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タカシの外資系物語

自己責任と日本人-パスポート・センターにて ( その 1 )2009.07.07

パスポートの更新

1ヶ月ほど前のこと、わが社のHR(Human Resources:人事部)から、以下のようなタイトルのメールが届きました。

【 CAUTION ! : Your Passport is Expiring ・・・ 】

「ありゃ、パスポートの期限切れ! 忘れてた・・・」

私の会社では、社員のパスポート情報を人事部が管理しています。人事部が管理する最大の目的は、緊急の出張が入ったときに、航空券のチケット手配をスムーズに行うこと。また、地域によっては、パスポートの残存期間が短いと入国を認めてくれない国もあるようで、残存期間が6ヶ月を切ると自動メールで連絡してくれる仕組みになっています。
ということで、先日、時間が空いたので、近所のパスポート更新センターに行ってきました。今回のコラムでは、そのときに起こった “出来事” についてお話したいと思います。


「お、結構混んでる。この不景気なのに、みんな海外旅行に行くんだなぁ・・・」
受付開始直後の9時に行ったにもかかわらず、既にかなりの人が並んでいるではありませんか!
「ま、更新だからすぐ終わるだろ・・・」
私は30分ぐらいで終わるだろうと、整理券を取って、待合室で待っていました。
「どれどれ、忘れ物はないかな・・・」
通常、パスポートの更新に必要なものは、以下の通りです。

・ 現パスポート
・ 戸籍謄本 または 抄本 (現パスポートから本籍地を変更した場合。私は結婚を機に、本籍を京都から神奈川に移していたので必要)
・ 更新費 (10年パスポートの場合、14,000円)
・ 写真

・・・今さらながら言うのも変ですが、まぁ何と人相が悪いんでしょうか。もともとの「土台」が悪いので文句も言えないのですが、インスタント証明写真で撮った顔のさらに恐いこと、恐いこと・・・
「ま、いいや。まさか、人相で落とされるわけじゃあるまいし・・・」
しかし10分後、その「まさか」が現実のものになろうとは、そのときは知る由もなかったのです。

 

この写真では、難しいかな、と・・・

「36番の方、どうぞーっ!」
「(お、俺の番だ!) はいはい、いまーす」
担当者 「奈良タカシさんですね・・・ 更新は、10年でいいですか?」
私 「あ、はい (なかなか、感じのいい人だ、良かった、良かった・・・)」
最近は、役所も「顧客サービス」を意識しているようで、一昔前のような仏頂面の応対は少なくなっているようです。


担当者 「写真はお持ちになってますか?」
私 「はい、これです」
私は、人相の悪いその写真を、担当者に手渡しました。と、その瞬間、担当者の顔色があからさまに険しくなったのです。


担当者 「こ、これしかないんですか?」
私 「え、ええ・・・ ダメですか・・・」
担当者 「ダメというか、なんというか・・・ これではちょっと難しいかな、と・・・」
む、難しい? パスポートに載せられないほど、私の人相は悪いのか?! 私は思い切って、担当者に確認してみました。


私 「に、人相の問題ですか?」
担当者 「んな、バカな。人相はどうでもいいんですよ」
どーーーでも、ええんかい?! 心配して、損したわーーーーーーーーーーーっ!

 

担当者 「メガネのところが反射して、瞳に白い光が入ってるんですよ。最近は、虹彩で個人を識別している国も多いもんですから、できれば別の写真がいいかな、と・・・」
なーーんだ、そういうことか! それならそうと、早く言ってくれればいいのに・・・


担当者 「どうされます?」

自己責任の世界なので・・・

私 「『どうされます?』 って、どういうことですか?」
担当者 「いや、奈良さんが 『これでいい!』 とおっしゃるなら、この写真で申請することも可能です。原則として、自己責任の世界なので・・・」
私 「じゃ、これでいいです」
担当者 「では、申請書の備考欄に 【写真不備説明済】 と書いて、横に署名・捺印をいただけますか?」
私 「え???」
担当者 「あのですねぇ、私はこの写真だと、国によっては引っかかるかもしれない・・・と、ご説明しましたよね? 奈良さんは、その説明をお聞きになった。にもかかわらず、この写真で申請されるわけですから、そのやり取りを残しておかないと・・・」
私 「なんじゃそりゃ・・・」
担当者はおもむろに、私のパスポート申請書の備考欄に、【写真不備説明済】 と書き込みました。


私 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 申請書にその書き込みがあると、後々、どういうことが起こる可能性があるんですか? 例えば、その写真が原因で入国を拒否された場合、その対応も自己責任になるということ?」
担当者 「ま、極端に言うと、そういうことです」
ブチッ(私の堪忍袋が切れた音)


私 「あのなぁ・・・ パスポートというのは、日本国がその個人を証明している書類、IDなんだぞ! 奈良タカシ identified by Japan だ、わかるか? それを、写真の写りが悪いからって、日本国として証明できかねます・・・って、言われた日にゃ、一体どうすりゃいいんだよ?」
担当者 「そう言われましても・・・」
私 「だから、写真がダメならダメで、『これでは受付られません!撮りなおしてください!』って、言えばいいじゃねぇか! 自己責任とか言い出すから、ややこしくなるんだ!」
担当者 「ちょ、ちょっとお待ちになってください・・・」


私が窓口で暴れ出したもんですから、その担当者は、奥の方から責任者らしき人物を連れてきました。
責任者 「どうされました?」
私 「おりゃー、どりゃー、○#$※★Σ?℃@&%ーーー!」
責任者 「お客様、この運用は国土交通省からの通達に基づいて実施しておりますので、ご意見等ございましたら、国土交通省にお話いただけませんでしょうか?」
私 「んがっ!(T-T) (空いた口がふさがらない状態・・・)」


・・・というわけで、あまりに腹が立ったもので、今週の紙面の大半を、会話に使ってしまいました。すいません・・・ それにしても、日本人はどうしてこんな風になってしまったのか? 次回の解決編で考察してみたいと思います。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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