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タカシの外資系物語

海外に行きたくないのかーーーっ!(T-T)(その2)2011.01.04

“海外志向”は、“生き残り策” ?

 

みなさん、新年明けましておめでとうございます!
本年も、『タカシの外資系物語』をよろしくお願いいたします!

 

前回の続き) 最近実施されたある調査結果(by 産業能率大学)で、日本企業に勤める一般社員(主に若手)の海外志向が極めて低い一方で、部長クラスの海外志向は高くなっている・・・ というレポートがありました。今回のコラムでは、「1. 部長の海外志向が、予想以上に高いこと」 と 「2. 一般社員の海外志向が、予想以上に低いこと」 に分けて、私なりの見解をお話したいと思います。


まず、「1. 部長の海外志向が、予想以上に高いこと」について。調査を実施した産業能率大学の分析では、部長クラスが海外勤務に積極的な理由を、以下の 3 点で説明しています。

(1) 部長層に登用されている人材は組織コミットメントや挑戦意欲が高い
(2) 高い地位にあるために海外勤務に対する心理的な準備ができている
(3) 海外派遣がさらなるキャリアの向上につながるチャンスだという意識を持っている


(1) (3) は理解できるんですよ。でも、(2)ってそうかなぁ・・・ 過去に海外勤務を経験した人ならいざ知らず、部長でもヒラ社員でも、いきなり海外勤務を命ぜられたら、やっぱりうろたえると思うんですけど。心理的な準備なんて、できているでしょうか? ま、高い地位にあればあるほど、「海外勤務を断る = それまでのキャリアを捨てる」 という意味合いが強くなるでしょうから、否が応でも行かざるをえない状況に追い込まれることは、容易に想定できますがね。


私はそれよりも、現在の部長クラスは、そもそも潜在的に、かつ若い頃から海外志向が強かったのだと思うのです(前回コラムの「ウルトラクイズ」のくだり参照のこと)。産業能率大学の調査では、海外勤務に前向きな人は、部長クラスでは、57.1 %、課長クラスでは 41.2 %、一般社員 29.3 % と、役職が下がるほど低くなっています。つまり、部長 > 課長 > 一般社員 という関係。過去に同様の調査があったわけではないので何ともいえないのですが、80 ~ 90 年代なら、部長 < 課長 < 一般社員 という関係になっていたように思うのです。部長クラスの海外志向が高い理由の1つは、80 ~ 90 年代の「何が何でも海外に行きたい」という一般社員の層がそのまま持ち上がっているという側面も大きいのでは・・・ という仮説を持っています。

 

もちろん、日本人の一般的な意識として、海外に抵抗感がなくなってきたことも大きいでしょう。これには、「外資」も一役かっていると思います。この 20 年の間に、日本市場および日本が製品を供給してきた市場において、外資のプレゼンスが飛躍的に高まりました。内需に期待できない日本にとって、もはや海外をターゲットにしなければ、ビジネスが成り立たなくなってきたわけです。これは、「海外志向」というよりは、「海外なしには生き残れない!」 という、もっと悲壮感が漂った意思の表れのようにも思います。

0 年前の “海外” と 現在の “海外” は違う ?

さて、私としては、「2. 一般社員の海外志向が、予想以上に低いこと」の方が大問題だと思います。なぜなら、以前より海外志向の強かった層が部長クラスになったことによる押し上げ現象の 1. とは異なり、2. は階層の動きでは説明できない。つまり、一般社員の思考形態そのものが抜本的に変化した可能性があるのです。

 

1 つの理由としては、日本の若者が総体的に内向き志向になっていることが挙げられるでしょう。例えば、文部科学省の調査でも、海外の大学・大学院に留学する日本人が急減していることが指摘されています (2008 年の日本人留学生は 66,833 人で前年に比べ 11 %減少。4 年連続で落ち込み幅は過去最大)。もちろん、昨今の経済不況がその主要因であることは間違いありませんが、もう 1 つの理由として、就職活動が早期化する(しすぎた ! )ことにより、大学生が海外に留学する時間的余裕がなくなっていることも大きいように思います。これについては、財界あげての対応が必要な部分といえるでしょう。


それともう 1 つ、“海外” という場合の対象となる地域が、20 年前と現在では、様変わりしたことも大きな要因だと思います。20 年前に “海外” といえば、たいていの場合、アメリカ・ヨーロッパを指しました。アメリカ・ヨーロッパに行くということは、大部分において日本より優れている国において、スキルやノウハウを学ぶということを意味します。私も含め、20 年前の「何が何でも海外に行きたい」層は、暗に「海外=アメリカ・ヨーロッパ」を意図していたように思います。

しかし現在において、“海外”派遣という場合、行き先がアメリカ・ヨーロッパになる可能性はきわめて低い。おそらく、どの企業においても、“海外”派遣事案の 2 つに 1 つは「中国」なのではないでしょうか。


例えば、私の会社の場合、2009 年度における海外赴任・海外出張の行き先は、以下の通りでした(カッコ内は全体に占める割合%)


1 位 中国(なんと 80 % ! )  2 位 アメリカ(逆の意味で、なんと 5 % にすぎない!) 3 位 フィリピン  4 位 インド  5 位 ベトナム  6 位 イギリス ・・・ と続きます。今や、“海外” というのは、アメリカ/ヨーロッパではなく、中国・インドを中心としたアジアを指しているのです。


対象がアジアになったことは、一般社員の海外志向にも大きな影響を与えているように思います。スキル・ノウハウを学ぶ、憧れの対象であった海外(アメリカ・ヨーロッパ)が、どちらかというとスキル・ノウハウを授ける対象としての海外(アジア)に変わってしまったわけで、これによって、一般社員のテンションが下がってしまったのではないか。また、アメリカ・ヨーロッパに比べると、治安が悪い(と思われている)ことも、アジアへの渡航をためらう理由の 1 つかもしれません。

いざ、アジアへ !

しかし、だからこそ、若い皆さんには海外にチャレンジしてもらいたい。20 年前に私が憧れたアメリカ流ビジネス・スキル ( ≒ MBA ビジネス・スクールで学ぶ内容) など、今となっては既に陳腐化しています。誤解を恐れずに言えば、アメリカ・ヨーロッパから学ぶことなど、もうほとんどないのです。

一方、アジアに行けば、われわれ日本人が主導権を持ってビジネスを開拓し、進めることができる。また、中国人やインド人には、欧米のビジネス・スクールで MBA を取得した人材が多数いますから、そういう意味で、彼ら・彼女らから学ぶことも非常に多い。そんな環境で切磋琢磨することによって、アメリカ・ヨーロッパに行ったのと比べて、何倍ものスキルアップをはかれる可能性が高いように思うのです。


また、これは私の経験論ですが、アメリカ・ヨーロッパよりも、アジアの方が治安はいい ! 少なくとも、表通りは ! (アジア諸都市の裏通りは、かなりヤバそうなところもありますが、そんなとこ、行かなきゃいいのです)。また、欧米人はデカイので、威圧感がある一方、アジア人は、同じ背丈で顔つきも似ていて安心。ま、これに関しては、個人的な感覚なのであまり説得力はないですが・・・


今私が一番赴任したい国は、「中国」です。政治的な問題をはじめ、日中両国で克服すべき課題は多数ありますが、やはりあの市場規模は魅力です。中国とコラボすることで、新しいビジネスモデルを構築したい、これが当面の私の目標です。


ちなみに、パートナーに昇進する際に、今後のキャリアパスについて申請する項目がありまして、私は「今後の赴任希望先」として、「中国」「インド」を記入しました。アメリカ・ヨーロッパもいいですが、中国・インドはそれ以上の魅力です。だって、何か新しいことにチャレンジできそうなんですもの。みなさんも、そんな気がしませんか ?! 内向き志向なんて吹き飛ばして、アジアを中心とした世界を股にかけて活躍する日本人が増えることを切に願う、今日この頃です。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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