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タカシの外資系物語

なぜ、日本人の説明は 「自転車置き場の議論」 に陥りやすいのか ? ( その 1 )2012.02.07

わずか “ 1 分” で役員にプレゼン ?!

「Thank you for coming this meeting, today ! Let’s get started my presentation. Today’s agenda is ・・・」 (本日はお集まりいただいて、ありがとうございます。これからプレゼンを開始します。本日の内容は・・・)

 

わが社では定期的に、上級役員向けに、大口クライアントの状況を説明するためのミーティングが開催されます。“大口クライアント” というのは、わが社の売り上げ上位20社を指します。私は、そのうち1社の担当パートナーでして、本日は私がプレゼンする番。よって、上級役員(ほぼ外国人のみ)に対してプレゼンをしているというわけです。

 

このプレゼン、頻度は月1回程度なのですが、“come back”(内容不十分のため、出直して来い!)という指示が頻発・・・、いや、ほぼ 100% そうなるので、結局は月に 2 ~ 3 回はプレゼンすることになります。 20 社のプレゼンが、月 3 回として、年間で 20(社) × 3(回/月) × 12(ヶ月) = 720 回。めちゃくちゃ忙しい上級役員に対して、年間 720 回のプレゼン機会を設定するだけでも大変でして、「持ち時間一人 10 分」というような、極めて短い時間設定を強要されます。先日などは、役員に急用が入ったとかで、「 4 人で 15 分、 1 人 3 分 45 秒でプレゼンするように ! 」という “お達し” が、プレゼン 1 分前に出ました。 1 人 3 分って・・・ わしらは、カップラーメンか !

 

とはいうものの、上級役員との接点が持てる貴重な時間であることは間違いないわけで、一般的に出世に貪欲なわれわれ外資系社員にとっては、自分をアピールする絶好の機会でもある。なので、持ち時間がたとえ 1 分であったとしても、「Time up ! 」のコールがかかるまで全力でプレゼンするというわけ。 TV の “一発芸コーナー” と同じノリですな・・・、そう思うと、なんか悲しいですが・・・(T-T)。

 

 

タカシが外国人向けプレゼンで留意していること

このプレゼンのために、私は毎回、 50 ページ程度の説明資料(パワーポイント)を準備します。本編が 5 ページで、残りは細かい指摘があった場合に備えての補助資料。持ち時間 10 分なら、 5 ページが限界です。加えて、 5 ページのうち最初の 1 枚目はサマリーとして、プレゼン内容が俯瞰できるものにしておく必要があります。ま、ここまでは基本中の基本でしょう。
加えて、私が外国人役員にプレゼンする上で、上記以外に留意している点は、以下の 5 点です。


(1)サマリーは 3 ~ 5 の箇条書きで、結論のみ記載する
(2)外国人役員が好むフォントを使う
(3)説明本編に詳細な数値や図表を入れない
(4)言葉遣いの整合性を “完璧に” とっておく
(5)色遣いは極力シンプルにし、無意味に色を多用しない

 

(1)は当たり前ですよね。(2)は 「なんじゃそりゃ? フォントなんて、どうでもいいじゃねぇか・・・」って感じですが・・・、あるんですよ、外国人が好きなフォントが ! 何だと思います ? それは、「Tahoma」 です。 Tahoma て・・・、意表をついていますよね。

 

日本で使用されるメジャーな英語フォントは、Arial、Century、Courier あたりではないかと思います。しかし、外国人、特にアメリカ人の経営層は、Tahoma を多用します。弊社でもそうだし、前職の会社でもそうでした。また、クライアントのアメリカ人役員もそうでした。なんでも、「 Tahoma が最も見やすい」のだとか・・・ もしかしたら、もっと別の背景があるのかもしれませんが、 Tahoma がいい ! と言っているのだから、それを使った方がいい。仮に、別のフォントを使ったからといって、“come back”(出直して来い ! )にはならないでしょうが、こういうのは第一印象が重要なので、私は外国人向けのプレゼン資料は、 Tahoma で統一するようにしています。

 

問題は(3)~(5)です。言わんとしていることはおわかりいただけると思うのですが、一方で、それほど目くじらを立てるような内容か ? そんな印象をお持ちになるのではないかと思います。相手が日本人なら、その通り。それほど留意しなくてもいい内容です。しかし、相手が外国人(特に、アメリカ人)の場合には、ヒドイ目に遭う可能性があるのです。

「自転車置き場の議論」 とは ?


私 「・・・以上で、私からのプレゼンテーションは終了いたします。何かご質問等、ございますでしょうか ? 」

 

一同 「・・・」

 

私 「(や、やべ・・・ 主旨、伝わらなかったかな・・・) えーー、サマリーにも記載しましたが、本日みなさんに確認したいのは、 2 年後に見込まれる大規模案件を獲得するためのチーム組成案が妥当かどうか、そして、それを実践するための invest (投資)が、弊社として可能かどうか、ということです・・・」

 

外国人役員A 「タカシ、 1 つ質問があるんだが・・・」

 

私 「(お、来た来た・・・)はい ! 何でしょう ? 」

 

外国人役員A 「 1 ページ目の “Bank A” と、 4 ページ目の “A Bank” は同じ銀行を指しているのか ? 」

 

私 「同じです・・・ (細かいな、コイツ・・・ 文脈でわかるやろ ! )」

 

外国人役員B 「 3 ページの表に記載された数字の合計が、 1 ページの数字と違うようだが、どうしてだ ? 」

 

私 「 1 ページ目は概算値でして・・・、一方、 3 ページ目は個別案件を積み上げて記載しています。案件全体としては、 1 ページ目に記載されているボリューム感だと捉えてください・・・(案件積み上げて 297 だから、だいたい 300 ってしとるんやーー ! わかるやろーーが、それぐらい・・・(T-T))」

 

外国人役員C 「チャート内に、“赤” の矢印と “青” の矢印 が存在するが、特別な意味はあるのか ? 」

 

私 「ありまへん・・・(もう一生、矢印に色はつけん・・・ ! (T-T)(T-T))」

 

おわかりでしょうか? 上記留意点 (3)~(5) に留意しなかったばかりに、大ハマリをくらってしまうというのは、こういう感じ。ただでさえ、プレゼン時間が短いのに、大切な質疑応答をこんなしょーもない話に費やされては、たまったものではありません。

 

このような状況を、「パーキンソンの凡俗法則※(Parkinson's Law of Triviality)」といいまして、「組織は些細な物事に対して、不釣り合いなほど重点を置く」という様を指します(※通常、パーキンソンの法則(Parkinson's Law)というのは、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」ことを指します。凡俗法則は、その派生系ですね)。

 

よく引用されるのが、こんな例。原子炉の建設や高速道路の設置などを議論する際には、その設置目的をはじめ、メリット・デメリットを分析した上で、大枠で本質的な議論から話が始まる。一方で、自転車置き場のような、どこにでもある汎用的なものについて話し合うときは、屋根の素材をアルミ製にするか、トタン製にするか、屋根の色をどうするか、などの些細な話題が議論の中心となり、そもそも自転車置き場を作ること自体が良いアイデアなのかといった本質的な議論は起こらない・・・。 よって、「パーキンソンの凡俗法則」のような議論のことを、「自転車置き場(bike-shed)の議論」と言ったりします。

 

私が言いたいのは、『日本人が話し手、外国人(特に、アメリカ人上層部)が聞き手に位置づけられる議論は、「自転車置き場の議論」になりやすい』 『よって、話し手側の日本人は、そうならないように、特別な留意をしなければならない』 ということです。私が上述した、外国人役員へのプレゼン時に留意している点とは、まさに「自転車置き場の議論」を避けるための対策に他なりません。

 

では、どうして日本人が外国人にする説明は、「自転車置き場の議論」に陥りやすいのか ? それについては、次回詳しくお話することにしましょう。
(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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