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タカシの外資系物語

イチローと外資系(その 3 )2011.02.22

最近の若手は、「ホームラン狙い」 ?!

前回の続き) アメリカ人同僚との会話から、アメリカではメジャーリーガー(打者)を、次の 3 基準で評価していることを理解したタカシ。


(1) “量(数)” よりも “率” を重視する (前回のコラムで説明済)
(2) “率” の中でも、“出塁率” が最も評価が高い
(3) “ホームラン” を最重視しているわけではない

これらの評価基準、外資系ビジネスにも共通しているって、本当でしょうか ?!


「(2) “率” の中でも、“出塁率” が最も評価が高い」というのは、要するに、「どんな形でもいいから塁に出たモンが勝ち ! 」ということを言っています。きれいなヒットでなくても構わない、四球でもデッドボールでも何でもいいから、とにかく塁に出ろ ! ・・・ なんとなく、ニュアンスはわかりますよね。


「(3) “ホームラン” を最重視しているわけではない」も、実はこの発想の延長線上にあります。当然、ホームランはかっこいいし、だれもが憧れます。しかし、ランナーがいないときのソロホームランは1点しか入らない。一方で、塁上にランナーがいれば、 2 点以上入る。つまり、だれかが塁にいただけで、ソロホームラン複数本の値打ちがあるわけです。俗に「ランナーをためる」と言いますが、まずは塁に出なければ話にならないというわけです。


最近の若い人たちは、「ホームラン狙い」の人が多いように思います。特に、私が身を置いているコンサルティング業界は、その傾向が強い。どこで覚えてきたのか知りませんが、完璧なパワーポイントを作って、完璧にプレゼンして、期限通りにプロジェクトを終えて、成果を上げようとする。それが理想であることは間違いありませんが、彼ら・彼女らは、そうでないとダメ、全てを完璧に終えないと NG と思いこんでいる。それ以外にゴールはないと決め付けているのです。しかし、現実はそうそう甘くはありません。自慢ではありませんが、私など、思った通りにプロジェクトが進んだことなんか、過去に一度たりともない!(えらそうに断言することではないが・・・)


きれいなチャートやグラフがなくたって、聞き手に伝わるプレゼンができればいい。極端な話、パワーポイントでなくても、ホワイトボードに手書きすればいい。要は、聞き手が理解すれば、“塁”に出ることができるのです。期限ギリギリで徹夜の嵐でも、クライアントのやりたいことが達成できていれば、“塁”に出ることができるのです。その積み重ねで塁上にランナーをためて、最後はスクイズでもいいじゃないですか。それでも 1 点は 1 点です。そういう泥臭い積み重ねの中で、意図せず、時にホームランが生まれるのではないでしょうか。天才でもない限り、ホームランなんて、狙って打てるもんではないのです。

全ては “数字” に置き換えられる

少し熱くなってしまいました。話を戻しましょう。ビジネスの世界において、最もわかりやすく、かつ公平な基準は、やはり「数字」です。 1,000 円稼いだ人より、 1,001 円稼いだ人の方が偉い ! これは、外資であろうが、日系であろうが、基本的には同じ基準だと思います。ただし、細かく比較すると、日系の方が少しだけ “質” も加味した評価をしているように思います。日系の場合、「あいつの儲けは少ないけど、彼の案件は非常に難しいものだから、定性的に評価してやろう・・・」という感じで、ゲタをはかせる傾向が強い。実際に、数字での貢献はイマイチなのに、“定性的”な 評価が高くて、出世する人が結構います。みなさんの周りにも・・・ いますよねぇ ? 


一方、外資では、“定性的”な 評価基準というのは、基本的に存在しません。「うそーっ ! 外資系企業では、リーダーシップ とか 定性的な要素が評価の対象になっているって聞いたけど・・・」 す、するどい!(汗っ) その通り、わが社でも Leadership、Relationship(クライアントとの関係構築)などの評価項目があります。一見すると、確かにこれらの要素は、極めて“定性的な”ものに見えます。しかし、これらの評価項目は、以下のような前提を含んでいるのです。


1.外資系企業の評価は、だれが何と言おうと数字第一 ! 数字をクリアした者のみ、“定性的”な 評価項目が加味される
2.“定性的”な 評価項目についても、最終的には“定量的”に表現し直して評価される


まず1.ですが、売り上げなどの数的目標が達成されていない者は、どんなにリーダーシップがあろうが、どんな人格者だろうが、ダメなのです。 A・B・C の 3 段階あるとしたら、この段階で「 C 決定!」となります。数的目標を達成した B 以上の人に対してのみ、 A と B の差をつけるために、“定性的”な 評価項目をつけているにすぎません。


そして2.ですが、“定性的”な 評価項目についても、最終的には“定量的”な表現ができなければ、評価対象にはなりません。例えば Leadership なら、何人規模のチームを管理したとか、 Relationship なら、クライアントのエグゼクティブと何回会って、結果、プロジェクト受注につながったとか、具体的な“数字”を求められます。結局は、全てが“数字”だというわけです。


逆にいうと、“数字”という形で表現できていれば、どのような項目でも評価に対象になりえます。私の場合、「銀行に対するコンサル手法の社内勉強会を“○○回”実施して、のべ“△△人”の人材にスキルを伝えた」「若手に対するメンタリングを“××回”実施して、感謝のメールを“□□通”もらった」等、定性的な活動の全てを“数字”に表現し直して、上司にレポートしています。当然、こういった内容も、数的な目標が達成していなければ、海の藻屑と消えてしまうわけですが・・・

「アンリトン・ルール」を守れ !

なんだか、ドライで世知辛い話になってしまいました。最後に、数字以外の話を 1 つ。メジャーリーグには、「アンリトン・ルール」というのがあります。「アンリトン・ルール」とは、unwritten rule=言葉で表現できないルール を意味します。日本語で言えば、「不文律(=暗黙の了解)」というやつです。

 

「アンリトン・ルール」には、以下のようなものがあります。

・チームが 5 点以上勝っているときは、ボールカウント 0 - 3 からの球をスイングしてはならない( 0 - 3 の後は、ほぼストライクが来るので、それを狙うな・・・ということ)
・ホームプレートから足をはみ出して打とうとしたり、プレートに覆いかぶさったりしてはならない
・勝ったときでも、相手チームや敵のファンがいるところでは大げさに騒いではならない


いうなれば、メジャーリーグの「紳士協定」みたいなもんでして、プロたるもの、見苦しい真似をしてまで勝とうとするな、ということなのでしょう。仮に、上記のような行為を冒した場合には、相手投手から故意にボールをぶつけられたり、ファンからブーイングを浴びたりするようです。実際に、イチロー選手や、メジャーリーグ時代の新庄選手などは、アンリトン・ルールに抵触してしまって、トラブル沙汰になったこともあるとのこと。


なるほど・・・ ならば、ですよ ! 外資系企業も、日本社会の「アンリトン・ルール」は守ってほしいところですよね。一時流行った、「ハゲタカ」なんてのは、日本の「アンリトン・ルール」を完全に無視しているのではないでしょうか。そこまでして、“塁”に出たいのか ?  
外資系企業は、確かに“塁”に出るのがうまい。しかし、節操もない。自分の市場(アメリカ)の利害は守って、他国の市場はどうでもいいというのでは、国際社会が許しません。全ての外資系企業がそうだとは言いませんが、進出国の「アンリトン・ルール」を守って、共存共栄をはかり、その国の市場を活性化させてこそ、真の外資系企業といえるのではないでしょうか。この点は、今後の課題だと思います。


いずれにしても、まず“塁”に出る ! これが重要です。私も、デッドボールやポテンヒットばかりではなく、たまにはスカッとホームランをかっ飛ばしたいと思います。では ! 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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