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タカシの外資系物語

パートナーに昇進して思うこと2010.08.24

パートナー よりも マネージャー の方が楽しい ?

すでにご報告の通り、この 7 月 1 日付で、パートナーに昇進しました。以前にもお話したと思いますが、外資系コンサルティング会社の多くでは、役員のことを「パートナー(Partner)」と呼んでいます(『パートナー(役員)になろう !』 参照)。わが社でも、パートナー以上の職位は、"Executive" という定義付けがされています。
しかし、日本の一般企業でいうところの「役員」とは、ちょっと違うかな・・・ って、感じもします。「執行役員」というほど仰々しいものでもないし、それほど偉くない気もする。ま、「部長」ってとこでしょうかね・・・。いずれにしても、わが社の平均的なパートナーの下には50~100人程度のスタッフがぶら下がっていますので、それなりの・・・ いやいや、かなりの重責であるのは確かでしょう。

 

私自身は、マネージャーであった 3 年ほど前に、配下 40 名のチームを率いたことがあります(当時、単独チームとしては社内最大の組織でした)。現在の配下人数は50名強ですから、人数的にはそれほどの差はありません。しかし、現在は私の配下にシニアマネージャーが 2 名いて、その配下にさらに 2 名ずつのマネージャーがいて・・・ というピラミッド構成になっています。つまり、私が日々接するのは、 2 名のシニアマネージャーのみで、 50 名のスタッフ一人一人と接点を持つことはほとんどありません。

 

一方、 3 年前は、私の配下に直接 40 名がぶら下がっていたので、日々、 40 名を管理する立場でした。経費の承認から病気で休むといった連絡受付まで、全ての処理を私がしていたので、個々のスタッフの状況が、手に取るように理解できたのです。それと比較すると、パートナーという職位は、何となく味気ないというか・・・ 逆に、マネージャー(課長)というのは、それはそれで、楽しい職位だったように思います。まだ数週間しか経験していませんが、パートナーになると、数字ばかりに追われて、部下の成長を実感するような経験に乏しいように思います。

"普通の人" に課せられたミッションとは ?

前回のコラムで、部下の A くんから 「 "普通の人" であるタカシさんがパートナーになったということは、われわれスタッフにとって、大きなモチベーションと勇気を与えてくれます・・・」という主旨のメールを受け取ったという話をしました。それについて、後日談をお話したいと思います。

 

パートナーに昇進した翌週、アメリカ本社の副社長と一対一で面談する機会がありました。その際に、私は思い切って、私がパートナーに昇進した "真の" 理由を、副社長に確認することにしました。

 

私 「・・・あのぅー、1 つ聞きたいことがあるんですけど・・・」

 

副社長 「何だい ? 」

 

私 「経営陣が、私をパートナーに選んでくれた最大の理由って、何でしょうかね ? 」

 

副社長 「そりゃ、収益面での期待が大きいよ、それとリーダーシップ面でも・・・」

 

私 「いや、そういう一般的なことではなく、私だけに当てはまること(uniqueness)があると思うんですけど・・・」

 

こんな質問、日本企業ではまず無理だと思います。「せっかく昇進させてやったのに、文句でもあっかーーー!嫌なら、昇進取り消すどーーー!」 てな感じで、怒鳴られるのがオチでしょう。しかし、外資では普通に見られる光景です。部下が上司に対して、個人的な人事評価内容を確認するのは当然の権利ですし、質問を受けた上司は真摯に答えなければなりません。

 

副社長 「ふーーむ・・・」 

 

社長はしばらくの間、書類(おそらく、私の人事考課が記載されていると思われる)を眺めていました。そして、おもむろに次のように答えたのです。

 

副社長 「わが社のManagement(経営陣)がタカシに期待しているのは・・・ 『ロールモデル(Role Model)として、若手の手本になってほしい』 ということかな。最近、わが社、特に日本支社にいる若手の求心力がなくなってきたと聞いている。タカシが先頭に立って、全体を引っ張ってほしい・・・」

 

副社長のその言葉を聞いて、正直、ものすごくうれしかったのです。私は花形スターでもないし、頭が抜群に切れるわけでもない。でも、だからこそ、身近な存在として、若い人たちのロールモデルになれる・・・ Aくんのメールと全く同じことを、副社長の口から聞けるとは! 

 

実は、「こんなしょぼい俺が、パートナーなんぞになってもいいんじゃろうか・・・(T-T)」 と、一人思い悩んでいました。実際に、そういう主旨の噂(タカシなんぞがパートナーになるなんて、おかしい! という苦情)も、一部にはあるようだし・・・(T-T) でも、こんな自分だからこそ、ロールモデルとして選ばれたわけで、一気に自信が出てきました(単純・・・)。今は、若手や経営陣の期待に応えられるように頑張りたいと、素直に思っています。

 

パートナー タカシ の目標

このコラムの連載を開始した10年前、私はシニアコンサルタントという職位でした。管理職ではない、一般のヒラ社員です。それが運良く、お客様や上司、同僚、部下に恵まれた結果、役員職になることができました。

 

私自身、出世亡者のように、ガリガリやってきたかというと、決してそういうわけではありません。しかし、出世したかったのは確かです。なぜなら、出世した方が、自分で自由にできる権限が広がって、仕事が面白くなるはずだと思ったからです。実際に、職位が上がれば、裁量権も増えました。ただ、数字のノルマがそれ以上に増えたので、「自由にできる!」という実感が追いつかなかったというのが実感でしょうか。出世すればするほど、自由を謳歌するというよりは、数字に追い立てられて「ヒィヒィ」言っているというのが現実です。

 

一方で、給与も増えました。それは事実です。ただ、パートナーになって増える分のほとんどは「ストック・オプション」だったりするので、現実感(=手取りの現金が増えたという手触り感)は乏しい。ま、ぜいたくは言えません。

 

さて、パートナーになった今現在、私が見据えている目標は何か? 遠い将来、どこかの銀行に戻って、CIOになるという夢や、コンサルとして独立するという夢を捨てたわけではありません。が、当面は、会社に恩返しをしたいとも思っています。具体的には、「次のパートナーを育てる」という恩返しです。

 

私が常日頃思っていることに、「リーダーの最大のミッションは、次のリーダー(自分の代わり)を育てることである」というのがあります。これがうまく回っている組織は、やはり強い。簡単には潰れない。一方で、いかに革新的な商品やサービスを提供する企業であっても、リーダーの育成に失敗した企業は、長続きしない。カリスマ経営者の後継がいないために、次の代でコケルというのは、よくある話です。
私は経営者ではありませんが、経営の末席を汚す者として、少なくとも3名のパートナーを育てたいと思います。副社長やAくんが私に抱いている期待は、まさにそういうことなのでしょうから。

 

さてさて、なんだか、今週でこのコラムが終わってしまうような流れになっています。でも、心配しないでください。
このコラムは、まだまだ続きますから!

 

なぜって、“普通の人”である奈良タカシは、パートナーになっても、トホホ・・・なことをし続けるんです、やっぱし・・・。そして、読者のみなさんに、それを報告しなければならない使命があるんです・・・。

 

みなさん、引き続き、『タカシの外資系物語』 をよろしくお願いします。10年後、1,000回記念のとき、私はどうなっているのか? そして、みなさん自身はどうなっているのか? 楽しみにしていたいと思います。では!

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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