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タカシの外資系物語

ストレステストと外資系2009.06.16

ストレステストって、何 ?

みなさんは、 「ストレステスト」 という言葉をご存知ですか ?  「ストレス・・・ テストぉ ? 最近ただでさえ “ストレス” が溜まってんのに、それを “テスト” しようってんだから、ろくな話じゃなさそうだな !? 」 お察しの通り、面白い話ではありやせん・・・


製品開発を思い浮かべていただくと、わかりやすいと思います。メーカーが新製品を世に出すにあたっては、 「強度は大丈夫か ? 」 「高温には耐えられるか ? 」 といった、耐久テストを実施します。大抵の場合は、日常ではありえないような条件 ( 10 メートルの高さから落とす、象がのる、 60 ℃の高温に一定時間さらしてみる、等)を加えて、その条件をクリアしたら OK 。晴れて、店頭に並ぶというわけです。この 「日常ではありえないような条件」 のことを 「ストレス」 と言っています。


IT のソフトウェア開発などでも、データ量の観点等で、ストレステストを実施することがあります。想定されるデータ量の最大値をさらに 2 倍にした値程度で処理してみて、時間内に処理が終わるかどうか・・・ なんていうテストです。


さて、昨今の金融危機以来、新聞やマスコミで、よく 「ストレステスト」 という言葉を目にします。ここで言っている 「ストレス」 の対象は、何を隠そう 「銀行などの金融機関」 を指しています。リーマンショックに前後して、特にアメリカでは多くの金融機関が破綻してしまったわけですが、 「公的資金も入れたんだから、もうこれ以上潰れんだろうな・・・ ? 」 という証拠を示すために、アメリカ政府 (および当局) が大手金融機関に対してストレステスト (資産査定) を実施しました。


もちろん、金融機関に象をのせたり、高温にさらしたりしても意味はありません。金融機関に与えるストレスというのは、 「経済環境のさらなる悪化=悪い経済数値」 です。今回アメリカ政府が実施したのは、具体的には、 2010 年に実質経済成長率が0.5%、失業率が 10.3% に上昇し、住宅価格が7% 下落するというシナリオを設定して、損失がどの程度拡大するかというものでした。さて、結果はどうだったのか ?


テスト対象となった金融機関の損失を積み上げた結果、 2010 年末までの潜在的な損失は、6,000 億ドル (約60兆円) 弱。バーナンキ FRB 議長は、「投資家と一般市民にかなりの安心感を与える結果」だと、胸を張っていたとのこと (6/3付 日本経済新聞・朝刊より)。
うーーむ、どうなんでしょうね・・・ 桁が大きすぎて、いいのか悪いのか、全然わからんわーーーーーーーーーっ! というのが正直なところではないでしょうか。

常にストレステストを行う外資系

さて、このストレステスト。実は、企業の経営企画部門などでは、これまでもずっと行われてきました。例えば、外需に依存している日本の製造業などにおいては、為替が少しでも円高になるだけで、収益が億単位で変わってきます。自分の会社が、円高というストレスにどこまで耐えられるか・・・ これは典型的なストレステストです。


外資系企業の管理職 (マネージャー以上) の場合、自分の管理テリトリーにおいて、徹底した「ストレステスト」 の実施が求められます。 「ライバル他社が価格を下げてきたら・・・」 「営業員が引き抜きにあったら・・・」 常に 「最悪のシナリオ」 を描いて業務を行っていないとなりません。


「いい知らせは言わなくてもいい。最悪のケースを想定して、現状のわが社がそのケースをしのげるかどうか ? ダメなら、何が原因で、どんな対処が必要か ? それを教えてくれ ! 」 
経営層の視点はそこにありますから、それに対する回答を頻繁に要求されるわけです。常に心の準備をしておくことは非常に重要なんですが、毎日、最悪のシナリオばかり想定して仕事をするのも、何といいますか、空しいもんでして、はい・・・

ストレステストに潜む致命的な「欠陥」

そんなわけで、ある意味において、 「ストレステスト」 慣れ ( ? ) した私なのですが、実は、このテストに潜む 「ある致命的な欠陥」 にも気付いています。
1 つは、 「結果ありきで変数を決められてしまう = 施策の根拠に使われてしまう」 ということです。米当局が実施したストレステストも、このたぐいではないかというジャーナリストは多い。「損失 6,000 億ドル以内」 という目標数値が先にあって、その数値に落ち着くように、失業率などの変数が恣意的に決められているとしたら、どうでしょう ? 「 100 年に 1 度」 と言っているわりには、ストレスの設定が何となく甘いように思うのは、私だけでしょうか。


私が前職の外資系企業で経験したのは、 「社員を 10% 削減するように、シナリオを設定する ! 」 というものでした。要は、社員10% 削減ありきで、ストレスを恣意的に作り、リストラの根拠にする、ということ。そもそも、最悪シナリオであるストレス自体に、さしたる根拠はないわけでして、つまりは経営層などのえらいさんがストレステストの結果をリストラの大義名分に使っているわけです。


もう 1 つは、 「数値的な分析でしかない = 会社が潰れるときというのは、数値以外の要因も大きく影響するのに、それを加味していない」  ということです。例えば、私が勤務していた銀行は 90 年代後半に破綻したわけですが、その際の 「潰れ方」 というのは、 「じわじわーっとした感じ」 でした。


「じわじわーっと・・・」 ではわからんと思いますので、少し説明しましょう。ある日、 「あの銀行は、公表されていない不良債権を山のように抱えているらしい・・・」 といった、噂が出ます。それを契機に、株が売られる。株が売られると、資金調達ができなくなり、高利で資金を借り入れることになる。そうすると、 「やっぱり、あの銀行は危ない・・・」 といった噂が出る。また、株が売られる・・・ といった感じ。例えるなら、来る日も来る日も校舎裏に呼び出されて、一発殴られた挙句、金を巻き上げられているようなイメージでしょうか。企業倒産というのはこういうもんでして、メガトンパンチ一撃で即撃沈 ! なんてのは、ほとんどないように思います。


一方、ストレステストは定量的な分析でしかなく、じわじわ感がない。そういう意味では、やっぱり 「甘い」 のだと思います。いずれにしても、ストレステストは万能ではないわけですから、あくまでも 「参考」 程度に見ておいた方がいいわけです。


「今年も昇進がストップで、ということは、給料上がらず、ボーナスなんて、かなり下がるんだろうなぁ・・・(T-T)」


最近、我が家のストレステストに余念がない私。とほほ・・・ こちらもボディーブローのように効いてきます。ただでさえ、ストレスの多い毎日。みなさんも、「ストレステスト」でストレスを溜めることのないよう、ご注意ください !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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