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タカシの外資系物語

外資における“自由”再々考( その 2 )2012.07.17

    私は○○で、会社をクビになりました

    (前回の続き) 前回のコラムでは、尾崎豊さんと金八先生Ⅱを例にとって、私が考える“自由”の定義 についてお話しました。要は、“自由”というのは、非常に厳格な“制度”“ルール”をベースにしてはじめて成り立つ、なんでもありの無秩序は“自由”とは言わない・・・ これが私の主張です。そして、外資系企業における“自由”は、これにピッタリ該当します。このことを、具体的にご説明したいと思います。 



    「ボールペンを私用で使ったら、解雇 ! 」 


    みなさん、これって、信じられます ? ボールペンですよ、たかが・・・これぐらい、大目に見てくれよ、って感じ。もっと言うと、こんなしょうもないことを明文化するな、って感じですよね。 


    しかし、これは事実なんです。外資系企業(特に米国系)では、このようなルールが、確かに存在します。わが社を含め、多くの外資系企業では、社内のルール/制度を文書として明示しています。「社内情報を外部に漏洩してはいけない」とか、「クライアントへの接待は禁止」とか、ま、こういうのは理解できますよね。実は、それだけではなく、「社内の備品を私用で使ってはいけない ! 」とか、挙句の果てには、「上司の言うことには従え ! 」とか、ルールブックには、そんなレベルのことまでご丁寧に記載されています。「社内の備品とは、次に挙げるものを指す。ボールペン、ノート、クリアファイル・・・」 と、しっかり定義までされていたりして、ここまでくると、呆れるのを通り越して、驚嘆の域に達しています。 


    いきおい、そのルールブックは、百科事典並の分厚さになります(オンラインで閲覧するので、印刷して持っている人など皆無ですが・・・)。加えて、社員はそのルールブックに関する研修を受講し、理解度を試すテストに合格した上で、サインまで強制されます。それも、毎年実施。また、ルールブックに記載されている内容のほとんどは、「○○が守れない場合は、解雇とする」という結論になっており、これにサインをするということは、「解雇になっても文句を言いましぇーーん ! 」と宣言していることになります。 

    “当たり前”のことを守れない ?!

    「アホらし・・・そんな“当たり前”のこと、どうでもいいじゃねぇか ! 」 そう思われたアナタは、外資系企業ではやっていけない可能性が高い。なぜか ? 


    まず、本当に“当たり前”でアホみたいな話なのか ? 常識的に考えて、「接待禁止」は記載すべき内容でしょうね。一方、「社内備品の私的流用禁止」は“当たり前”でアホみたいな話のたぐいだと思います。これが、日本人の一般的な感覚でしょう。しかし、日本以外の国で、同じ常識が適用できるかというと、そうではない。むしろ、日本人にとって当たり前のことでも、グローバル(世界規模)ではそうでないことの方が多いのが実態です。ルールとして明文化しておかないと、グローバルレベルのガバナンスが利かないのです。だから、百科事典のようなルールブックが必要となるわけです。 


    また、昨今の日本においては、“当たり前”の話が守れなくなってきたのも事実でしょう。最近では、某精密機械会社の会計粉飾しかり、某製紙会社経営者の賭博による損失補てんしかり、某証券会社のインサイダー取引しかり。少し前なら、賞味期限の改ざんや役人に対する過剰な接待も問題になりました。 

    “ルール”のないところに宝あり !

    とかく、人間というのは弱いもので、自分にとって都合のいい方向、易きに流れてしまうのです。だから明文化し、サインさせる。それでもルールを守れない人には、退場してもらうしかない。そうしないと、注力すべき本来のビジネスにとって、邪魔になるからです。だから、外資はアホみたいな話でも明文化して、良いこと と 悪いこと の線引きをするのです。 


    もちろん、ルールを明文化してサインさせている外資でも、悪さをする人はいます。ここ数日、英国の有力銀行のトレーダーが、「LIBOR(“ライボー”London Interbank Offered Rate:ロンドン銀行間取引金利)」を不正操作したことが大問題になっています。LIBORというのは、ロンドンにある大手金融機関が、その時の実勢レートを提示しあって、取引の基準となるレートを多数決で決める方式になっています。各国の主要マーケットには同様のレートが存在し、東京(Tokyo)なら “TIBOR(タイボー)”、香港(Hong Kong)なら “HIBOR(ハイボー)”、シンガポール(Singapore)なら “SIBOR(サイボー)” というふうに決まっています。ただし、世界標準としては “LIBOR” が絶対的な地位にあり、他のレートもLIBORに順ずる形で使われています。 


    実は私、トレーダー時代に、TIBORを提示する役割だった時期があるのですが、レートを入力する際に、思わず 『ヤン坊マー坊の天気予報』 のテーマを口ずさまずにはいられない衝動に、何度もかられました(関西出身の方なら、この気持ち、よくわかると思います。って、わからんか ?! ) 
    LIBORは多数決で決まりますから、みんなで結託して、自分の都合のいいレートにすることが可能なわけです。何と言っても取引額がハンパではないので、0.000数パーセントを上下させるだけで、数十億円規模の収益を得ることも可能ではないのです。 


    問題となった銀行では、CEOの退任が決まったようですが、この不祥事に関与した人はもちろん、そのことを少しでも知っていた人も含め、大量の解雇者が出ると思います。それは、当該部門の顔ぶれが全員入れ替わるほどのレベルになるでしょう。なぜなら、社員は全員、ルールブックにサインしていたはずですから。 
    このようなトラブルを起こした場合、その信用を取り戻すには、長い年月がかかります。そのコストたるや、いかなるものか・・・もしかしたら、顧客から見放され、企業そのものが市場から退場させられるかもしれません。“当たり前”を守らない結果、取り返しのつかないことになるわけです。 


    しかし、逆に考えると、ルールブックに記載された“当たり前”を守っている限りは、何をやってもいいのです。それが、“自由”。アメリカ企業はよく、法律が整備されていない/法律が追いついていない分野で新規のビジネスを立ち上げて成功を収めますが、これが彼らの“自由”なんです。ルールのないところに、宝の山が転がっているというわけですね。 


    前回のコラムでも述べたように、外部からは想像できないほど、外資系企業というのは窮屈なところです。重箱の隅をつつくようなルールがあり、一挙手一投足を監視されている。普通の感覚なら、息が詰まります。 
    しかし、少し発想を変えて、ルールや監視がない分野を探し、そこで力を発揮することはできないか? 自分が取り組んだ案件が、ルールそのものを後付で作っていく、そういう発想ができる人が、外資で成功する人であり、それが外資でいう “自由” なのだと思います。 

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

    「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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