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タカシの外資系物語

“箱”に関する再考2011.11.22

君は“Taco Bell”を知っているか ?

“ファースト・フードのお店”と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか ? おそらく、第一位はハンバーガー・ショップでしょう。次いで、ドーナツ、フライドチキン・・・といったところでしょうか。牛丼チェーンも上位に入るかもしれません。ファースト・フード“先進国”のアメリカでも、ほぼ事情は同じです。日本の牛丼も、“Beef Bowl”といって非常に人気がありますし、中にはズバリ“Gyudon” と銘打ったお店もあります。

 

では、ファースト・フードに関して、日米で全く差がないか ? というと、そうでもない。アメリカではメジャーなのに、日本にあまり見かけないファースト・フードがあるのです。それは、「タコス」です(「ナチョス」や「トルティーヤ」などメキシコ系スナック全般も売っている)。もちろん、日本でも「タコス」を知らない人はいないと思いますが、チェーン店がバンバンあるわけではない。しかし、アメリカに行くと、「タコス」は、ハンバーガーやドーナツと同様に、ちょっとした繁華街やロードサイドであれば、まず間違いなく食べることができます。特に、ヒスパニック系アメリカ人の多いカリフォルニアなどでは、もしかすると、ハンバーガーよりタコスを売るお店の方が多かったりもします。

 

「タコス」のファースト・フード店として最も有名なのは、“Taco Bell (タコベル)”でしょう。以前、ある研修で 2 週間ほどロサンゼルスに滞在した際に、宿舎に隣接して、タコベルとバーガーキングがあったもんで、「タコス」と「バーガー」の繰り返しでランチを凌いだことがありました。最初の 1 週間は、「バーガー」→「タコス」→「バーガー」→「タコス」・・・ と順番を守っていたのですが、「バーガー」に食べ飽きた次の 1 週間にいたっては、「タコス」→「タコス」→「タコス」→「タコ焼き」(ないない!)・・・ と、「タコス」のヘビー・ローテーション。帰国する頃には、すっかり “Taco Bell” フリークになってしまいました。日本にも以前、“Taco Bell”チェーン店が存在した時期があったようですが、今となっては、米軍基地の一部でしか食べることができない幻の店となったようです。あーー、残念・・・(T-T)

 

さて、そんな“Taco Bell”なんですが、非常に有名なキャッチフレーズ(企業コピー)を持っています。それは、「THINK OUTSIDE THE BUN ! 」。「THE BUN」というのは、バンズ=ハンバーガーのパン という意味。つまり、「(ファースト・フードといえばハンバーガーの)バンズという固定概念を脱して考えろ ! 」という意味になります。今回のコラムでは、このイディオムについて考察してみたいと思います。

“the box”とは ?

 

外国人(特に、上司の場合が多い)と話していると、次のような表現を、頻繁に耳にします。
「Takashi, think outside the box, please ! 」

このセリフを言われるときは、怒られているときがほとんど。“box”は“箱”という意味ですが、ここでは、“型” “枠組み” “規定概念”といった感じのニュアンスでして、要するに、
「タカシ、規定の枠組みに縛られずに考えてくれないかな ! (んったくもう、怒 ! )」
と言われているわけです。以下のような会話が、典型的ななパターン。

 

私 「ボス、日本の企業というのは、コンサルティングにお金を払うという発想が、まだまだ未熟なんですよ・・・」
ボス 「で ? 」
私 「だから、提案していきなり ン千万払え ! というのはありえない。まずは、“お試しコース”みたいなコンサルを無料で実施して、それを評価してもらってから、正式な提案をしたいんですけど・・・」
ボス 「ふむ、で ? 」
私 「(わからんやっちゃな ! みなまで言わせるなよ・・・)だから、最初の部分は、持ち出しの“手弁当”ということで、投資してくれませんかね ? 」
ボス 「NO ! Takashi, think outside the box, please ! 」 

 

このシチュエーションで、このセリフが出るんです ! これまでに、このようなやり取りを何回繰り返してきたことか・・・(T-T) そして、その度に感じる違和感・・・。
確かにアメリカでは、コンサルティングにお金を払うという文化が成立しているので、「無料で“お試しコース”」 なんていう発想はありえない。しかし、その“規定概念”に縛られずに、日本のビジネス慣習に合わせて、柔軟に考えて欲しいのに ! 

 

「the box(“規定概念”)に縛られているのは、そっちじゃないか ! 」
これが私の言い分なんですよね。

“the box”の 内 と 外 を決めるもの

 

しかし、ボスの言い分は全く逆でして、「コンサルにお金を払わないという日本の悪しきビジネス慣習」こそ、the box(“規定概念”) というわけ。つまり、そんなくだらん規定概念など捨てて、アメリカのスタンダード(=コンサルにお金を払う文化)に合わせるという発想をしなさい、と言っているのです。
こうなると、話は全く収束しません。“箱”の内側と外側の定義が、真逆のあべこべになっているのですから、両者の間に落としどころを見つけることすら、至難のわざとなります。

 

以前、このコラムで、『 LEADERSHIP AND SELF-DECEPTION – GETTING OUT OF THE BOX 』 ( 邦訳 『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 アービンジャー・インスティチュート著 大和書房) という本をご紹介しました(『研修終了 … その成果は ?』参照のこと)。私が紹介したからというわけではないでしょうが、この本、大ベストセラーになりましたね。読者のみなさんの中にも、お読みになった方がいらっしゃるのでしゃないでしょうか?


この本、すんごくいい本なんですが、 1 つ不満が・・・ それは、今回のテーマである、「“箱”の定義が各人で異なる場合、結局は、パワーのある方が正しいことになる」 ということです。

 

外資系企業に勤めていると、上記に述べたような違和感を、いやというほど味わいます。日本という“箱”を知っているからこそ、そのギャップに苦しむのであって、いっそアメリカ人になってしまえたら、どんなに楽だろう・・・ と思うこともしばしばです。

 

日本の“箱”を捨て、アメリカの“箱”が全て正しいと割り切ってやるか ? or とことん、日本の“箱”にこだわるか ? 後者でやっていきたいですが、いちいちこだわっていたら、身が持たん・・・ また、事実として、外資系で成功する人の大半は、前者を極めた人です。魂を売る・・・とまでは言いませんが、日本の“箱”を捨てた人の方が、この業界での“勝率”は高い。まさに、ジレンマですよねぇ・・・


結局、ビジネスにおいて“箱”の内か外か、それを定義するのは、企業でも、そこに働く人でもなくて、お客様=消費者 なんですよね。アップルなんて、故人となったスティーブ・ジョブズ氏の強烈な“箱”ばかりがクローズアップされますが、実は、究極のお客様志向の会社だと思うんです。スティーブ・ジョブズ氏は、どうすればお客様が喜ぶかということだけを考えていたわけで、だから売れたのでしょう。基準はアメリカン・スタンダードでもなく、日本の伝統的な商慣習でもなく、日々刻々と変わって行くお客様の志向にある。このことは、忘れずにいたいと思います。では ! 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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