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タカシの外資系物語

外資の "後だしジャンケン" ( その 2 )2009.01.27

外資と日系 その手口の違い

前回の続き) 前回は、ボーナス査定の分布等で多用される、 「外資の後だしジャンケン」 についてお話しました。その 「手口」 を、もう一度確認しましょう。
【例】 仮に、ボーナス査定が 「A/B/C」 の評点で、評点毎にボーナス金額が決まり、各ランクの分布が次の通りだとする。

 

           【金額】       【分布】
・ ランク A    ボーナス 1.5 倍    全体の 20 %
・ ランク B    ボーナス 1.0 倍    全体の 60 %
・ ランク C    ボーナス 0.5 倍    全体の 20 %

 

外資が得意の「後だしジャンケン」をすると、以下のようになる。

 

(外資の「後だしジャンケン」調整)
           【金額】      【分布】
・ ランク A    ボーナス1.5倍    全体の 1 %
・ ランク B    ボーナス1.0倍    全体の 9 %
・ ランク C    ボーナス0.5倍    全体の 90 %

 

上記のような 「調整 (=後だし) 」 をした場合、調整前のボーナス総額を 「100」 とすると、調整後は 「55.5」 となります。このように、人件費を 「変動費化」 A することによって、業績悪化時等のコスト削減を実施したりするわけです。

 

当然のことながら日系企業においても、同様の 「調整(=後だし)」 は頻繁に起こります。しかし、外資と日系では、その 「手口」 がかなり違います。では、どのように違うのか ? 以下に、「日系の後だしジャンケン」 を見てみましょう。

 

(日系の「後だしジャンケン」調整)

 

           【金額】      【分布】
・ ランク A    ボーナス 1.1 倍    全体の 5 %
・ ランク B    ボーナス 0.8 倍    全体の 60 %
・ ランク C    ボーナス 0.4 倍    全体の 35 %

 

こんな感じでしょうか ?  さてみなさん、外資と日系の「後だしジャンケン」、一体どこが違うかわかりますか ?

みんなで分かち合う ?

まず、日系の手口を見てみましょう。日系の特徴は、【金額】 と 【分布】 の両方を下げているということです。これは何を意味するのでしょうか ? それはズバリ 「苦しみ (ボーナス金額の減少) は、社員全員で分かち合いましょう ! 」 というメッセージに他なりません。

 

日系企業というのは、個人毎のボーナス査定に大きな差を設定しません (よって、そもそも「ランク C が 0.5 倍・・・」なんていう初期設定自体が存在しないかもしれませんが)。優秀な業績を上げようが、ほとんど戦力になっていなかろうが、上下の差はほとんどない。基本は、年齢 (つまり、年功序列) や役職によって、ボーナスはある程度固定化されています。

 

会社の業績が悪かった場合には、さらにこの傾向は顕著になります。つまり、上下の差がグッと縮まるのです。こんな年に、業績が良かった社員は、まさに「不運」としか言いようがありません。最高ランクである「ランク A 」は、金額が 1.1 倍に削減され、さらに分布人数も全体の 5 %に抑えられた日にゃ、あんた ! もう、やってらんねぇよ !  って感じですよね。
一方、外資の場合は、どんなに業績が悪かろうが、「ランク A = 1.5 倍」は絶対に死守します。たとえ、分布が全体の 1 %ぽっちであったとしても・・・ です。これは、なぜなんでしょう?

 

コミットメント第一 !

最大の理由は 、「経営のコミットメントを曲げるわけにはいかないから」 です。 「コミットメント(commitment)」 というのは、 「約束」 「責任」 といった意味で、外資ではよく使われます (「コミットメント」 については、 『繰り返しゲームと外資系』 & 『スポットライトを浴びるヤツ』 等を参照のこと)。

 

では、 「コミットメント」 とは、具体的にどのように表現されるのか ? それは、 「数字」 です。外資では、どれだけ徹夜して頑張ろうが、働きすぎで倒れようが数字が伴わなければ、 「コミットメント」 を果たしたことになりません。逆にいうと、あらゆる施策は数字で表現されることを意味します。

 

上記の例でいうと、外資の経営は、社員のボーナスに対して、次のようなコミットメントをしたことになります。
「(いかなる会社業績であろうとも) ランク A の社員には、ボーナスを1.5倍支払う」
たとえランク A が全体の 20 %であろうが、 1 %であろうが、極端な話、 1 人であろうが、コミットメントを守ったことには変わりない。これが外資の考え方です。

 

「そんなん、詐欺やんけーーーーーっ!(T-T)」 と感じる方も多いと思います。しかし、詐欺でも何でもない。そもそも、分布(人数)については一切約束していないのですから、会社の勝手です。実は、よくよく考えてみると、上記の例で数字をコミットするには、【金額】部分を固定化するしかありません。なぜなら、【分布】を固定化しても、【金額】がブレたら社員にとっては意味がないし、また、【金額】と【分布】の双方を固定化するのは、業績がどうなるかわからない段階では不可能だからです。

 

ボーナスについて補足しておくと、 「コミットメント」 は、 「契約」 に近い概念ですが、個人の契約において、数字が固定されることは、まずありません。通常、契約上の個人のサラリーは、 「固定分+変動分」 で成り立っており、その 「変動分」 において、上記のような 「後だしジャンケン」が起こる可能性があるというわけです。ちなみに私の場合は、契約金額のうち、「固定分が65%、変動分が35%」となっています。この割合は、外資としては「緩い」方でしょう。一般には、半々ぐらいの割合ではないかと思います。自分の年俸の半分において 「後だしジャンケン」 をされたりすると、泣くに泣けないわけですが、当然のことながら、その逆 (=大きなリターンがある)のケースもあるわけで、それはなんともいえません。

 

たとえ少人数であっても、約束された評価が受けられる外資がいいか ? または、業績が悪いときにはみんなで分かち合う日系がいいか ? みなさんは、どっち派でしょうか ?

 

外資に所属する日本人は、日系の「分かち合い」が我慢できず、転職したという人が大半です。言い換えると、「ローリスク・ローリターン」でぬるま湯体質になりがちな日系から、「ハイリスク・ハイリターン」のピリピリした外資の方を選んだというわけです。

 

しかし、今回のコラムで私が言いたかったのは、外資がいつでも「ハイリスク・ハイリターン」なわけではなく、 「後だしジャンケン」 調整によって、 「ハイリスク・ミドルリターン」 や 「ハイリスク・ローリターン」 というのもあり得るということ。ま、これら全てをひっくるめて、やっぱり外資は「ハイリスク」 なんですよね、実際のところ・・・

 

M くん 「どうしてなんですか ?! 納得いかないなぁ・・・ 」 
例年なら高評価のはずのMくん。外資の 「後だしジャンケン」 で、平凡な評価になったことに文句を言っています。

 

私 「うーん、そうだね・・・ 外資だからねぇ・・・」
M くん 「確かに・・・ 外資ですからねぇ・・・ 」 
こんな返答しかしてやれない私も私ですが。でも、外資で働くからには、Mくんのような 「割り切りに似た素直さ」 も必要なわけで・・・ ま、今年頑張って、取り返してやろうぜ、Mくん! かく言う私も、 「後だしジャンケン」 でひどい評価を受けた一人・・・ な、泣ける・・・ (T-T)(T-T)(T-T)。今年、頑張ろう !

(終わり)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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