは・・・?

     まず、英会話の基本に戻って考えてみましょう。よく、“5W1H” ということが言われます。これは、When(いつ:時期)・Where(どこで:場所)・Who(だれが:人)・What(何を:モノ)・Why(どうして:理由)・How(どのように:方法) という、いわゆる疑問詞を表したものですが、英語における論理的な会話というのは、これらを満たすことが必須です。相手のエグゼクティブは、5W1Hを自分なりに明確にしようとして話を聞きますので、まずは、これらを伝えることに徹するべきです。6つの疑問詞に対する回答が不十分な状態で、ピントはずれな会話を進めてしまうから、「???・・・怒!」 となってしまうわけです。 


     幸い、英語の疑問詞は、回答フォーマット(=答え方)が決まっています。例えば、「Why ~?」 と問われたら、「Because ~」「The reason why ~」という回答が定番ですから、それに従う。「When ~?」と聞かれたら - 「by tomorrow」「until this weekend」、 「Who ~?」と聞かれたら - 「It’s me !」 と、簡潔に答える。 
     よく失敗するのが、「ちょっとWitの利いた話を入れたい!」「小粋なAmerican Jokeを絡めたい!」 などと、ヨコシマな考えを抱くケース。スティーブ・ジョブズのスピーチや、サンデル教授の白熱教室などを見ていると、ついつい、自分にもできるような気がしますよね・・・ って、ダメです! 余計なことを言うから、伝えるべきことを伝える時間がなくなるんです!! 


     5W1Hのうち、特に重要なのが、上述のWhen(いつ:時期)・Who(だれが:人) です。その時点では明確でないことも、「いつまでに、だれがやる!」と言ってしまえば、外国人エグゼクティブは納得してくれるケースが多い。ごちゃごちゃと理由を並べ立てるより、「日付」と「やる人(=責任者)」を明確にした方が、英語の世界では、格段に “論理的” なのです。 

    無理があっても、モデル化する

     次に、「定量的に説明する=可能な限り、具体的数値で可視化する」 というのも重要です。例えば、営業目標が5,000万円で、4人の営業パーソンが活動した結果、4,000万円しか達成できなかったとします。その理由を説明するのに、「色々忙しかったもんで・・・ 手が足りませんでした・・・」などと言うと、そのエグゼクティブは即座に部屋から出て行くと思います。下手すると、説明した人はクビになるかもしれません。「分析(そこから得られる反省含む)」 と 「アクション」 という必須の要素がないからです。 


    「われわれ営業担当は、契約をいただくまでに、次のような活動をしています。この活動を実施する場合、1人当たり、1,000万の契約が限界です。よって、5,000万を達成するために、1名増員をお願いします・・・」 という具合の説明が必要なのです。 


     「同じ1,000万でも、案件の難易度に軽重があるんだから、そんな単純な話じゃねぇだろ・・・」 確かにそうです。しかし、そこをグッとこらえて、割り切るのです。英語の論理性とは、言い換えると “簡略化” “モデル化” ともいえるのです。多少無理があるモデルでも、外国人エグゼクティブというのは、この手の論旨展開で、コロッと納得するケースが多いのです。 


     最後に、相手が偉い人であればあるほど有効なtips(コツ) として、「サポートorアドバイスをお願いする」というのがあります。一般に、人間というのは、「困っています・・・、是非、アドバイスをお願いします!」 というと、怒れないものです。特に、エグゼクティブ・クラスになると、自分の武勇伝を話したがる。「困っているんなら、どうしてもっと早く、私のアドバイスを仰がないんだ・・・」と、常に思っているのです。 


     外資系企業では、お願いしたいサポートのことを、「Requirement」「Help Required」と言います。できない理由を話す時間があるなら、「Requirement」を明確にせよ! というのは鉄則でして、外国人エグゼクティブとのコミュニケーションでは、必須アイテムといえます。 



     みなさん、いかがでしたか? ま、ごくごく当たり前のことなんですよ、相手がだれだろうが、言語が何であろうが・・・ 一方で、当たり前のことですが、なかなか実践できないのも確かではないでしょうか。日系企業にお勤めのみなさんも含め、自分のプレゼンやコミュニケーション方法を、再度見直されてはいかがかと思います。では! 

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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