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タカシの外資系物語

出世するアイツがしていること -役員編- (その 1 )2011.09.06

“大トラ” S くんの言い分

居酒屋にて・・・

 

「タカシさんは、一体どうやってパートナーに昇進したんですかっ ! 」
どうやって、って言われてもなぁ・・・
「僕なんか、夜も寝ずに、週末も犠牲にして頑張っているのに、マネージャーにもなれやしないっ ! ヒック ! 」
絶対的な労働時間は必要だけど、やたら長いからって、出世するわけでもないしねぇ・・・
「ヒ、ヒック ! 結局あなたは、自分の出世しか興味がないんだ ! そんなに偉くなりたいのかーーーーーーーっ !! 俺は使い捨てかーーーーーーーーーーーーーっ ! ヒック、ヒ、ヒック !!! 」
なんやねん、こいつ・・・(T-T)

 

部下の S くんが悩んでいるというので飲みに誘ったのですが、こりゃ、とんだ “大トラ” もいいところ。あーぁ、タクシーで送ってやんなきゃならないだろーなぁ・・・。最近、うちの会社も経費にうるさいから、自腹か・・・ トホホ・・・(T-T)(T-T)

 

S くんは私の部下ですから、彼が昇進しないことについては、私にも大いに責任がある。私のモットーは、「マネージャーの最大の仕事は、次のマネージャーを育成すること」ですから、彼にしっかりしたコーチングを実施して、出世してもらうことは、私の最大の仕事の 1 つです。

 

さて、 S くんへのコーチングは別の機会にお話しするとして、ここでは、 S くんが酔っ払って思わず発した言葉 = 「そんなに偉くなりたいのかーーーーーーーーっ !! 」について考えてみたいと思います。 「会社で偉くなりたいですか ? 」 みなさん、どうです ?

出世に関するタカシの言い分

 

「そりゃ、そうっしょ。偉くなれば給料も上がるしね」 ・・・ (1)
「社会的なステイタスも上がるぞ」 ・・・ (2)
「出世すれば、今よりも大きな仕事ができるよな」 ・・・ (3)

 

いろいろな意見があると思います。私自身はというと・・・、正直言って、この問いに対する回答は非常に難しい。確かに、偉くなれば今よりも給料は増えますが、その分、仕事も確実に大変になります。実際に、今の立場で言うと、私は現在「パートナー」という職位で、その上は「執行役員」になります。「執行役員」になれば、給料は今の 1.5 倍程度に増えることはわかっているのですが、仕事の大変さは 2 ~ 3 倍、いや、場合によってはそれ以上になるイメージ。給料は多い方がいいに決まっていますが、だからといって、あの職責を背負わされるぐらいなら、今のままでいいかな・・・ などと、弱気な考えを抱いたりもします。

 

一方、だからといって、そこそこにゆるーく働いて、「パートナー」に留まり続けるというのも、ほぼ不可能。「執行役員」になりたい奴らがウジャウジャいる中で、相応の成果を上げ続けなければ、「パートナー」で居続けることもできんわけです。基本的に、Up or Out (昇進かクビかの二者択一) の世界ですからね、特に外資は・・・。つまり、上記(1) (2) (3) でいうと、メリットとしての (1) よりも、デメリット(またはリスク)としての (3) の方が明らかに大きいということになります。

 

では次に、 (3) はデメリットなのか ? という点について考えてみましょう。上記セリフのニュアンスでは、大きな仕事(職責)はメリットであると捉えています。ま、理念的にはわからんでもないし、 (3) をメリットとして捉えたほうが何となくカッコいいし・・・、でも、現実問題としてどうか? どんなに給料をもらえたとしても、執行役員の激務には二の足を踏む・・・ という人は多いのではないでしょうか。私はどちらかというと、その部類に属します(正直にぶっちゃけますが)。

 

ただ、仮に執行役員になれたとしたら、 (3) の観点で、間違いなくいいこともあります。それは、「部下を引き上げることができる」「困っている現場を助けることができる」ということです。その利点は捨てがたい。同じ議論は、『踊る大捜査線』なんかにもあって、これ以上の出世欲のない室井監理官は、現場の青島巡査を助けるため、彼を引き上げるために、本庁で偉くなろうと頑張ります。こういう発想は、私にもある。室井監理官役の柳葉敏郎さんのように男前ではないですが・・・

 

(2) については、個人的には興味がないです。名誉で人が救えるのなら別ですが、所詮自己満足の世界なので、どうでもいい。

同期パートナー ○田 の策略

 

では本題に入りましょう。今回のコラムで取り上げたいテーマは、「一体、どのような人が出世するのか ? -役員編- 」です。

 

一般社員のレベルで出世する人というのは、成果を上げた人、学閥に乗っている人等々、事情はどうであれ、その理由は何となく説明がつく場合が多い。しかし、これが役員以上になると、不明瞭な昇進、「なんでアイツが常務やねん・・・」みたいな出世が増えてくる・・・ こんな印象ありませんか ? 私の経験則からいくと、これは、日系・外資系問わず、共通に見られる事象だと思います。役員の階段を駆け上る、アイツは何をやったのか ? どのような手段を使ったのか ? それを考えてみたいと思います。

 

先日、US の本社から、次期社長の呼び声高い上級副社長 R 氏が来日したときのことです。私は自分が担当するクライアント先に、 R 氏を紹介したくて、来日の数週間前から、 R 氏の秘書さんにアポ取りをお願いしていました。

 

私 「 1 時間でいいんで、時間取れないでしょうかねぇ・・・」
R 氏の秘書さん 「タカシ、申し訳ないけど、すでにスケジュールが全部埋まっているのよ」
私 「す、すでに・・・(T-T) 可能なら、 R 氏来日中のスケジュールを見せてもらえませんかね・・・」
秘書さん 「いいわよ・・・」

 

R氏の来日時スケジュールは、主要クライアントとのアポイント、および日本支社首脳とのミーティングで、びっちり。

私 「ダメだ、こりゃ・・・(T-T)(T-T)。 ん ? 、あれ ? この、○田パートナーとの会談っていうのは ? 」
○田は、私と同じ時期にパートナーに昇進した男。優秀なんですけど、キザでちょっと、やな奴。 R 氏の貴重な時間が、なんで○田との面談で抑えられなきゃならんねん ! 

 

私 「この、○田パートナーとの面談って、 R 氏は了承してるの ? 」
秘書さん 「ええ・・・ だって○田さん、半年も前から R 氏の来日を狙って、アポ入れしていたんですもの・・・」
は、半年前って・・・、なんとねーーーーーーーーーーーっ ! 
秘書さん 「それに、○田さんは、 US の本社に来たときも、必ずといっていいほど、 R 氏と面談してるしね・・・ R 氏が次期社長候補と見るや、ホント、したたか・・・ タカシも負けないように頑張った方がいいんじゃないの ? 」
ニャンとねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!

 

こういうのを、外資では 「 Penetration がうまい」と言います。 Penetration という単語の意味は、「浸透」「洞察」といった意味のほかに、「(政治的)工作」というのもあります。それにしても、○田のやつ、なんてしたたかなんだ !

出世する役員の条件(その 1 ) = Penetration がうまいこと

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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