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タカシの外資系物語

“シャドウイング” のすすめ (その 3 )2010.12.14

役員会議の準備完了!

前回の続き) 終日、役員の横に付き添って、その仕事ぶりを実体験するという 「1 day シャドウイング」 プログラムに参加したタカシ。プログラムも残すところ、メイン・イベントである「役員会議」だけとなりました・・・


Andy 「タカシ、役員会議までは時間があるから・・・ そうだな、PM 8:50 に戻ってくればいいよ!」
私 「O・・・OK !」


役員会議はアメリカ本社時間に合わせて開催されるため、日本ではPM 9:00 スタートとなります(遅っ!)。実は内心、「ご苦労様、もう帰ってよし!」って言ってくれるんじゃないかと淡い期待を抱いていたのですが、そうは問屋が卸さんようでして・・・(T-T)。
人事の担当者からは、「“シャドウイング・プログラム” で役員会議にまで出席が許されるのって、滅多にないんですよーー。タカシさん、超ラッキー!」と言われたものの、本心ではそうは思えない。正直、早く帰りたーーい! 「そうなんですか! そりゃ、ラッキー! スキルアップにつなげるぞー」 てな感じに、前向きに受け止めることができれば、人生もっと楽しいんだろうな、と思う今日この頃・・・。何事も控えめな自分が疎ましく思ったりもします。トホホ・・・


本日の「役員会議(Management Committee と呼んでいます)」は、アメリカ本社の上級副社長がchairperson(主催者)となっています。議題は、「あるトラブル・プロジェクトについて」。このプロジェクトは、世界中の支社が関わっているもので、日本支社でも知らない者はいない有名プロジェクト。トラブっているという噂はあったのですが、まさか、その対応を決める役員会議に直接出席することになろうとは、夢にも思っていませんでした。

 

Andy から、「議事録(minutes)を取るように!」と言われたので、会議がスタートするまでに“予習”をしておかねばなりません。当然のことながら、資料も何もかも、英語ばっかし・・・(T-T)。もちろん、会議も英語で進むわけですから、ついていけるかどうか、超不安・・・(T-T)(T-T)。
ただ、欧米人のいう「minutes」 と 日本語の「議事録」 というのは、少しニュアンスが違うように思います。日本で議事録というと、まるで劇の台本のように、発言者の一言一句を記述するようなものも見受けますが、そんなものは要求されていない。日本の「要点まとめ」を、さらに簡略化した程度のイメージです。結論のみ、箇条書きで A4 半分ぐらいあれば十分でしょう。


「よし、プロジェクトの概要は理解したぞ! 今日の総仕上げだ、頑張ろう!」

上級副社長の一言

・・・ ・・・ ・・・ ・・・

ん? 疲れて寝てるのか、って? いやいや、寝れるわけないっしょ、英語で議事録とってるんだから!
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
会議が停滞しとるんですな。いわゆる、「stuck(動かない)状態」というやつです・・・


会議のスタート時点は順調だったんですよ。まずは、担当の役員からプロジェクトの状況と見通しが伝えられました。結論からいうと、「このままでは、期限に終わりそうにない・・・」という見解。そこから矢継ぎ早に、営業系・品質管理系・ファイナンス・広報担当の役員が、それぞれの立場から、意見を主張しました。「これ以上、赤字を垂れ流すわけにはいかない」「プロジェクト管理がが機能していないんじゃないか」「当初の見積もりに無理があったのではないか」「お客様のわがままを聞きすぎているんじゃないか」「プロジェクトがトラブっていることが公表されたら、ブランドに影響するんじゃないか」・・・ 

 

ま、よくあるパターンですな。このような局面では、日系も外資系も、反応は似ています。担当役員は自己主張の繰り返し。それも仕方ない、自分の主張をしておかないと、どんなお鉢が回ってくるかわかりませんからね。
こんな調子で侃々諤々やっているところに、上級副社長が一言。


「で、どうするつもりなんだ?」 
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 
この一言で、一瞬にして会議の場が凍りついたというわけです。


「社運をかけた大規模プロジェクトがトラブルに・・・ さて、どうするのか?」 シンプルに考えると、“撤退する” か、 “(赤字覚悟で)突っ込む” か、しかないんです、実際のところ。外資の場合は、短期間での収益性を重視する傾向が強いので、“(赤字覚悟で)突っ込む”というのは、ほとんどないはず。今回のケースも、“撤退”に向けてどのようなロードマップ(=スケジュール)を立てるか、または、“撤退”しないまでも、規模を縮小しつつ、いかにしてプロジェクトを再構築するか、このあたりが落としどころになるだろうな、と思って聞いていました。
と、そのとき、沈黙に耐えかねた上級副社長が、こんな一言を発したのです。


「おいおい、みんな、原点に帰って考え直せよ。クライアントにとって、最もハッピーなのは、どういう状態なんだ ? それを実現しようじゃないか!」 

ホントは“熱い”? 外資系経営陣

ん ? クライアントにとってハッピーな状態・・・ それって、“(赤字覚悟で)突っ込む”もアリってこと ? うそーーーーーーーーーーーん ? 外資がそんな意思決定するのーーーーーーーーっ ?!

 

Client First、Client Happy・・・ いわゆる「顧客第一主義」というスローガンは、外資系企業がよく用いるものです。しかし実際には、収益性の方が重視されるわけで、「顧客第一主義」とは言いながらドライな決断をする・・・ これが典型的な外資のイメージだし、自分の会社もそうだと思っていました。
しかし、目の前で進められている役員会議で、上級副社長の口から、愚直に「顧客第一主義」を追求するよう指示があったわけで・・・ これまで自分が抱いていた幻想・誤解を打ち砕く発言に、私はしばらくあっけにとられていました。

 

結局、当面の間、プロジェクトは規模を縮小して建て直しをはかるものの、わが社も相当量の“投資”(つまり、“赤字”負担)をすることで、お客様に話を持ちかけることに決定。お客様側にも一部負担をお願いするようですが、めちゃくちゃな金額ではありません。客観的に見て、わが社の負担が大きいイメージ。私としては、予想外の結果となりました。


会議終了後、コーヒーを手渡しながら、Andy が私に話しかけてきました。
Andy 「タカシ、経営会議はどうだった ? 」
私 「“Client First、Client Happy” って、お飾りのスローガン(nominal motto)じゃなく、意思決定の基準として機能しているんだね。少し、誤解していたよ・・・」
Andy 「もちろん、われわれがやっているのはボランティアではなくビジネスだから、最低限の収益が確保できないと、事業やプロジェクトの継続は難しい。しかし、事業というのは短期の収益性だけでは測れない部分もある。そんなとき、われわれ経営陣は“Client First、Client Happy” という根本理念に立ち返るようにしているんだ・・・」


なんか青臭いんですけど、結構感動したんですよ、私(うるるん)。正直、はじめてわが社の役員を「かっこいい!」と思ったし・・・(T-T)。実は、われわれ日本人が外資をステレオタイプ的に見すぎているだけで、本当はもっとピュアなで熱い精神で経営しているのかもしれません。それがわかっただけでも、今回の「1 day シャドウイング」 プログラムに参加した甲斐があったというものです。


Andy 「それにしても・・・ タカシはパートナーに昇進したにもかかわらず、われわれ経営陣が“Client First、Client Happy”を基準に経営していることを、今更知ったのか ? 」
私 「え ? いや、そういうわけじゃ・・・」
Andy 「 1 day シャドウイング、もう 1 日やるか ? 」
私 「いっっっっ ! 」 (気絶しかけ)
Andy 「冗談だよ、冗談、ハハハ。本日はお疲れ様。そして、ありがとう ! 」


翌朝、本件の担当だった人事部のエミさんから、電話がかかってきました。
エミさん 「タカシさん、昨日はお疲れ様でした ! 」
私 「は、はぁ・・・(激・疲れ・・・)」
エミさん 「 1 つ言い忘れたんですけど、半年後に、マネージャー向けの 1 day シャドウイング・プログラムを実施することになりまして・・・ 今回とは逆の立場で、タカシさんのシャドウとして、数名のマネージャーをお願いしたいんですが・・・」
私 「いっっっっ ! 」 (気絶・・・)


半年後、乞うご期待 ! って、勘弁してくれーーーーーーーーーーーっ(T-T)(T-T)(T-T)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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