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タカシの外資系物語

“ポジション・インフレ” を克服せよ ( その 2 )2011.05.17

タカシ、飲み屋でサトシを激励 ?!

前回の続き) 異例の大抜擢で、マネージャーとして中国への赴任を果たしたサトシ。順風満帆に見えた彼のキャリアですが、久しぶりに会ったサトシの表情は、自信なさげで今にも泣き出しそう・・・。一体何が起こったのでしょうか ?


サトシ 「部下が多すぎるんです・・・ 100 名以上の中国人スタッフを管理するなんて、私には荷が重過ぎるぅぅぅ・・・(T-T)」


日本で部下を持った経験の乏しい人が、中国やインドなどに赴任して、いきなり数十名~数百名のリーダーになってしまう状況・・・。これぞ、典型的な 「ポジションインフレ」状態です。


私 「そっか・・・、今日の夜、時間ある ? ちょっと飲みに行こうか ? 」


私は、思い悩むサトシくんを飲みに誘って、話を聞いてやることにしました。で、以下が飲み屋での会話・・・


サトシくん 「・・・本当にすみません。こんな情けない話でお時間いただいちゃって・・・」
私 「何言ってんだよ、んたっくぅ・・・。俺なんて、最初の海外出張のとき、迷子で警察に保護されたんだから、それに比べりゃ、マシ、マシ!」( 『タカシ、ホテルを語る (その 3 ) - 迷子で保護される ?! -』)
サトシくん 「日本からマネージャーとして赴任したのに、自分のことで精一杯で、部下のケアが全くできなくて・・・」
私 「現地スタッフだって子供じゃないんだから、サトシが面倒みてなくたって、大丈夫だよ ! 」


サトシくん 「そうは言っても・・・ 僕のせいでスタッフが辞めでもしたら、どうしようか、って・・・」
私 「日本と違って、中国の人材マーケットは極めて流動的なんだから、丁寧にケアしようが、辞めるときは辞める。気にすんな ! 」

○○に飢えたサトシ

えっ ? わざわざ飲みに誘ったわりには、なんか淡白というか、えらいしょうもないコメントしかしないんだな、って ?! それで、いいんです ! こんな場合、とりあえず話を聞いてやることが重要なんですから。無理に先輩ぶって、アドバイスなんてしなくていい。とにかく、ひたすら聞いてやるのです。 なぜ、このような対応でいいのか、って ?


中国やインドにかかわらず、海外赴任をする人材というのは、そもそも能力は平均よりも高い。「ちょっと無理かな・・・」と思う業務やポジションであっても、十分こなせる潜在能力を持っているはずなのです。ただ、慣れない土地で、少し戸惑っているだけのこと。そういう人材に対して、やれ、こうした方がいい、お前のやり方は間違っている、などとアドバイスするのは、逆効果になることの方が多い。慣れてくれば、サトシくんなりのやり方で克服するはずです。


もちろん、全て放任すればいいというわけではなく、出来る限りのサポートは必要でしょう。その国独特の文化や考え方を熟知した上でアドバイスできる人、可能なら、現地にいる人 を、“アドバイザー” として紹介してやるのも有効です。私の場合、中国オフショアセンターの責任者であるAさんは、パートナー昇進の時期が同じだったので、よく知っています。なので、A さんに、「サトシくんをよろしく!」メールを 1 本。あと、マレーシア研修で同じチームだった中国人の B さんにも、メールを 1 本。サトシくんには内緒で送っておきました。


それよりも何よりも、今、サトシくんが飢えているのは、「日本語で思いのたけをぶちまける ! 」ということ。私も、半年間ロンドンに出張していたときは、日本語が話したくてウズウズしていました。それも、独り言で話すのではなく、日本語を理解してくれる人に、とりとめのない話を延々と話したい・・・ こんな感じなんですよね。だから、この日は全編、上記のような感じで “聞き上手” に徹したというわけ。


「タカシさん、ありがとうございました。思いっきり話したら、なんか気分が楽になりました。また相談に乗ってください ! 」


うんうん、ま、体壊さない程度に頑張ってくださいな・・・

海外赴任は “企業リスク” ?

海外赴任が欧米中心だった時代、海外赴任者の多くは、「欧米に学びに行く、教えを請いに行く」という基本スタンスで臨んでいたように思います。受け入れ側も、いきなりやってきた日本人に、現地スタッフの管理など到底無理ですから、役職のわりには大目に見る。よって、「ポジション・インフレ」など起こりえないわけです。


しかし、時代は変わり、海外赴任の中心は中国・インドなどのアジア各国や南米・東欧など、猛烈に発展している国に移りつつあります。赴任してやってくる日本人は、以前のように、“おのぼりさん” 気分というわけにはいかない。当然のことながら、即戦力の管理職として機能することが期待されます。


サトシくんの場合も、今後、どうなるかはわかりません。実際に、私の会社でも、最近の海外赴任(=欧米以外が主流)では、うまく適応できないケースが頻発しているとのこと。中には、メンタル的に長期間立ち直れないような事例もあるということですから、今や海外赴任は企業経営における大きな “リスク” といえるかもしれません。
逆に、欧米以外の諸外国で実績を上げた人材には、ヘッドハンティング話がひっきりなしに来るとのことですから、人材を引き抜かれるという、違う意味での “リスク” も存在し続けています。


このようなリスクに対する対応策としては、サトシくんのケースのように、経営層が積極的に赴任者の “後見役” として関与することに加え、以下のような取り組みが必要だと思います。


(1)長期的な視点に立った海外赴任者の育成 ・・・ 現地ローカルの大学(院)や語学学校に入学させて、その後赴任させる。欧米への赴任の場合、「MBA or 語学留学」→「赴任」という基本的な流れがあったように思うのですが、中国やインドの場合、このような配慮がやや薄いように思います。
(2)現地マネージャーの育成 ・・・ 日本からの赴任者に頼らず、マネージャーを現地調達する。結局、現地のことは、現地で生まれ育った人にしかわからないことが多いですからね。


いずれにしても、中国やインドには、これまでとは違った形で、日本人が活躍できる素地があるのは確か。うーーむ、なんだかワクワクしますよねーー。私もサトシくんと会話していて、ますます、中国に行きたくなりました。 みなさんはいかがでしょうか ? では ! =サイチェン(再見) !  

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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