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タカシの外資系物語

宝くじが当たったら・・・ ? 日本人の「起業」感 ( その 2 )2009.10.13

本気で “起業” したいのか ?

前回の続き) 「宝くじで 3 億円当たったらどうする ? 」 という質問に対して、「まずは、住宅ローンを返す」「会社を辞めて、遊んで暮らす」 という回答が多い日本人。


一方、私が勤めるコンサルティング会社同僚のアメリカ人・中国人・インド人など外国人の多くは、「会社を辞めて、起業する」と回答しています。また、わが社の日本人スタッフを対象とした別のアンケートでは、「 10 年後の目標は、“起業”」という回答が最も多い・・・ ううむ、これは一体どういうことなのでしょうか ?


まず、10 年後の目標が “起業” であるにもかかわらず、いざ、それを実現できる手段( 3 億円)が手に入ったときに、手のひらを返したように主張が変わる理由について考えてみましょう。私は、このように言行が一致しない最大の理由は、「結局のところ、日本人は起業したいと口では言っていても、本気で起業しようとは考えていないから ! 」 ではないかと考えています。


では、「本気で企業しようと考える」とは、どういうことか? それは、常に起業内容を具体的にイメージしているかどうかということではないでしょうか。


私の同僚のうち、3 億円当たったら起業すると回答した外国人のほとんどは、自分が起業した場合の会社のイメージ、どんな商品・サービスを武器にして、どのようなマーケットに進出するか、企業後何年後に黒字化するか、資金が足りなくなった場合の資金調達手段をどうするか・・・ などといった、具体的な内容について話すことができました。
つまり、冗談や空想ではなく、彼ら(彼女ら)は、間違いなく、本気かつ真剣に、起業したいと考えているわけです。


一方、日本人の多くは、起業することを現実のものとして捉えていない。現実感がないので、具体性もない。具体性がないので、語れない。語れないものは、実現しない・・・ という循環に陥るわけです。よって、(たとえ、空想の世界だとしても) 3 億円を手にした場合に、“起業” という言葉がスムーズに口から出てこないのではないでしょうか。


以上のことは、日本人と外国人の職業観以前の問題だと思います。
当たり前のことですが、普段から考えていないことは、ほとんど実現しない。「たまたま宝くじを買ったら、運良く 3 億円当たった・・・」 ということは、可能性としてありえますが、「ある日目覚めたら、起業して、社長になっていた・・・」 ということは、起こりえません。もっと言えば、宝くじですら、実際に買わなければ当たりません。意志なきところに、実現はない、ということです。


外資系企業に勤めて初めてわかったことなのですが、日本人というのは実務を重視しますが、実は非常に観念的です。物事に対する具体性が、極めて薄い。一方、外国人(特にアメリカ人)は、非常に pragmatic (実利的)です。このことは、起業の成功確率にも影響しているように思います。

ファッションとしての “起業”

さて、冒頭のアンケート結果から、もう 1 つ、“起業” に関する日本人の考え方が見えてきます。それは、「ファッションとしての “起業”」です。


わかりやすく言うと、10 年後の目標を尋ねられたときに、とりあえず “起業” と回答しておけば、何となくカッコいいんじゃないか・・・、という発想です。「 10 年後の目標は、“課長になること”」 では、何となくカッコ悪い。夢のない、薄っぺらい人間なんじゃないか、と周囲に思われるのが嫌なわけです。


しかし本当に、“起業” がカッコ良くて、“課長になること” はイマイチなのか・・・ 私はそうは思いません。大企業であれ、中小企業であれ、サラリーマンとして企業の主戦力として活躍し、社会に貢献することは、素晴らしいことです。また管理職として、次代を担う若者を育成することにも、大いなる意味があるでしょう。


一方、“起業” には大きなリスクを伴います。ファッションとして語れるほど、甘くはありません。
実は、私の父は私が小学生の頃、会社を辞めて、ベンチャー(当時はそんな言葉はありませんでしたが・・・。父や母は、「商売を始める」と言っていました)を興しました。


結果は・・・ 大失敗 ! 
父は多額の借金を抱え、一家は離散目前まで追い込まれました(これについては、またの機会にお話します)。いずれにしても、失敗すれば、家族や投資家に多大な迷惑をかける可能性があるわけです。一握りの成功の陰には、その何十倍もの失敗が転がっています。決して、カッコいい世界ではありません。


また、現在の若者が、“課長になること” をカッコいいと思わないのは、実際の上司である課長がカッコ良くないから・・・ という説もあります。
これについては、(私を含めて)課長連中に責任がある。毎日、眉間にしわを寄せて疲れた顔をしていては、若手からカッコいいと思われるはずもありませんので・・・

ベンチャー経営者は、「うらやましい」 ?

最後に、日本人と外国人の考え方の違いを、少し異なる観点からお話しましょう。
“起業” に関して、日本人にあって、外国人にないもの。それは、起業して成功した人に対して抱く 「感情」 です。


ベンチャーの成功者を称えるのは、日本人も外国人も、ある程度は共通的です。しかし、そこに抱く感情が、かなり違う。日本人の多くは、大金を手にした成功者に対して、「うらやましい ! 」 と感じます。一方、外国人の場合は、「すごいね ! 俺も負けないぞ ! 」 となります。これは、アメリカ人に特に顕著です。


もちろん、アメリカ人だって、「うらやましい ! 」 と感じていないわけではないでしょう。しかし、結局は、「俺も負けないぞ ! 」 となる。ここには決定的な違いがあります。


「うらやましい ! 」で終わってしまうと、その感情の一部は、「“濡れ手で粟”で儲けやがって・・・ けしからん ! 」 といった、やや屈折した感情になりがちです。ライブドアの堀江氏などに対する国民感情は、その典型ではないでしょうか。もちろん、堀江氏は法を犯したわけですから、そういう意味では論外なのですが、法を遵守してまっとうにビジネスを行っているベンチャー経営者に対しても、日本人はなんとなく「胡散臭い」イメージを持ちがちです。これは、かなりの部分が、「うらやましい ! 」の裏返しとしての感情ではないかと思います。


アメリカ人の場合は、ベンチャーで成功した経営者を、純粋に称え、自分の目標にします。アメリカでは、リーマン・ショックを契機に、多額のボーナスをもらっている金融機関の幹部を糾弾する動きが出ていますが、ベンチャー経営者は別です。ベンチャー経営者は、自分でリスクをとって成功したわけで、その点で金融機関幹部とは違うという切り分けです。


一方、日本人の場合は、ベンチャー経営者も外資系金融機関の幹部も、ほとんど同じカテゴリーで見ているのではないでしょうか。両者とも、「“濡れ手で粟”で儲けやがって・・・ けしからん ! 」 で一括されるわけです。


ベンチャーがカッコいいとすれば、それは前述の通り、「自分でリスクをとって、そのリスクをマネージし、成功まで漕ぎ着けた」からに他なりません。
その本質がわからないままに、ファッションとしてしかベンチャーを捉えていない現状においては、日本にベンチャーが根付くまでに、まだまだ時間がかかるような気がしてならない・・・ そう考える、今日この頃です。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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