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タカシの外資系物語

“出戻り” ですが・・・、何か ? ( その 2 )2010.03.09

タカシ、“勧誘部隊”に配属 ?

前回の続き) 前職時代の同僚 F さんから、「お久しぶりです、特に用はないんですけど・・・」と、当を得ない電話。しかし私は、同僚 F さんは、「うちの会社に戻らないか ? 」という勧誘をしているに違いないと考えました。その理由の 1 つは、前職企業で私と同レベルのスタッフが複数退職しているため、私に白羽の矢が立ったのではないか、ということ。そしてもう 1 つ、こんな理由もあるんです・・・

 

実は私、F さんと同じような経験があるのです。つまり、会社を辞めた連中に、「もう一度、うちの会社に戻らない ? 」という勧誘電話をかけたことがあるということ。それも、1 度や 2 度では済みません。実際に、外資では、このような “勧誘部隊” を組織的に設定しています。私の場合は、「今私がいる会社から、○○コンサルティング(私が前にいた会社)に転職していった人材」を対象に、電話か E メールで連絡を取っていました。

 

「あ、もしもし、A さんですか ? 奈良です、奈良タカシですよ。どーも、お久しぶり ! 元気ですかぁ・・・? 」

 

「ふーーん、そっか・・・ やっぱり、○○コンサルティングって、そういう点がイマイチだよね・・・ 僕がいたときから、全然変わってないや・・・」


「実はね、うちの会社で、A さんの専門分野を再拡充しようって動きがあって・・・ 当然 A さんなら、即戦力だから、どうかなって思ってさ。 もちろん、A さんにその気がないなら、無視してくれていいんだけど・・・」
・・・と、こんな感じ。

 

で、先方の反応はいかに ? 実は、ほぼ100%同じ反応が返ってきます。それは、「あいにくなんですけど、今は間に合ってますから、結構です !(なぜか、ちょっとキレ気味)」


私 「あ、そうですか ? それはそれは・・・、お忙しいところ、申し訳なかったです。じゃ、念のため、私の連絡先をお伝えしておきますね。何かあったら、ご連絡くださいね。ま、何もないかな・・・? 」
とりあえず、こんな感じで終わります。

高確率の “転職請負人”

さて、その後どうなるか ? 私の経験では、10 人に声をかけたら、数日後に、3 人ぐらいから電話がかかってきます。

 

「奈良さんですか、先日ご連絡いただいた A ですが・・・ あのぉ・・・ 先日の件なんですけど・・・」 (「間に合ってますから、結構です ! 」とキレていたんじゃないのか ! ま、現実はこんなもんですわな・・・)


で、これも私の経験ですが、電話がかかってきた 3 人のうち、少なくとも 1 人は勧誘に乗って、転職します。つまり、元の会社に「出戻り」するというわけです。


10 人に勧誘をかけて、3 人から反応があり、1 人が出戻ってくる・・・ この確率、いいのか、悪いのか ? みなさん、どう思われます ?

 

「 10 人中 1 人ってことは、10 %の確率か・・・ まぁまぁ、って、とこじゃないの ? 」


な、何をおっしゃるっ ! 中途採用の業界で、「声をかけた対象者比 10 %の確率で転職」 ってのは、恐ろしい高確率なんですぞ、みなさん ! 対象者を極めて狭い範囲に絞るエグゼクティブ・サーチ(いわゆる一本釣りのヘッドハンティング)の会社でも、10 %には届かないのではないでしょうか。それほどの高確率なんです。

 

ま、よくよく考えてみれば高確率になるのも当然の話でして、転職はしてみたものの、
「何か、違うなーー。もしかして、失敗したかもな。元の会社の方がよかったかなぁ・・・(T-T)」 
という人に対して、元の会社から、<br />
「実は、戻りたいんでしょ ? このー、うりうり、正直におっしゃい ! 戻りたいなら、戻ってもいいんですよーーー」って、誘いが入るわけですから、その人が置かれている状況次第では、まさに「渡りに船」というわけです。

 

また、声をかけられる面々は、一度は “転職” を実行しているわけで、Job Hopper とまでは言わないまでも、転職しやすい人種であることは間違いない。これも、高確率の一因だと思います。これも私の印象ですが、「出戻り転職」をする人は、それまでに 3 回以上の転職を経験している人が大半だと思います。

アイツが “ 10,000 人抜き” できた理由とは ?

さて、首尾よく元の会社に「出戻り転職」したとしましょう。<br />

「やっぱり、出戻りって、肩身が狭いんじゃないのー ? だって、一度は裏切って出て行ったわけなんだからさぁ・・・」

 

日本人的な発想では、そう思いますよね、やっぱり。しかし、外資では、その心配はほとんどないと思います。というか、前にどの会社にいようが、出戻りだろうが、何だろうが、ほとんど関係ない。要は、与えられたミッションを実行さえしてくれれば、出身はどうでもいいわけです。そういう意味でのハンデやイジメ的なものは、ほとんどないというのが実態です。

 

現に、同僚の B さんなどは、1 年前に同業他社に転職して、半年前にまた出戻っています。しかし、その事実を知る人は、私を含め、数名しかいません。みんな、「お、B じゃねぇか ! 最近見なかったけど、海外のプロジェクトにでもアサインされてたの ? 」 程度にしか思っていなかったりします。このことは、外資における社員の結びつきが希薄であることを表していて、少し寂しい話でもあるのですが・・・

 

最後に、「出戻り転職」のバリエーションについてお話しておきましょう。出戻り転職にはいくつかのパターンがありまして、上記で述べたのは、一度出て、ほぼ同じポストで戻るという「単純出戻り」のパターン。これ以外に、これまでに私の周りで起こったものとしては、以下 2 つの派生型があります。

 

親会社 - 子会社 間の 「往復」 パターン

親会社を辞めて、子会社に転職し、また親会社に戻る(その逆もあり)パターンのことです。<br />

「これって、単に親子間での “出向” “転籍” じゃないの ? 」 というアナタ。違うんですねぇ、これが。実際に、いったん会社を辞めて、また入り直しているのです。

このパターンがよく見られるのは、アメリカと日本など、国をまたがるようなケースです。国ごとの制度の違いから、いったん辞めて、入り直す方が有利になるケースもあるようです。このコラムでも、NY 本社から日本支社に「転職」した Joseph の例を紹介していますので、一読ください(『ハローグッバイ ?』 参照のこと)。

 

大きくなって戻ってきた 「出世」 パターン

起業するために会社を辞めて、そのベンチャー企業が成功し、元の会社が買収する・・・ そんなウソみたいな話を、私は 2 つ知っています。いずれのケースも、世界的大手の IT 企業を退職し、自ら興したベンチャーが成功したものです。

 

このパターンが面白いのは、「辞めたときはヒラ社員だったのに、出戻りしたときは役員待遇で戻ってきた」ということ。その社員は自分が興したベンチャー企業では、社員数名とはいえ、れっきとした「社長」なわけです。買収する側の大手 IT 企業も、いくら買収したとはいえ、「社長」をないがしろにするわけにもいかず、「役員待遇」で迎えたというわけ。実際に、私の知る例では、この「出戻り“出世”」の結果、全世界ベースで 10,000 人抜き(大手 IT 企業を退職する前と出戻り後のポストの比較)をして役員になった人がいます。いやはや、これは、ギネス級ですよね・・・

 

さて、みなさん、「出戻り転職」についての理解は深まりましたか ? すでに、日系企業でも同様の動きが出始めているという噂も。 「昨日の敵は今日の友」・・・ と思ったら、明日には敵になって、明後日にはまた味方で・・・ って、ホント、ややこしい世の中になったもんですね。では !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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