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タカシの外資系物語

“グローバル人材育成プログラム”にモノ申す ! ( その 2 )2011.12.13

日本人が“団体行動好き”である理由

前回の続き) 最近、日系の大手企業を中心に、「グローバル人材育成」を目的とした研修プログラムが活発化しています。「若手中心」「一部エリートだけでなく、対象者が多い」「中国など新興国を中心に派遣」・・・等、企業が当該分野に “本腰” を入れている様子が伺える一方で、目的達成の観点からは、改善すべき部分も見られます。今回のコラムでは、タカシが思う 「グローバル人材育成プログラムに盛り込むべき “方針” 」 についてお話したいと思います。


(方針 1 ) どこの国の、どんな部署でも構わないので、「 1 人で行かせる」

日本人の “団体行動好き” は、比較文化論的にも、よく言われる話です。例えば、旅行においても、一人旅の定番は、失恋した、自分探しをしたい・・・等、娯楽としての“旅”を超越した特別な理由がないと、実行されない傾向が強い。日本においては、旅行といえば、普通は団体(家族やカップルも含めて)を指すでしょう。団体でのツアー旅行が通常メニューとして成り立っている国は、日本や中国など、アジアのごく一部に限られると思います。

 

話はそれますが、現在私は横浜の関内というところに住んでおりまして、休日は山下公園というそれなりに有名な公園を、家族と愛犬ゴルゴを引き連れて、散歩をしています。ここ数年、山下公園あたりでも、中国・韓国から来たと見られる団体旅行客を頻繁に見かけますが、彼らは団体旅行の体裁を取りつつも、かなり自由に行動しています。日本でいう、いわゆる “おのぼりさん” ツアーのように、きっちり整列して歩いているような様は、あまり見られません。ま、団体ツアーである以上、団体で行動していることには変わりありませんが、日本ほど、あらゆることが制約されたルールのもと、軍隊並に統率された団体ツアーを実施している国はないように思います。

話を戻しましょう。なぜ、“個人” ではなく、“団体” なのか ? 最大の理由は、団体で行動することに対する「安心感」でしょう。あとは、個人よりも団体で行動することによってうまくいった「成功体験」があるからだと思います。日本の高度成長期を支えたのは、間違いなく “団体行動” です。平均的な人材が、一糸乱れず、勤勉に働き続ける。そのことによって、(アメリカン・ドリームのような)莫大ではないけれども、それなりの幸福を手に入れる・・・ ステレオタイプ的ではありますが、一般的な日本人の行動原則は、このようなものです。

かわいい子には旅をさせろ !

以上のような “伝統” は、企業の「グローバル人材育成」プログラムにも遺憾なく( ? )発揮されていまして、海外派遣もグループ単位で行うことが多い。数名のグループでチームを作って、派遣後もチーム単位で行動させる。朝から晩までチームで行動して、最終報告もチームにまとめさせる・・・ こういう形式です。

 

慣れない海外で、それも未熟な若手だったりすると、“三人寄れば文殊の知恵” 的に、グループで行動させたくなる人事部の気持ちもわからんでもない。しかし、ここはあえて一人でやらせましょうよ ! 日本人だけで群れていては、せっかくの海外経験が半減、いや、下手をすると 9 割減ぐらいになってしまう。実践のビジネス世界における修羅場で、同期や同僚と仲良く手をつないで仕事なんてできないわけで、何でも自分一人でやり切ってこそ、真の「グローバル人材」といえるのではないでしょうか。

 

私は、日系および外資系企業の双方で、海外研修・出張の経験がありますが、その際の企業側の対応の違いは、本当に驚くべきものがあります。日系企業の場合、往復の航空券・現地ホテルの手配等、何から何まで庶務係の女性がやってくれました。肩書きも何もない、ペーペーの私にですよ ! 現地に着いたら、現地支社の先輩が空港出口で「Takashi Nara」と書いた紙を手に出迎えてくれたし、ホテルまで送ってもくれました。加えて、私がいた銀行では、海外に初めて行く社員には、「準備金」として 5 万円支給されたんです ! うそみたいな話ですけど・・・ 私はそれでスーツケースや必要備品を買って、余ったお金で Y シャツまで新調したりなんかして、ホント、そこまでするか・・・というほどの過保護ぶりでした。

 

一方、外資系企業というのは、何でもかんでも、当事者自らが手配しなければなりません。航空券の手配、ホテルの予約は当然のこと、現地支社に「奈良タカシというのが行くから、ヨロシク!」的な事前連絡も皆無でしたから、現地に着いても身寄りがなく、まるで『母をたずねて三千里』のマルコ少年のような気分になったものです(ふ、古い ! アメデオ(マルコにくっついていたサル)という説もある。私がどれだけ悲惨な目に遭ったかは、『タカシ、ホテルを語る (その 3 ) - 迷子で保護される ?! -』参照のこと。泣けます・・・(T-T))。

 

しかし、上記のような悲惨な経験を通じてこそ、私は初めて行く国でも、物怖じせず、何でも自分一人でできるようになったと思っています。「かわいい子には旅をさせろ」ではありませんが、本当に社員を育てたいと思うなら、海外には一人で行かせるべきです。事前の準備も、「常識の範囲内での最安値ルートを使って、渡航・宿泊を自分でアレンジすること ! 」とか言って、全部任せればいい。そういう苦労があってこそ、現地での研修が身になるってもんだと思います。

海外での “座学” 研修 = 観光旅行 ?!

 

 

(方針 2 ) 座学の研修は不要。「いきなり業務の現場に入れる」

これは、私の経験則から言っています。海外で受ける座学形式の研修ほど、無意味なものはない ! 実務研修の一環で、少しだけ座学が入るならいいですが、座学がメインなら、行かない方がまし。日本で英語のマニュアルでも読んでいた方が、よほど身になります。最近なら、E ラーニングのような形式もありえるし、現地と TV 電話でつないで、Skypeで相互に会話することも難なくできるわけですから、行く必要がないのです。また、複数名が受講の対象となるなら、逆に、外国人の講師を日本に呼んだ方が効率的だと思います。


私はこれまで、ロサンゼルス・サンフランシスコで計 2 回、座学形式の海外研修に参加しました(サンフランシスコでは、研修だけでなく、仕事も兼ねていましたが・・・)。しかし、その成果となると、かなり怪しい。研修自体も、ネイティブの英語でほとんどついていけなかったし・・・ 日本に戻って英語のマニュアル見たら、研修でやったこと、全部書いてあったし・・・ 会社には悪いですが、率直に言って、これらの研修は、「観光旅行」としての価値しかありませんでした(スミマセン・・・) ただ、サンフランシスコに行った際に、思い切ってシリコンバレーまで遠出したのは良かったですね。いわゆる、「シリコンバレーの風」なるものを、直接肌で感じ取れたような気がしたもんです。こういう “オプション” も、海外研修では重要な要素だと思います(シリコンバレーの様子については、 『シリコンバレーのアジア人』参照のこと)。
 
(方針 3 ) 帰国後に幹部向けプレゼンを課すなら、「△△国における新規ビジネス企画」を提起させる
 については、次回お話いたしましょう。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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