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タカシの外資系物語

パートナー(役員)になろう ! ( その 4 )2010.06.01

“佐々木社長”、窮地に立つ!

前回の続き) パートナー(役員)昇進試験の一環として、外部評価機関である「HR Assessment 社」との面談を受けることになったタカシ。最終関門である「シミュレーション・テスト」が始まったのですが・・・


「あなたが佐々木社長かね、今回の不始末、一体どうしてくれるんだ!」
「は、は、はいっ (T-T)(T-T)」


その “テスト” は唐突に始まりました。私は “佐々木宏” という、ある企業の社長の役です。事前に、以下のような状況を知らされています。


■ “佐々木宏” は、デルタ・ソリューションズというプリンター機器メーカーの社長である。
■ 佐々木は 2 週間前に、同業他社から引き抜かれて転職したばかり。前職社長は体を壊し入院中のため、十分な引継ぎを受けていない。
■ デルタ・ソリューションズ社におけるここ数年の業績は低迷中。安価が売りの新興国メーカーや、ペーパーレス化をコンサルティング提供する外資企業に押されている。
■ 1 週間前、大手顧客である ABC 銀行で大トラブルが発生。機器が故障したにもかかわらず、メンテナンス部隊が臨機応変に対応できず、銀行の業務が滞ってしまった。
■ メンテナンス部隊が対応できなかった理由は、安価な下請け企業を雇っていることが大きい。最近、デルタ・ソリューションズ社では、機器のメンテナンス業務を子会社が対応する方式から、下請けの別会社にアウトソースする方式に切り替えたばかり。
■ このトラブルに対して、銀行の担当役員が佐々木のもとに、直接クレームを言うために怒鳴り込んできた・・・

 

・・・ま、よくあるパターンです。コストでは、安価な労働力を武器に低価格で攻勢をかける新興国メーカーにかなわない。コンサルティング事業への転換も思うようにいかない。アウトソース先のサービスが悪く、品質低下につながる・・・ 日本の伝統的なメーカーに見られる典型的な「負の連鎖」といえるでしょう。うーーむ、困ったもんだ・・・ と、悠長なことを考えている状況ではありません! お客様が目の前にいるんだった!

 

(怒鳴り込んできた) ABC 銀行役員 「こちらとしては、訴訟も辞さないつもりなんだがね!」
私(社長:佐々木宏役) 「今回のトラブルについては、本当に申し訳ございませんでした。お詫びいたします・・・」

“佐々木社長”、すぐ折れる !

ABC 銀行役員とのやりとりにおいて、私は以下 3 つの “成果” を達成しなければなりません。つまり、時間内にこれらを実現できるかどうかをテストされているわけです。


【“佐々木宏”がすべきこと】
(1) トラブルを謝罪し、取引継続の確約を得ること
(2) ABC 銀行の経営戦略を聞き出し、デルタ・ソリューションズの新製品・サービスを売り込むこと
(3) 今後の取り組みにおいて、ABC 銀行に対するあなた自身の関与率を 5 % 以内に抑えること


面談時間は 20 分とのことでしたので、謝罪ばかりしていたのでは、(1)だけで時間がなくなってしまいます。ここは要領よく、話を進めなければなりません。


私(佐々木) 「本来なら、すぐに私の方から今後の対応をご説明にあがるべきところ、重ねて申し訳ございません・・・」
ABC 銀行役員 「どうだか・・・ 前の社長さんは、一度も私のところにお見えにならなかったけどね。そういう、顧客軽視の姿勢が、今回のトラブルにつながったんじゃないの ?! 」
・・・うぅっ、なかなか厳しい指摘(汗っ ! )


私(佐々木) 「これまでの対応については、本当に申し訳ございません。今後は、社長である私自らが ABC 銀行様の担当として、定期的な状況報告に参りますので・・・」
ABC 銀行役員 「ふーーん・・・ じゃ、しばらくの間、週に 1 回は私のところに状況報告に来てください。加えて、うちの現場も見てもらった方がいいだろうな・・・ よし、私のところに報告に来ていただく日の午前中は、うちの営業店を回って、現場のニーズを直接聞いてくださいよ」


私(佐々木) 「は、はぁ・・・ (うーーむ、いくらトラブルを出したとはいえ、社長が自ら、そこまでやる必要があるのだろうか?)」


ABC 銀行役員 「佐々木社長自らがそうしてくれたら、とりあえず、取引関係は継続しましょう。しばらくは “様子見” ということで・・・」
私(佐々木) 「是非、そうさせてください」


・・・ゲンキンな私。既にお気付きだと思いますが、「(1) 取引継続」と引き換えに、「(3) ABC 銀行に対する私の関与率を 5 % 以内に抑えること」をあっさり断念しています。週に丸一日(つまり、関与率 20 %)は、 ABC 銀行のために時間を使うことを約束したようなもんですから・・・ トホホ・・・ だめだ、こりゃ・・・(T-T)

 

役員業の本質とは ?

シミュレーションの前半戦は、ABC 銀行役員に、完全にペースを握られてしまいました。「(2) 新製品・サービスを売り込むこと」ぐらいは、達成しなければ・・・


私(佐々木) 「・・・ところで、ABC 銀行様は積極的に海外展開を進めていらっしゃいますが・・・」
ABC 銀行役員 「今年中に、韓国と中国に出店します。来年には、シンガポールやタイへの進出も計画中ですな」
私(佐々木) 「現地では、どんなコンセプトの銀行を設立されるんですか ? 」
ABC 銀行役員 「実はね、“完全ペーパーレス” の銀行を目指しているんですよ。今の銀行は、やたらに紙が多すぎる。紙をなくせば、顧客にとっても、銀行にとっても、非常にメリットがあるはずだ。まずは海外でペーパーレスを実践して、それを日本に逆輸入することを考えています・・・」
私(佐々木) 「それは素晴らしい ! 」
実は私、本業のコンサルでは、「銀行の合理化」を専門にしています。ペーパーレスについても、いくつかのプロジェクトで経験あり。これは、私の得意分野に持ち込めそうですぞ ! 


私(佐々木) 「実は私、前職時代に、銀行様のペーパーレス化を担当したことがございまして・・・」
ABC 銀行役員 「ほう・・・」
私(佐々木) 「銀行におけるペーパーレス化のポイントというのは・・・」 (よしよし、調子出てきたぞ ! )


私(佐々木) 「・・・ということなんですよ」
ABC 銀行役員 「なるほど、佐々木社長の見識には恐れ入りましたな。是非、うちのコンサルをお願いしたい」
私(佐々木) 「是非 ! (これは、うまくいきそうだ ! )」
ABC 銀行役員 「そうなったら、佐々木社長はうちの銀行に入り浸りですなぁ、ガッハッハ!」
し、しまった ! つい調子に乗って、また ABC 銀行への関与率を上げてしまったぁ・・・ トホホ・・・ 本格的に、だめだ、こりゃ・・・(T-T)(T-T)


自分の得意なことを、自分の力でやるのは、それほど難しくありません。重要なことは、いかに仕事を割り振るか。その前提として、スタッフを信用し尽くさないと、仕事など投げられない。社長を含め、役員というのは本当に難しいものです。
そういう意味では、「(3) ABC 銀行に対する私の関与率を 5 % 以内に抑えること」という課題は、役員業の本質を表現しているように思います。テストの結果は “惨敗” でしたが、私にとっては参考になることが多い面談でした。


さて、「パートナー昇進」の結果はいかに ? ま、かなり望み薄な状況ではあります(T-T)・・・が、結果が判明次第、みなさんにはご報告したいと思います。なにしろ、コラム 4 週分も使ってしまいましたからね・・・ では !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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