グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

タカシの外資系物語

Show Your Leadership ! の本質 ( その 2 )2011.08.22

リーダーシップ理論の発展

前回の続き) 今週から数回に分けて、「リーダーシップ理論」を概観したいと思います。

毎回 “トホホ話” ばかり披露している私ですが、こう見えてもコンサルティング会社のパートナーですので、「戦略論」とか、「リーダーシップ理論」については、常識として一通りマスターしています(つもり、です・・・)。加えて、これは外資系企業一般に言えることだと思うのですが、研修体系の中に、「リーダーシップ理論」の話がふんだんに取り込まれているため、マネージャーレベルであれば、一般的な理論はマスターしている人が多いと思います。

 

リーダーシップ理論は、以下のように発展してきました。

(1) リーダーシップ特性論・・・優秀なリーダーが持つ「特性」を特定する
(2) リーダーシップ行動論・・・リーダーの「行動」を類型化し、効果的なスタイルとは何か
(3) リーダーシップ状況適応論・・・「状況」によって、どのようなスタイルが有効か
(4) 変革型リーダーシップ論・・・組織変革を実現するために求められるリーダーの行動
(5) その他派生系リーダーシップ論・・・主に、(4)以降に出てきた理論

 

前回のコラムでお話した “コッターの「 8 段階プロセス」” は、上記(4)に該当します。リーダーシップ理論の世界では、コッターの理論が 1 つのエポックメイキングになっていて、それ以前は体系的に説明できていたものが、コッター以降は、有象無象、玉石混交の理論がうじゃうじゃ出てきたというのが私の印象です。それではまず、コッター以前の代表的な理論である「パワー理論」について見てみましょう。

「パワー理論」 の 有効性

 

「パワー理論」は、1960 年ごろに、社会学者のフレンチとレイブンという人がまとめた理論です。パワーとは、「相手が認知した影響力であり、心理的・行動的な変化を起こさせるもの」と定義されています。人がアクションを起こすのは、パワーを認知するからであり、リーダーというのは、そのパワーを発揮する人として位置づけられます。

 

では、「パワー」とは具体的に何でしょうか ? この理論では、 5 つのパワーを上げています。

1. 強制パワー(Coercive Power)・・・相手に対し、罰等を与える権限を持っている
2. 報酬パワー(Reward Power)・・・相手に対し、報酬を与える権限を持っている
3. 正当パワー(Legitimate Power)・・・「立場上、この人の言うことを聞いた方がいい、聞くべきである」と思えるパワー。例えば、直属の上司と他部署の上司の場合、直属の上司は自分の部下に対して、このパワーを持っているといえる
4. 準拠パワー(Reflect Power)・・・相手に魅力を感じて尊敬し、「あの人のようになりたい」と思わせるパワー
5. 専門パワー(Expert Power)・・・専門性・高い問題解決能力を有するパワー

 

外資の研修では、参加者の得意なパワーを認識し、 TPO に応じて、どのようにパワーを使い分けるべきか・・・ といったケーススタディが実施されます。結論として、講師がまとめるのは、以下のようなパターンです(私は講師が異なる研修に複数回参加しましたが、いずれの結論も、まとめるとこんな感じでした。よって、これが、外資の「あるべきリーダーシップ・パワー」なのだと思います)。

 

・ 各パワーをバランスよく発揮することが重要 → そりゃそうだろ・・・
・ 「正当パワー」を前提とし、残りのパワーを行使する → 外資では、日系企業以上に、上司・部下の関係が徹底しています。実際のところ、他部署の上司が言うことなんぞ、屁のツッパリにも思っていない(無視している)人がほとんどです。
・ 「強制パワー」と「報酬パワー」による影響力は、短期的には有効だが、中長期的には限界がある。日ごろから、使いすぎないようにすること → いわゆる、「アメとムチ」のことです。体育会系の営業部なんてのは、この 2 つのパワーに頼る傾向が強いように思います。
・ 配下メンバーの成熟度が低い場合には、「専門パワー」が有効である → OJT に加え、コーチングを実施する・・・ なんていう、いまどきの上司像ですね。ボッコボコに叱りつけた後に、「よし、飲みに行くぞ ! 」・・・ なーんてのは、もう古いのでしょうかね ? 

外資が重視する 「パワー」 とは ?

 

上記の通り、外資では「正当パワー」を前提としています。日系の場合は、直属の上司ではない○○さんからの依頼でも、「○○さんの頼みなら、断れないなぁ・・・」という状況がありえますが、外資では一切ない。直属の上司以外の依頼・指示を実践しても、何の得にもならないような仕組みなので、そもそも、そういう意識が全くありません。すごくわかりやすい考え方である一方、日系のファジイで臨機応変の利く関係に慣れている人には、ギスギスした感じを持つ人も多いと思います。

 

さて、「正当パワー」は前提条件として、残る 4 つのパワーのうち、外資が重視しているものはどれか ? 

 

それは、5. の専門パワーです。次に、4. の準拠パワー、って感じ。5. はトレーニングによって、後天的に得ることができるパワーです。だから、外資は高いコストをかけて、5. を伸ばすための研修を実施するのです。
一方、4. は先天的な部分が大きい。要は、「親分肌」「器」みたいなもんですから、研修を受けたからといって、急に身につくもんでもない。
あと、これは余談なんですが、外資では、極端に 4. が強い人を評価しない傾向にあります。その表面的な理由は、「準拠パワーが過度に大きいリーダーの場合、メンバーの依存度が高まり、自立的成長を阻害する」から、とのこと。ま、わからんでもないんですが、何とも肝っ玉の小さい話をしている印象がありますよね。結局のところ、あまりにも 4. の強いリーダーの出現は、現行の経営層の立場を脅かす可能性があるから要注意・・・ なのではないかと勘ぐったりします。

 

1. 強制パワー、 2. 報酬パワー というのは、リーダーの能力云々ではなく、単なるルールというか、所与の事項です。罰も報酬も、パワーそのものよりも、それを繰り出すタイミングが重要なのでしょうね。

 

次回は、コッター以降の代表的なリーダーシップ理論について、お話したいと思います。

(次回続く)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

合わせて読みたい

---