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タカシの外資系物語

God is in the details ! ( その 3 )2009.09.15

「全体感」 重視の若手

前回の続き) 最近の若手が、細部をおろそかにするのは、なぜなのか ? 今週のコラムでは、その理由を、「全体感」というキーワードをもとに、考えてみたいと思います。


さて、このテーマでは、前回・前々回に続き、 3 週目となります。実は私、同じコラムは 3 週以上引っ張らないように心がけています。なぜなら、読む側もみなさんも飽きるでしょうし、何よりも、書いている私本人が飽きてくるからです。


しかし、このテーマはその「ルール」をあっさりと破ってしまいました。なぜか ? 私がオチを考えずに、ダラダラ書いてしまったからなのか ?! (その線が濃厚という、もっぱらの噂ですが・・・) 実は、読者のみなさんからの反応が、半端じゃないほど大きかったからです。


普段、読者のみなさんからのお便りやご意見は、週に 1 通来るか来ないか・・・なのですが、今回に限っては、毎週複数の反応をいただきました。要は、みなさん同じことで悩んでらっしゃるということ。若手が育たない、言うことを聞かない、何を考えているかわからない・・・ という共通の悩みです。


ま、状況や立場によって、いろいろなケースがあるでしょうから、一概に「最近の若手は○○だ ! 」とは言い切れない面もあります。何度もお話しているように、私自身も「最近の若手は・・・」という言葉は、あまり好きではありません。
しかし ! 私の経験やコンサルティングでお邪魔している企業の状況や、そして読者のみなさんからのご意見をまとめると、 1 つ特徴的な事象が浮かんできます。それは、「全体感」重視ということ。例えば、こんな感じ。


「タカシさん、まだ細かいところは詰まってないんですが、全体の流れだけ作ってみたんで、見てもらえます ? 」
「まだまだ、ザックリしてますけど、最終的にはまとめますから・・・」
作業の優先順位として、細部よりも先に全体から作っていく、これ自体は悪くはありません。何となく、効率的に作業しており、スマートな感じもする。しかし ! このやり方には、ある前提とそこに潜む「罠」があることを忘れてはいけません。それは、何でしょうか ?

「全体感」 だけを作れる人はいない!

「細部よりも先に、全体から作っていく」という場合、「細部は後でどうにでもなる、時間さえあればできる」ということが、ある程度前提となります。想定される作業者像としては、「細部作業の経験が豊富な、中堅社員以上」ということになります。つまり、以下のような役割分担を前提としています。


・ 全体統括 = 管理職
・ 全体感作成、作業進捗管理 = 中堅層
・ 細部作業 = 若手


このとき、若手に最も期待されているのは「細部作業」を完璧に仕上げてくれることであって、「全体感」うんぬんは中堅がやればよい。にもかかわらず、若手が全体感を重視しすぎるため、細部がおろそかになっているように思うのです。


ここで誤解いただきたくないのは、「若手は組織の歯車として、黙って仕事をしていればいい。全体感はベテランに任せて、それについて来ればいいんだ ! 」と言っているわけではありません。より良い意見があれば、若手だって積極的に発言していいに決まっています。しかし、その場合でも、少なくとも自分の作業は完璧にこなしてから(または、こなす算段を得てから)、発言すべきでしょう。自分が期待されている作業そっちのけで、全体感がどうだ、こうだ、と言われても、中堅層にしてみれば、ムカッとくるだけです(たとえ、その意見が正しかったとしても・・・)。


また、私の経験則で言えば、細部の作業ができない人が描く全体感は、イマイチなことが多い。よく、「私は細かい作業は苦手だが、全体感を描くのはうまい。どちらかというと、“アイデアマン”タイプかな・・・」なんて言う人がいますが、それはちょっとおかしい。全体感が描ける人は細部作業も完璧です。逆に、細部が詰められない人は、全体感も作れない場合が多い。これは間違いない ! なぜなら、結局のところ、「全体」 は 「細部」 の積み重ねでできているからです。にもかかわらず、若手が全体感を重視する理由は、なぜか ? それはひとえに、その方がかっこいいから、(周囲から見ていて)仕事をしている感じがするからに他なりません。そして、その風潮を助長したのは、いわゆる欧米外資系企業をモデルとした仕事術や MBA などの考え方ではないかと思うのです。

「全体感」 重視は、MBAの影響 ?

一般に、 MBA をベースとした欧米流経営の特徴は、「トレンドの概略を分析・整理して、全体的な方向性を決める」「細部積み上げ(ボトムアップ)よりも、トップダウンで進める」 です。しかし、注意しなければならないのは、 MBA というのは主に経営者やリーダーを対象としたものであって、一般社員全てに当てはまるものではないということです。もちろん、一般社員の通常業務にも応用は利くでしょうが、それはあくまでも限定的ではないでしょうか。若手を含めた社員全員が、「細部よりも全体感を ! 」と言い出したのでは、仕事は回りません。


私が勤める外資系企業でも、私の上司以上のマネジメント層は、細かい話はしません。あくまでも、全体感をトップダウンで決めていきます。しかし彼ら (彼女ら) の下位レベルには、必ず、その意向を具現化し、細部を固める作業者が存在します。企業というのは、そのようにして成り立っているのです。


MBA や外資系仕事術のブームは、企業活動の中でも、極めて限定された部分のみを取り立てて、それこそが唯一の働き方、スマートな作業方法かのように、誤解させているように思います。実際には、外資系のマネジメント層 ( MBA ホルダーがほとんど) だって、若いときには、細部の作業を経験し、それなりの実績を上げて、ステップアップを遂げています。日本企業よりも格段に昇進スピードが速いので勘違いするのですが、みんな小さな作業からコツコツと始めているのです。


私から若手のみなさんに送るアドバイスは、やはり、 「God is in the details !」 (神は細部に宿る) ということ。細部をきっちりと仕上げていけば、全体感も自然についてきます。また、 MBA や仕事術に惑わされないようにすることも重要です。人材マーケットで売れる人というのは、アイデアをポンポン出すことができる人ではなく、やると決めたアイデアを確実に実践できる人です。「実践」 とは、細かい作業の積み重ねであることを忘れてはいけません。


「タカシさん! ちょっと、見てもらえますか ? 」


資料の修正を指示していた若手スタッフから、連絡が入りました。


若手 「今日はもう遅いんで・・・ ちょっと、全体感だけ見てもらえますか ? 」
私 「うーーん・・・ 遅くなってもいいから、細部まで詰めてから呼んでよ。」
若手 「え? ・・・ は、はいっ ! 」


あーーぁ、もうすぐ終電の時間、今日は徹夜になりそうです、トホホ・・・(T-T)。ま、我慢強く、忍耐強く・・・ 若手の育成も大変ですな。でも私は、彼ら、彼女らを信じてやっていこうと思っています。みなさん (若手も中堅もベテランも) 、頑張ってくださいね !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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