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タカシの外資系物語

政権交代 と 外資系2009.09.29

いまいち盛り上がらない 「政権交代」

先ごろの衆院選の結果、民主党が大勝利を得て、政権交代が実現しました。すでに鳩山新総理のもと、各大臣がマニフェスト実現に向けて、活発に動き始めています。
さて、今回の政権交代。歴史的にも非常に大きな変革であり、また国民生活に及ぼす影響もかなり大きいはずなのに、なぜか一般国民の反応は冷めているように思います。オバマ大統領が就任したときほどではないにしても、もうちょっと盛り上がってもいいんじゃないかな・・・ と個人的には感じています。


今回の民主党による政権交代が、(他の先進国ほど)盛り上がらない理由は、以下のような感じではないでしょうか。

(1) 民主党がいいというよりは、自民党がダメなだけなので、大騒ぎするほど民主党に期待していないから
(2) 自民党以外の政党が政権をとった経験がないので、民主党を選んだ国民も、実は不安だから
(3) 小泉政権時代に、自民党が「民主党化」してしまい、実は政策にそれほど差がないから
(4) そもそも、政治に関心がないから


私自身は、(2) に近い心象を持っています。ま、民主党の首脳も、元はといえば自民党首脳だった人が多いわけで、「未経験」というにはややオーバーかもしれません(例えば、小沢幹事長などは、政界の中でも、最も「古き良き自民党」らしい動きをする人のような気もします・・・)。
加えて、「しばらく様子を見ないと、いいのか悪いのか、わからん!」という意見もあるでしょう。アメリカなどは、大統領就任後の 100 日間を「ハネムーン期間」として、議会やメディアなどが激しい批判を避けたりします。もちろん、この「ハネムーン期間」を過ぎても、何の成果も出ていないようなら、100 日分まとめて「倍返し ! 」、では済まないレベルの強烈な批判が出るわけですが・・・

代替案=9%、実行=1% ?

私は、社会を揺るがすような「事件」が起こった場合、極力このコラムの題材として取り上げるようにしています。しかし、今回の民主党による政権交代は、すぐには取り上げませんでした。その理由は、上記の(2) - 「本当にできるの ? 」 と 「ハネムーン期間」としての猶予 - 「もうちょっと、様子を見てみないとわからないしね・・・」 の狭間で、気持ちが揺れ動いたからに他なりません。選挙に勝っただけでは、評価のしようがない・・・ というのが正直なところだったわけです。


もう少し具体的に考えてみましょう。今回の政権交代を、身近な例に置き換えてみます。例えば、会社で常にあなたの意見に反論する社員がいるとします。「あなたの意見に反論する」というのは、3つのレベルに分けて考えることができます。ここでは仮に、あなたが飲み会の幹事だとして、「今度の飲み会は、フランス料理しよう ! 」と提案したとします。


【反論パターン】
(A) 単に、文句を言う 「フランス料理は嫌だ、高い ! 」
(B) 文句だけでなく、代替案を出す 「フランス料理は堅苦しく、懇親がはかりにくいので、お座敷で鍋料理の方がいい ! 」
(C) 代替案だけでなく、それを実行することができる 「お座敷で鍋料理なら、いい店を知っている。私に任せてくれたら、フランス料理の3/4程度の費用でまとめてみせる!」・・・と言って、本当に3/4程度でまとめてしまう!


さて、上記の (A)-(C) は、一見すると連続した流れを持っているように見えますが、実は(A)から(B)、また(B)から(C)への移行は、かなりのハードルが存在します。というか、ほとんどの人は、文句を言うだけでしょう。


私は、反論する社員の99% は (A)、9% は (B)、残りわずか1% が (C) だと考えています。それほど、代替案を出しながら反論することは難しいし、その代替案を実行することは難しいということです。

「それほど言うなら、自分でやってみろ!」

外資系企業において、何かに異議を唱える場合、少なくとも (B) 「文句だけでなく、代替案を出す」 ができないようでは相手にされません。逆にいうと、「代替案がないなら、反論してはいけない ! 」 といった空気があります。だれかの意見に対して発言する場合には、まず「支持(賛成:affirmative/supportive)」 か 「不支持(反対: rejective/negative)」 を明確にした上で、「不支持(反対)」の場合は代替案も提示しなければ、発言そのものを受け付けてくれてくれません。それどころか、代替案なく反論した場合には、議事の進行を妨げているとして、マイナスの評価を受けることが多いように思います。


一方、日系企業では、(A) 「単に、文句を言う」という戦法も、依然として通用します。みなさんも、代替案のない反論に押されて、自分の意見が抹殺された経験をお持ちではないでしょうかねぇ・・・ では、どうして、日系企業において、「単に、文句を言う」という戦法が、これほど重視されるのか ? 
それは、変わること(変革)そのものが「悪」、というか、「デメリットを持っている」 という先入観があるからだと思います。「これまでも、とびきり良いとは言えなかったが、とびきり悪いわけでもない。下手に変わって、より悪くなるぐらいなら、今のままでいいではないか・・・」という考え。何とも保守的というか、元気がないというか・・・ しかし、この考えあればこそ、日本のような小国が、大きな侵略を受けずに生きながらえてきた理由でもあるわけで、一概に悪いとも言えないように思います。


また、外資系企業では、(B) 「文句だけでなく、代替案を出し」、その案が画期的な場合には、その人に実行まで任せてしまうということも、頻繁に起きます。例えば、あるトラブル・プロジェクトのPMであるAに対して、進め方の代替案をコメントしていたマネージャーB。翌週から、そのプロジェクトのPMが、AからBに変わった・・・ という具合。この場合、Bが見事にプロジェクトを立て直した場合には、Bは格別に評価されます。実際に、私の周りにも、トラブル・プロジェクトの肩代わりを通じて、役員にまで出世した人が複数います。逆に考えると、トラブル・プロジェクトは出世を狙う人にとっては宝の山だったりします(これを踏み台に、出世を狙う)ので、時々、普段は見たこともないような人がコメントをくれたりして、困ることも多いのですが・・・


いずれにしても、多くの外資には、「それほど言うなら、自分でやってみろ!」という考えが根底にある。その代わり、「やることができたら、高く評価してやろう!」という思想も背後にあります。まさに、ハイリスク・ハイリターン。これこそ、外資的、つまり二大政党的な発想ではないでしょうか(もちろん日系企業にも、サントリーの「やってみなはれ!」等、似たような文化を持つ企業はいくつかあります。が、多くはそうではないでしょう・・・)。


さて、民主党は、これまでのように代替案を出しただけなのか、それとも実行までできるのか・・・ ま、戦後60年以上たまった「垢」は、そう簡単には落ちません。少なくとも、ハネムーン期間である100日は、様子を見ることにしましょうか。
政権交代の成果については、年明けあたりに、再度取り上げたいと思います。 では!

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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