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タカシの外資系物語

外資系金融マンの悲哀 ( その 2 )2008.11.04

外資金融マンは電車に乗らない !

( 前回の続き ) これまでにも述べてきたとおり、私は日系の長期信用銀行 (≒いわゆる、投資銀行と業務が似ている ) の出身で、かつトレーディング業務の経験があるため、先輩や友人の多くが、外資系金融機関に転職しています。かく言う私も、何度か外資系金融機関への転職機会があったのですが、残念ながら実現しませんでした。

 

なぜか ? その最大の理由は、やはり「自信がなかった … 」からなのだと思います。実は私、周囲からはそれなりに「自信家」に見られるのですが、かなり気が小さい。かつ、「スロー・スターター」なんですね。何が「スロー」かというと、ひどい「人見知り」なもんで、新しい組織になかなか馴染めないんです。実際、これまでに 2 回の転職を経験していますが、そのいずれも慣れるまでに半年以上かかりました。外資系金融に転職した友人に話を聞くと、入社後一か月以内に何らかの成果を見せないと、切られる ( =クビになる ) ケースもしばしば見られるようで、「もうちょっと待ってくれやーーーっ ! これからエンジンがかかるんやないかーーーーっ(T-T)」 というわけにはいかないようです。

 

自分には向いていないと言っている一方で、依然として、金融に対する憧れもある。その 1 つは、やはり「給料」でしょう。外資系金融に転職した友人について言えば、最低でも 3,000 万円、多いやつは 1 億円以上の年俸をもらっているとのこと。彼らは見栄っ張りが多いので、少し多めに言っているとしても、私の数倍(T-T)はもらっています。

 

2 年ぐらい前でしょうか、外資系金融に転職した S くんと久しぶりに飲みに行く機会がありました。

 

S くん 「… って、いうわけでさ。こっちも結構大変だよ。それはそうと、タカシもそろそろ金融に戻ったら ? いつまでもコンサルなんてやってないでさ …」

私 「そうだねぇ … おっと、もうこんな時間 ! 終電に間に合わなくなるよ。そろそろ行こうか ? 」

S くん 「終電 ? そんなもん、タクシーで帰ればいいじゃん ! 」

私 「いや、そりゃそうなんだけど … ( あ、あのなぁ … ここから俺の自宅まで、タクシーで15,000 円ぐらいかかるんだぞ !)」

「じゃ ! また連絡すっから ! 」終電に駆け込む私を尻目に、S はタクシーに乗り込んでいました。実は、S は外資系金融に転職して以来、電車に乗ったことがないとのこと ! もちろん、S は山手線沿線の高層マンションに住んでいますので、タクシーに乗ったとしても数千円で済むのですが … しかし、行きも帰りもタクシーってアンタ、そんなことしてたら、足腰弱るぞ !

外資系金融マンの「貯金」は ?

「移動はすべてタクシー ( もちろん自費 )、自宅は都内の超高層マンション … 」実は、外資系金融では通常の生活パターンのようです。それに加えて、週の大半は豪華な外食をとり、食後はコーヒーと軽く一杯のためだけにホテルのラウンジに行く。スーツはもちろんブランドもので、ン十万円なり … 軽く見積もっただけで、私が半年ぐらいかけて使うお金を、S は一か月で使い切っています !

 

私 「お前さぁ … 長く働けるわけじゃないんだから、もう少し節約してお金貯めた方がいいんじゃない ? 」

S さん 「そうもいかないんだよ … この世界には、この世界なりのやり方があるんだから、それに従わないと … 」

 

“郷に入れば郷に従え” … この言葉は、S の置かれた状況を端的に表現しています。つまり、とてつもない給料をもらっている人たちは、とてつもない生活をせざるをえないという現実です。

 

例えば、年収 500 万円の人が、急に 5,000 万円もらえるようになったとしましょう。そのままの生活水準を続けていれば、( 税金の問題はありますが ) 少なくとも年間数千万円の貯金ができるはずです。しかし、そうはならない。なぜなら、年収が 5,000 万円になったら、「年収 5,000 万円の生活」をするようになってしまうからなのです。

 

「実は俺、こう見えても、ほとんど貯金ないんだよ … 」 S の口からは、思いがけない言葉が漏れました。「もちろん、普通の人並みの貯金はあるけどね。でもこのままじゃ、不景気になっても、この生活水準を落とせないだろうから … 」外資系金融に勤めている以上、S は年収が極端に減っても、タクシーに乗り続けると言っています。みんな、そうしているとのこと。お金持ちにはお金持ちなりの悩みがあるんですね。なんか、腹立ちますが …

金融機関の本当の役割

さて、実はもう 1 つ、私が金融に憧れている ( というか、もう一度金融機関で働きたい。外資でなくてもいいんですが … ) 理由があります。それは、「やはり、金融業務が好きだ」ということです。

 

金融機関の醍醐味とは何か ? それは、「企業家の夢を実現して、社会に貢献すること」なんです。「なんか、青臭いこと言うとるぞ、こいつ ! 」青臭いといわれようが何だろうが構いません、本当にそうなんですから。

 

銀行などの金融機関に入社する人の大半は、この大義名分を胸に秘めて、仕事をしています。「企業家の夢を実現する」ためには何が必要か ? それはやっぱり、資金面でのサポートなんです。だから銀行はお金を貸す。企業に資金面での余裕 (≒つまり、時間的な余裕 ) を与えて、事業を成功してもらう。事業が成功すれば、その製品やサービスが社会に活用されて、社会自体の役に立つ。もちろん、その企業に勤めている人も潤う … この手助けをするのが、金融機関に他なりません。

 

しかし、いつの間にか、「夢をサポートする」はずの金融機関が、マネーゲームに走ってしまった。それが、今回の金融危機の根源です。金融機関は、社会の「黒子」でなければいけないのです。しかし現実には、高額な年俸を得て、その結果、社会に何も残していない。残していないどころか、国民の税金を使い込んでいるわけで、本末転倒もいいところです。

 

今回の金融危機で、外資系金融という「特権階級」は、かなりの見直しが入ることでしょう。世界の金融機関が、金融本来の役割を取り戻した頃、私も再度、金融マンに戻る道をうかがいたいと考えている今日この頃です。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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