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タカシの外資系物語

Derail ? , or Not ? ( その 2 )2009.08.25

超・エリートの同期 Y は、絶対辞めない ?

前回の続き) 私が所属する外資系企業では、「やめるかもしれない社員」がリストアップされている 『Derailment List』 が存在します。一方、私の前職の日系企業(銀行)には、「絶対辞めない社員」を対象とした 『絶対辞めないリスト』 が存在するらしい・・・との情報を、前職時代の同期から聞いたタカシ。『絶対辞めないリスト』 とは、どのようなものなのでしょうか ?


同期X 「 Y は絶対辞めないんだよ ! 」
私 「絶対、って・・・ なんでそんなこと言い切れるんだよ ? 」
同期X 「 Y は、入社時から 『絶対辞めないリスト』 に入ってるんだよ。そんなことも知らないのか、能天気なやつだなぁ・・・」


そもそも、Y とはいかなる人物なのか ? Y と私は同期入社( 1991 年)です。私は銀行が破綻してすぐ、スタコラサッサと転職してしまったのですが、Yは今でも銀行に残っています。現在の所属は、経営企画部、ま、会社の中枢ですね。
Yは銀行に入社後、大阪支店 → 人事部 → 財務企画部 → 営業企画部 → 経営企画部 ・・・ と、いわゆる花形部署を渡り歩いています。だれがどう見てもエース、このまま行けば、役員間違いなしってとこでしょうか・・・ ?


Y は京大卒でして、その中でも明らかに頭 1 つ飛びぬけていました。以前にもお話しましたが、旧態依然とした日系企業(特に、銀行とか)では、東大卒や京大卒は他の大学卒と比較して、あからさまに「別扱い(つまり、ひいき)」を受けます(そのあたりについては『学歴の話』 を参照のこと)。Y のキャリアを見ても明らかに、将来、銀行の中枢を担うことを約束された足跡をたどっています。


私 「『絶対辞めないリスト』って、そんな無茶な・・・ ホントか、Y ?」
同期 Y 「・・・」
おいおい、否定せんのかーーーーーーーーーーーーーーっ !  ということは、やっぱり・・・ ? 

絶対辞めない超・エリートが、MBAを取得しない理由

同期X 「仮に、200 名の新入社員がいたとするよな・・・」
事情通( ? )の同期 X によると、 1991 年当時の銀行人事の仕組みは、以下のようになっていたとのこと。


( 1 ) 200 名の新入行員のうち、5-10 名程度を 「将来の幹部候補生」 として認定。つまり、この 5-10 名が『絶対辞めないリスト』 にリストアップされる。リストアップされたことについては、本人に通知され、同期の規範・リーダーとして振舞うよう、半ば強制される。その見返りとして、出世は同期で必ずトップ(成果に関わらず ! )、経営の中枢部署のほか、本人の希望部署(海外等)に優先的に配属される。ただし、MBAなどの海外留学をするケースは少ない。


( 2 ) 残り 195 名は、「自由競争」で頑張ってもらう(つまり、優先配属などしない。あくまでも、運と実力の世界)。ただし、MBA などの海外留学をするのは、この層がほとんど。


同期Xの話は、「都市伝説」の域を出ないという説もありますが、一方で、それなりに信憑性もあるように思います。みなさんの同期にも、明らかに(1)の層として、ひいきされている社員がいるのではないでしょうか。


さて、Xの話の中で少し不思議に思ったのは、「MBAなど海外留学」のくだり。どうして、(1)の層はMBA留学をするケースが少ないのか ?


同期X 「だって、将来が約束されているんだから、留学なんかしなくてもいいじゃん ! (1)の層っていうのは、MBAホルダーを部下として使う側にいる連中なんだぜ ! あと、会社内部でMBAと同等の教育機会というか、帝王学みたいなものを受けさせてもらってるから、留学する必要がないっていう説もあるしね・・・」


なんと ! (1)の層というのは、MBAホルダーを自分の手足として使う役割なのだから、自らMBAは取りに行かない(取る必要がない)という、画期的な説 ! ほんとか、おい !?


同期X 「だから、伝統的な日本企業って、MBAホルダーの社長が少ないだろ ?」
にゃるほどぉ・・・ でも、そもそもMBAって、出世の手段として取得するんでしたっけ・・・?

あなたは、会社から注目されていますか ?

同期Xの説、その真偽は別として、日系企業が(1)のような層を囲い込んでいたことについては、なんとなく、そうじゃないかなって気もしてきます。そしてこのことは、外資との対比でさらに特徴的になってきます。


● 日系企業 ・・・ 入社時点で、特定の人材を囲う = 『絶対辞めないリスト』
● 外資系企業 ・・・ その時点で、優秀 かつ 辞めそうな人材をケアする = 『Derailment List』


逆にいうと、日系企業には 『Derailment List』 はなく、外資系企業には 『絶対辞めないリスト』 はない、ということ(もちろん、非公式には存在するんでしょうが、人事部門がそのリストを元に、何かアクションを打つということは少ないと考えられる)。非常に対照的ではありませんか!


現在の常識的な感覚では、『Derailment List』 を活用して、辞めそうな人材をケアしている外資の方が、まっとうな考えのように思えます。出身大学だけで将来の幹部候補生を決めてしまう日系にやり方は、かなり前近代的。しかし、「会社は絶対潰れない」 「右肩上がりで成長を続ける市場」 「いったん入社した会社は、よほどのことがない限り、辞めない」 という前提に立てば、『絶対辞めないリスト』 のような策もアリかな・・・、とも思えます。思えば、戦前の旧陸軍なども、特定の学校(陸軍幼年学校や陸大)を卒業した人材を、幹部候補生にして、優先的に育成してきたわけで、このような政策は日本の伝統なのかもしれません。


しかし、「会社は絶対潰れない」 という大前提中の大前提が崩壊した今となっては、『絶対辞めないリスト』 による囲い込みも、かなり形骸化していることは否めません。現に、同期Yは依然として銀行に残っていますが、同様にリストアップされていたと思しき同期Z(東大卒)は、数年前に転職したようです。『絶対辞めないリスト』 の効力も、ほとんどなくなったということでしょう。


要は、企業でも、マーケットでも、出世でも、「絶対」 はない ! ということ。そんな不確実性の時代の中で、いかに自分のスキルを向上し、会社が欲しい人材となりえるか・・・、それに尽きるわけです。外資の 『Derailment List』 だって、結局のところ、優秀な人材が辞めるのを水際で止めるために存在するわけで、その目的は、『絶対辞めないリスト』 と同じです。会社がどんなリストを作ろうが、まずは、会社にとってかけがえのない人材にならなければ、話にならんというわけです。


あなたは会社から注目されていますか、それとも・・・

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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