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タカシの外資系物語

“ブリーフ・セラピー” の効果は ? ( その 3 )2010.02.23

ブリーフ・セラピーの質問項目

前回の続き) 「どんな手段であっても構わないから、効果の出ることをする」「解決策は自分の中にある(すでに自分が持っている)」 このような考え方のもと、短期で成果を出す “ブリーフ・セラピー”。軽いうつ症状が出ていた A くんも、ブリーフ・セラピーを受けて、症状が若干改善したようです。さて、ブリーフ・セラピーとは、一体どのようなカウンセリングなのでしょうか ?


私 「ブリーフ・セラピーって、どんな感じで進めるの ? 」
A くん 「それがですねぇ、過去に受けた同種のカウンセリングとは全く違う質問ばかりで、ちょっと戸惑いました。私が質問されたのは・・・」 (注: A くんは、これまでにも複数のカウンセリングを受診していました。それらと比較して、「違う」と言っているのです)
A くんによると、カウンセラーは以下のような質問をしたようです。


【ブリーフ・セラピーの質問項目】
( 1 ) このカウンセリングでどんなことを話したいですか ? カウンセリングの結果、どのような変化を期待しますか ?
( 2 ) 今の気分を 1 ~ 10 で表すと、どの程度になりますか ? 例えば、現在を 3 だとしたら、1 のときと比べると、どの部分がマシですか ?
( 3 ) 何をしているときが、一番楽しいですか ? それを頻繁に、長時間やってみてはどうですか ?
( 4 ) 奇跡を信じますか ? もし信じるなら、仮に奇跡が起こったとして、朝起きて全ての悩みが解消されていたとしたら、今までとは何が違うと思いますか ?


さて、上記の質問について、A くんはどのように回答したのでしょうか ? 
A くん 「正直、( 4 ) については回答できませんでした。“奇跡” は信じなくはないですけど、自分に当てはめてみて、具体的にイメージできなかったので・・・」
そりゃそうですね。私も ( 4 ) のような質問をされたら、戸惑うかも・・・ 「 MBA ホルダーになって、TOEIC900 点で、役員になって、身長が 180 cm に伸びて、福山雅治並の顔立ちになって・・・」 こんなことなら言えますけど。何だか、七夕の短冊に書くお願いのようなイメージ・・・ 自分の「小男ぶり」(見た目だけじゃなく、考え方がショボい ! )が露見して、はずかしいことこの上なし・・・(T-T)


A くん 「ただ、その前の ( 1 ) ~ ( 3 ) の質問を回答する段階で、少し気分が軽くなってきたんですよね。楽しいことだけを考えていると、今まで悩んでいたのが、バカバカしくなってきて・・・」

好きなサッカーを見ましょう !

A くんは、大のサッカー好きです。自分でやるのも好きだし、見るのも好き。深夜に BS でやっている海外サッカーの番組を見ているときが、ささやかながら一番楽しい瞬間と感じています。
しかし実態はどうか ? 過酷なプロジェクト業務に追われ、深夜帰宅後も、延々と仕事をしています。「締め切りに間に合わなかったらどうしよう・・・」「作業の質が低いと、上司やクライアントに怒鳴られる・・・」 こんなことばかりが心配になって、起きている時間の全てを仕事に振り向けていないと、ダメになってしまうかのような「錯覚」に陥っているようです。


以上のような A くんの状況について、カウンセラーの先生は、次のようにアドバイスしたそうです。
「仕事は仕事として、必要なら長時間やればいいじゃないですか。でも、好きなサッカー中継のときは、PC を閉じて、TV を思いっきり楽しみましょうよ」
「あと、休日は眠くても、できるだけ早く起きて、近所の公園でサッカーをされてはどうですか ? 私も休日は早朝ジョギングをしていますが、爽快で気持ちいいですよー ! 」


以上のような、カウンセラーからのアドバイスに対して、A くんは少しだけ気持ちが楽になったそうです。「サッカー見れば ? すれば ? 」というのは、これまでだれからもなかったアドバイスでした。しかし、依然として気がかりなことが1つ・・・。
A くん 「・・・でも、仕事が残ってるのに TV 見ちゃうと、その分仕事が遅れちゃうんじゃ・・・」
カウンセラー 「 A さんはデキる人なんですから、サッカー中継の 2 時間程度仕事が遅れたところで、挽回可能ですよ ! 」
A くん 「でも実際には、24 時間寝ずにやり続けても、終わらないんですよ・・・(T-T)」
カウンセラー 「ふーーん、そうなんですかぁ・・・ じゃ、サッカー中継が始まるまでは一生懸命仕事をして、その後好きなサッカーを見て、それが終わったら・・・」
A くん 「終わったら ? 」
カウンセラー 「いったん寝ましょうか」
Aくん 「えーーーーーっ ! ね、寝るって、先生 ! そんなことしたら、余計終わらなくなる・・・」
カウンセラー 「いったん寝て、朝少し早く起きてやりましょう」
A くん 「それで間に合わなかったら・・・?(T-T)」
カウンセラー 「間に合わなかったら、それはそれで仕方ない。でも、1 つだけ言っておきますが、仮にそれで間に合わなかったとしても、深刻な事態にはならないと思います。A さんも、そう思いませんか ? そして、A さんが所属する組織は、A さんが思うほど弱くはありません。A さんが担当する数時間の作業がなくなったとしても、何とかなります。大丈夫ですよ ! 」

大丈夫 ! 気にしない !

A くんの心が晴れたのは、カウンセラーの先生が発した、最後の言葉だったようです。「 A さんの仕事が間に合わなくても、深刻な事態にはならない」「 A さんの所属する組織なら、A さんの遅れを挽回できる」・・・ 言い方を変えれば、A くんを否定しているとも取れる内容なのですが、実は本質をついています。


テンパッた状態になるとき、多くの人は次のように考えてしまいがちです。「自分のせいで遅れたらどうしよう」「自分が足を引っ張ったらどうしよう」・・・ この緊張感をはね返すのが「プロ」といえばそれまでなのですが、そうもいかない。だれもがイチローのようにはいかないということです。


逆に、このような状態で、自分がいなくなったらどうなるか ? 実は、大して深刻な事態にはなりません。私も、「ここ一番」というときに何度か倒れて同僚や部下に迷惑をかけたことがありますが、結果的に、「大惨事」にはなりませんでした。チームで活動している以上、他のメンバーが何とかしてくれたのです。
もちろん、大事なときに倒れれば、後から陰口を叩かれるかもしれません。でも、そんなこといいじゃないですか ! と、吹っ切ってみる。これができるか、できないかが、大きな分かれ目のように思うのです。


私の見立てでは、A くんの場合、多少労働時間が少なくなったところで、アウトプットとしての仕事量や質は落ちない、むしろ短時間で集中した方が量も質も上がると思います。毎日、腫れ物にさわるように A くんと接している同僚も、その方がうれしいはず。「まぁ、いいじゃないですか。あなたは優秀なのだから、今より手を抜いても大丈夫 ! 仮に、あなたが抜けても、あなたのチームは大丈夫 ! 気にしない、気にしない ! 」と背中を押してやること、これこそブリーフ・セラピーの本質のように思うのです。


昨今、企業内での「締め付け」が一層厳しくなっています。それは、成果主義という形を取ったり、内部統制(コンプライアンス)という形を取ったり、と様々ですが、状況は日系・外資系問わず、似たようなものです。そんな中で、心を病んでいる・病みかけている・潜在的に病む可能性がある人の割合は、10 年前とは比較にならない数だと思います。


そんな世知辛い世の中で、「あなたは大丈夫 ! 気分転換に好きなことをやろう ! 気にしない、気にしない ! 」という発想は、日本企業が忘れかけていた「家族主義」や外資系企業の「チーム体制による推進」にも相通じるようなものがあるのではないでしょうか。仕事のために、人生を棒にふるようなことになってはいけない。大丈夫、大丈夫なんです !
みなさんも、部下や同僚に元気のない人がいたら、是非ブリーフ・セラピーを実践してみてください。きっと、職場が活性化すると思いますよ !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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