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タカシの外資系物語

ボスが Tracking する理由 ( その 2 )2009.02.24

頻度は、日次 ? 週次 ?

前回の続き) 外資では、上司が部下の目標達成度合を監視することを、「Tracking (トラッキング) 」といいます。前回のコラムでは、日系と外資における、見込案件を失注したときの反応の違いを説明しました。今回は、トラッキングの「頻度」について見てみましょう。


みなさんの会社では、どれぐらいの頻度で「トラッキング (=つまり、営業上の進捗会議) 」行っていますか ? 日次(=毎日) ? 週次(=週 1 回)? 月次(=月 1 回) ?  もちろん、対象とする組織の大きさにも依存すると思います。 100 名規模の組織で、トラッキングを毎日やられた日にゃ、営業活動をしている時間がありません。チーム単位は日次、課単位は週次、事業部単位は月次ぐらいのイメージでしょうか。


ちょっと話は脱線しますが、この「○次」という言葉。恥ずかしながら、私はシステム部門に配属されるまで、この言葉を知りませんでした。例えば、「月次バッチ (処理) 」という場合、「月 1 回 (月末とか月初が多い) 実行されるオフラインのシステム処理」 を意味します (「バッチ」については、No.205 『略すな ! 』 参照のこと)。


さて、意味の次は「読み方」です。日次・週次・月次は、順番に「にちじ」「しゅうじ」「げつじ」と読むのですが、専門用語のため、なかなか読み方が覚えられない。これに関して、私は新人時代に赤っ恥をかいたことがあります。
その日、私は上司の課長と一緒に、リニューアルされるシステムの機能を、担当の役員に説明することになっていました。


課長 「奈良くん(=私のことですな)、役員のA部長は非常に厳しい人だから、くれぐれも・・・ よろしく頼むね ! 」
私 「はいはい・・・ (そんなに気になるなら、自分で説明すればいいのに・・・)」
課長 「どうも、A部長 !  本日はお忙しいところ、お時間頂戴しまして・・・ 説明は、部下の奈良タカシから差し上げますので・・・」
A部長 「うむ・・・」
・・・で、一通りの説明が順調に進んだところで、出てきましたよ ! 「月次」の文字。 「なんて読むんだっけなぁ・・・ ? 」
課長 「(・・・ん ?  どうしたの、奈良くん。早く説明を続けて ! )」
・・・ん~、ま、いっか ! ・・・
私 「・・・このタイミングで、“ つきじ ”バッチの処理を実行し・・・」
課長 「マグロかーーーーーーーーーーーーーーーーーっ ! 」
このときの課長のツッコミの早かったこと、早かったこと・・・ 正統派漫才よろしく、後頭部を思いっきり引っぱたかれました。確かに、つきじ (築地) はないよなぁ・・・ (あぁ、恥ずかしい・・・) 。

金曜20時、月曜8時 のトラッキング

話を戻しましょう。トラッキングの「頻度」の話でした。みなさんの部署や会社でも、それなりの頻度でトラッキングが実施されていると思います。ちなみに、私の部署では「週次」、毎週火曜の朝一番に実施されています。
なので、火曜の早朝はもう大変 ! 私は、自部門のクライアントの 1/3 程度を管理し、報告する立場にあるのですが、各メンバーから私への報告が、前日の深夜だったりするもんで、火曜はいつも 6 時ごろ出社して、資料や計数をまとめています (実は、このコラムの締め切りも火曜の朝 9 時だったりするので、二重で大変なんですよね・・・ もっと早く書けよ ! という話もあるのですが、なかなか、そうもいかなくて。いつも締め切りギリギリになってしまいます・・・)。


また、通常時は「火曜の午前中のみなのですが、期末や数字が芳しくないと、だんだん頻度が増してきたりもします。週に複数回は当たり前、昨年末などは、トラッキングのための会議が毎日実施されたこともありました。
ま、ここまではいいんです。みなさんにも、この程度の経験はあるでしょう。しかし、これはどうでしょう ? 「金曜の 20 時に実施して、翌週月曜の 8 時にまた実施 ! 」


同僚A 「おいおい、えらいことになったな・・・ 休日も働けっていう意味だろうな」
同僚B 「いわゆる、夜討ち朝駆け (※) をしろって、言ってんだよ ! 」
(※夜討ち朝駆け=夜に攻め、また朝にも攻めるという意味。晩にお客様を訪問し、翌朝にもまた同じお客様を訪ねて営業する、という感じ・・・)
同僚C 「ホントに・・・ 週末ぐらい休ませろよな、トホホ・・・」


当初、ボスの Thomas から、「金曜 20 時、月曜 8 時」にトラッキングを実施する指示が出たとき、私はThomasの意図が理解できませんでした。間に営業日が全く存在しないわけですから、状況が動くはずもないのです。
「Thomasにしては、なんかこう、軍隊式というか、精神論というか・・・ 解せないねぇ・・・ ? 」

What is something to change ?

予想通り、「金曜 20 時、月曜 8 時」のトラッキングは、両者にほとんど差異のない報告がなされています。そのたびに、Thomasは非常に不機嫌な顔をして、メンバーを見渡していました。私は思い切って、会議が終わった後、 Thomas を捕まえて、彼の意図を確認することにしました。


私 「Thomas、トラッキングの件なんだけど・・・」
Thomas 「なんだ ?  文句でもあんのか ?!」
私 「(や、やべぇ。機嫌、超悪いし・・・) いや、ね・・・ 金曜 20 時、月曜 8 時だと、状況は何も変わってないと思うんだけど。クライアントも休日だし・・・」
Thomas 「そりゃ、そうだな。クライアントは休みだから、クライアントは変わらんだろうさ。でも、本当に “何も” 変わらんか ? 」
私 「ん ? 」
Thomas 「We have something to change, Takashi ? (変われる “何か” があるだろ、タカシ ? )」
にゃるほど、ねぇ・・・ Thomasは、金曜 20 時から月曜 8 時の間では、お客様の状況は何も変わらないことは百も承知。しかし、その間であっても、「自分たちの考え」 (=つまり、お客様へのアプローチ方法や提案のプラン変更など) を変えることならできるだろう、それを週末の間に考えて来い ! と言っているわけです。そんなThomasの意図を知らずに、金曜20時も、月曜8時も、まるで判で押したように同じような報告を繰り返していたスタッフを怒っていたわけですな。


このように、外資では単なるトラッキングにおいても、自分なりの考え、「味付け」のようなものを要求されます。「金曜 20 時、月曜 8 時」のように、お客様の状況が動きようもない一方で、こちらに考える時間だけはあるような場合には、ボスはわれわれの「考えの変化」を聞きたがっています。ボスのこういう要求に、スムーズに対応していくことも、外資で生きていくには重要なんですな。


Thomas 「じゃ、タカシ。お前だけ、 10 分後に再度トラッキングするか ? 」
10分って・・・ 状況動かんし、考えもまとまらんわーーーーーーーーっ ! ハァハァハァ・・・(T-T) みなさんも、頻発する「トラッキング」には、ご注意を !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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