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タカシの外資系物語

Time is “more than” money! ( その 2 )2009.02.10

何があっても、遅れる者が悪い !

前回の続き) 電車の「時間調整による一時停車」が納得いかない Rick 。前回のコラムでは、多くのアメリカ人が、自分の時間が侵されることについて、日本人以上に神経を使っていることについて述べました。

 

「Time is money (時は金なり) 」 という格言があります。時間はお金と同様に重要である。だから大事にしなければならない。これはアメリカ人だけでなく、万国共通に言えることだと思います。しかしこの格言は、実はちょっとおかしい。なぜなら、お金をいくら積んでも、時間は買えないからです。いわば、「Time is “more than” money (時は金以上なり) 」。

 

Rickをはじめとするアメリカ人の多くは、純粋に、この格言に則って行動しています。だから無意味に (というか、自分に非がないところで) 、自分の時間が影響を受けることを極端に嫌います。例えば、会議の開始時間。当然のことながら、日系企業でも、会議の開始時間はそれなりに守られていることでしょう。しかし外資の厳格さは、日系の比ではありません。例えば、こんな感じ。


○ 外資では、開始時間になると、即座に会議が始まる。複数の出席予定者が遅れていても、決して待ったりしない。 
→ 以前、電車が遅延して、会議に遅れたことがあるのですが、いくら 「遅延証明書」 を見せて訴えても、「あ、そう。そんなタチの悪い電車を使うお前が悪い」と取り合ってもらえなかったことあり ! (T-T)

 

○ 会議によっては、開始時間を経過すると、会議室自体に入れないこともある。まるで、クラシックのコンサート並み。 
→ クラシックのコンサートでは、演奏の切れ目で入れたりしますが、外資の会議では永遠に入れなかったりします。これも以前、会社のエレベーターが混んでいて、会議に数分遅れたことがありました。会議室に入ろうとしたら、なんと「鍵」がかっている ! 仕方ないので、廊下で立ったまま聞き耳を立てて、中で話されていることをメモしたことがあります。わしゃ、先生に怒られた小学生か ! 怪しいし !  (T-T)(T-T)

 

○ 会議に遅れた人は、無断欠席者と同等の評価を受ける。また、多数決などを行った場合は、勝手に都合のいい方にカウントされたりする。 
→ これまた以前、お客様との面談が長引いて、会議に参加できなかったことがあります。その日の議題の 1 つに、「オフィス模様替えに伴う休日出勤者をだれにするか ? 」というのがあったのですが、満場一致で私に決まっていました。それだけなら、まだいい。議事録を見ると、なんと私自身が私に「投票」したことになっていた・・・(T-T)(T-T)(T-T)

日系と外資系における 「単位時間」 の違い

一方、日本人の場合は、いくら時間に厳格な人でも、ここまで厳しくはないと思います。なので、日系から外資系に転職した人の多くが、外資における時間の厳格さに戸惑うこともしばしば。私のチームでも、転職組の日本人が会議に遅れることを問題視したトップのアメリカ人が、業を煮やしたことがあります。


トップのアメリカ人 「 13:00 開始と言っているのに、なんだこの有様は !  タカシ、何とかしろ ! 」
私 「はいはい・・・ (俺はちゃんと来てるんだけど・・・(T-T))」

 

そこで私がとった作戦とは? それは、会議の開始時間を、10 分早めて連絡するということ。例えば、 13:00 スタートなら、日本人には「 12:50 開始」と伝えるわけです。ま、ここまですると、さすがに会議に遅れる人はなくなったのですが・・・

 

さて、そんな日本人だって 「Time is money」、いや 「Time is "more than" money」 と思っているはず。なのに、どうしてこのような差異が生じるのでしょうか ?
その理由は、日本人の多くは、仕事とプライベートの区別がなく、「 1 日 24 時間のうちの、たった 5 分じゃないか。 5 分ぐらい遅れても、睡眠時間を減らすとか、自分の時間を削ればいい。些細なことでギスギスするぐらいなら、少しぐらいの遅れはみんなで分かち合おうよ ! 」という発想をしていることに起因しているのではないかと思います。


一方、アメリカ人の多くは、 1 日 24 時間の切れ目を明確に意識して暮らしています。例えば、自分の時間 (睡眠含む) = 11 時間、家庭での団欒= 5 時間、ビジネス= 8 時間、といった感じ。つまり、ビジネスの 8 時間をいかに効率よくマネージするかが、彼らの重要事項となるわけです。同じ 5 分でも、分母が 24 時間の日本人と、 8 時間のアメリカ人では、その重要性が 3 倍違うわけで、いきおい厳格になるってのも理解できます。

 

もちろん、ダラダラと過ごしがちな日本のビジネスパーソンにとっては、純粋に、彼らに学ぶべき点も多いのですがね。

「ワークシェアリング」 は成り立つか ?

昨今の景気悪化に伴い、「ワークシェアリング」の導入が活発化しています。ワークシェアリングとは、仕事の「分かち合い」を意味します。例えば、 1 日 8 時間労働だったものを、 6 時間労働に変える (= 1 人当たりの労働時間を減らす) ことによって、レイオフされる人を救おうという発想です (詳細は、 No.71 『「ワークシェアリング」がやって来た !』 参照のこと)。ワークシェアリングはアメリカで生まれ、オランダなどヨーロッパで積極的に導入されており、雇用対策の切り札として期待されています。

 

しかし、ワークシェアリングというのは、雇用対策を目的としたものではありませんでした。そもそもの目的は、労働時間を削ってでもいいから、他の時間 (子育てや趣味) に振り向けたいという人同士が労働をシェアしようという発想でできています。つまり、自分の意思で、 「ビジネスの 8 時間」 を減らそうと考えることが前提となっています。


雇用対策のワークシェアリングは、そうではない。「ビジネスの8時間」を前提としている人に対して、無理やり時間を削れと言っているわけで、当初の発想からは、かなり逸脱した目的となっているのです。
同僚のアメリカ人 Rick は、雇用対策のワークシェアリングに対して、かなり懐疑的な意見を持っています。
「どうして、他人のために労働時間を削減されるのか ?  レイオフされるやつは運が悪い、レイオフされていない俺は、単に運がいいだけのこと。ま、努力もしてるけどね・・・ 俺だって、いつそうなるかわからんし。人に与えられた 『時間』 を侵しあうワークシェアリングなんて、共倒れを招くだけだ ! 」
ま、少し過激な意見ではありますが、何となくわからんでもない。みなさんは、どう思われますか ?

 

自分の意思であれ、雇用対策であれ、日本人にとってワークシェアリングは、馴染みやすい策のように思います。私も、これで景気が戻るなら、しばらく我慢してもいいかな・・・ なんて思ったりもして。しかし、日本人特有の、「時間のルーズさ」は改善の余地があるようにも思います。会議の時間を厳格に守ったりすることで、ワークシェアリングなんかしなくても、労働時間は減らすことができるはずですからね !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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