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タカシの外資系物語

“BLACK BELT”は終わったか ?2011.09.27

お家芸の凋落

最近、サッカー・陸上等々、スポーツが盛り上がっています。これはひとえに、「なでしこジャパン」の効果が大きいと思うのですが、いずれにしても、震災を経て元気がなくなった日本全体に、“国威発揚” の意識が芽生えることは、それはそれでいいことなのだと思います。

 

一方、スポーツの中でも、相撲・柔道など、日本の国技やお家芸と言われたカテゴリーに、からっきし元気がない。まず、相撲は番付上位のほとんどがモンゴル勢などの外国人力士が占めるという、日本人にとっては極めて悲しい状況となっている。そこに追い討ちをかけるように、例の八百長問題・・・ その人気の凋落ぶりや、目を覆わんばかりです。

 

柔道も同様です。先の世界柔道パリ大会でも・・・ っていうか、みなさん、 8 月末に、パリで世界柔道が行われたこと自体、ご存知でしょうかっ ??? 「し、知らんな・・・(汗っ ! )」という人は結構多いのではないでしょうかねぇ。世界柔道はオリンピックとは異なり、 1 つの階級に 2 名の日本人選手が出場することができるので、「金・銀フィニッシュ ! 」なんてのも可能なのですが、結果的に金・銀を独占したのは、女子の 48 kg 以下級と 52 kg 以下級の 2 階級止まり。男子はゼロ。金メダルは、男子 2 つに女子 3 つ。男女それぞれ、 7 階級もあるのに、ですよ ! かつてなら、金メダル 10 個は確実だった日本の“鉄板”競技が、今や見る影もありません。

 

特にショックだったのは、重量級“メダルゼロ”の男子でしょう。男子重量級といえば、国民栄誉賞の山下泰裕さんをはじめ、日本柔道の牙城でした。あれは 1984 年のロサンゼルス・オリンピックにおける男子重量級決勝でのこと。 2 回戦で肉離れを起こした山下選手は、足を引きずりながら、見事な一本勝ちで金メダルを獲得 ! いやーーー、泣ける ! (T-T)今思い出しても、目がウルルン ! (T-T)(T-T)・・・ 

 

えっ ? どうしてそんなに、柔道に肩入れするのかって ? ふふふ、何を隠そう、私はこう見えても 柔道初段=“黒帯” なのですな。運動オンチの私が黒帯になれたのは、単にメタボ体型(身長が低く、足が短く、寸胴・・・)で、重心が低いだけという説もあるのですが、いずれにしても、黒帯は黒帯です。同僚の外国人にも、「I’m “Black Belt”, Judo specialist ! 」というだけで、相手がかなりビビる( & 興味を持ってくれる)ので、初対面時のコミュニケーション手段としても重宝していたりもします。

「なんじゃコリャ ? 」禁止なのに負けた !

 

さて、実は今回の世界柔道なんですが、個人的にはかなりの好成績を密かに期待していました。というのも、日本に有利な “ルール改正” があったんです。具体的には、“タックル禁止”。ここ数年、日本の柔道は、外国勢の“タックル”に、ことごとくやられていました。みなさんも、「なんじゃコリャ ? 」みたいな技で負けていく日本人選手を目にしたことがあると思います(No.270 『「なんじゃコリャ」に勝てるか ? 』参照)。これについては、日本の「柔道」と、世界の「 JUDO 」は違うのだと言われたりもしたのですが、日本人としては、柔道をバカにされているみたいで、何だか釈然としなかった。やはり、背負い投げ、内股、大外刈り・・・ みたいな、「これぞ、柔道 ! 」といった技で一本勝ちするのが、醍醐味ですからね。

 

“タックル禁止” ということは、“なんじゃコリャ ? ” がなくなったわけですから、日本人得意の技でバッタンバッタンなぎ倒してくれることを期待していたのですが、結果は上述の通り。一体、どうして日本の柔道はここまで弱くなってしまったのでしょうか ? 

 

その理由について、武道に詳しい松原隆一郎 東大大学院総合文化研究科教授が、興味深い指摘をしています(週刊新潮 2011/9/8 号より)。

 

【日本柔道が弱体化した理由】
(1) 日本の柔道界には、“お家芸だからこちらが上” という慢心がある
(2) 外国人は日本に来て練習しているのに、日本人は外国に行かず日本人同士で練習するだけ。世界に勝つためには、サッカー選手のように単身でどんどん世界に出て行くくらいでないといけない

にゃるほど・・・ でもこれって、ビジネスの世界にも当てはまると思いません?

世界に飛び出せ ! BLACK BELT

 

「中国はすごい ! 」と、よく言われます。そもそも 13 億人以上もいる国なのですから、ポテンシャルがあることぐらいは、子供でもわかります。しかし、彼ら・彼女らのすごさは、ボリューム面だけでは説明できません。同僚として接していてわかるのは、彼ら・彼女らは、必死に“日本から学ぼう”としていることです。

 

「日本はわれわれ中国より先進国である。これは動かしがたい事実。だったら、日本人から徹底的に学んで、その技術を身につけよう・・・」 そういう意識が本当に強い。だから、中国人は複数で日本にやって来ても、決して自分たちで群れずに、日本人の中に積極的に溶け込もうと努力します。優れた技術や経験を持つ日本人には、心底頭を下げて、教えを請います。その成果が、現在の中国における爆発的な経済発展の基礎となっているといっても過言ではないでしょう。

 

一方、日本人はどうか ? まず、海外に行こうとしない。よしんば行ったとしても、現地に溶け込もうとせずに、群れる群れる・・・ これは、日本人の内気さといった文化的差異として説明されることが多いのですが、私はむしろ “慢心” という意識が強いからではないかと思っています。「ビジネスにおいて、日本人は頂点近く( = アメリカの次)にいる。もはや、外国から学ぶことはほとんどない。強いて言えば、英語とアメリカ的発想( = MBA 思考)ぐらいか・・・」 これが、多くの日本人ビジネスパーソンの本音ではないかと思います。

 

しかし、今やアメリカはビジネス界の頂点ではない。もっと言えば、英語もアメリカ的発想( = MBA 思考)も、お金を払えば、日本国内で身に着けることが可能な時代です。むしろ、学ぶべきは、既に日本を凌駕しつつある中国や韓国の発想であり、肩を並べられつつあるアジア諸国の発想ではないでしょうか。

 

幸いなことに、技術や品質面における日本の優位性は、まだ世界レベルにあります。日本はまだ、教えを請われる側にいる。今こそ、“慢心” を捨て、その優位性を武器に、世界に飛び込んで行くときなのではないでしょうか。

 

男子柔道の篠原信一監督は、今回の世界柔道での惨敗を受け、「最後は根性論・・・」と呟いたとのこと。いやいや、それだけではないでしょう。「I’m “Black Belt”, Judo specialist ! 」と言うだけで、特別視される世界が、まだまだ世の中に存在しているのです。その技術・経験・スキルの優位性を携えて、自ら世界に飛び込む “勇気” にこそ、根性論・精神論を見出すべきだと思うのですが、みなさんはいかがでしょうか。“Black Belt” の雑感でした。では ! 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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