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タカシの外資系物語

外資流 ! イス取りゲーム必勝法 ( その 2 )2008.09.25

人件費は 固定費 ? 変動費 ?

前回の続き ) 先週もお話しましたが、アメリカの金融業界は、本当に大変なことになっています。この一ヶ月ほどの間に、ベア・スターンズ、リーマン・ブラザーズ、メリルリンチといった、「5 大証券」のうちの 3 社が破綻、ないしは銀行に買収されていまいました。

 

深刻なのは労働市場への影響でしょう。アメリカの場合、「金融ビジネスのゼネコン化」が極めて進んでおり、大手金融機関の下請け、孫請けのような企業または個人が多数ぶら下がる形で、金融系のプロジェクトが組成されています。つまり、リーマンが破綻した場合、リーマンの下にぶら下がっていた人たちも一斉に職を失うことになるので、ウォール街は失職者だらけ … という事態が現実に起きているようです。

 

さて、話をコラムの本題に戻しましょう。実は外資系企業というのは、景気の良し悪しに関係なく、年に 1 回程度定期的に社員を解雇します。理由は以下の通りです。

 

( 1 ) 収益確保の「調整」を、人件費で行う為
( 2 ) 常に新しい「血」を入れ続けることが、会社の活性化に必要だと考えられている為
( 3 ) ボスが代わると同時に、人を入れ替える「風習」がある為

 

( 1 ) について、一般に日本企業においては、人件費は「固定費」と考えられています。社員を短期間で大量に解雇しないという暗黙の了解がある為、社員の給料は今後も支払われる前提で、収益計画が作られます。つまり、人件費は必要経費みたいなもので、触りようがないというわけです。

 

一方、外資では人件費は「変動費」という扱いです。ですから、経営者は収益の状況が悪くなってくると社員をクビにすることで、人件費を減らすという行動に出ます。会社の状況によっては、社員のクビなどガンガン切られるのは日常茶飯事というわけです。

社員の解雇 = 部屋の模様替え ?

( 2 ) について、この考え方は、外資では非常に根強く、かつ顕著です。日本人の私からしてみると、「今の状態でそれなりに上手くいっているんだから、無理に人を入れ替える必要などないのに … 」と思うほどに、常に新しい「血」を入れたがります。

 

この感覚の違いは、やはり日本という閉鎖された島国と、オープンに開かれた大陸の発想の差から来ているのではないかと思います。戦国時代とはいっても、結局は日本人のみが支配してきた日本社会に対し、時代ごとに支配する民族が変わるダイナミズムの中で発展してきた大陸では、根本の思想が違うのかもしれません。

 

私の印象では、外資の人員構成は 20% が古くから在籍している社員の層で、残りの 80% は流動的にグルグル入れ替わっている社員の層だと思います。日系の場合、その割合は間違いなく逆転していると思います。

 

このように、( 2 ) はそれなりに理由があるように思えなくもありません。しかし、( 3 ) ははっきり言って理由などないのです。ボスが代わったら社員も入れ替わるのか ? そりゃもう、大変な数の社員が解雇になり、代わりに新規で採用されます。ボスのわがまま、暴君ネロの世界です。

 

もちろん、( 2 ) のような目的もあるのでしょう。しかし、ボスが代わったときの人の入れ替わりようはそんなレベルの話ではない。イメージ的には、「部屋の模様替え、リフォーム」みたいな軽いノリで、明らかに見た目が変わる程度にまで、徹底的に人を入れ替えます。ま、ボスとしては早期に「自分色」を出して、自分が仕切っていることを内外に誇示したいという思いもあるのでしょう。

 

実は、日系企業ではある層においては、これと同じことをしています。それは、社長以下の役員層です。日系企業でも社長が代わると、多くの場合、下の役員層もガラッと代わります。外資の場合は、同様のことが末端でも起こっているということです。

必勝法は、ゲームに参加しないこと ?

上記のような状況の中でも、何とか会社に残り続ける人々もいます。リストラなどの解雇 ( layoff ) を免れることを、外資では一般的に、「Survive」といいます。Survive というと、さいとうたかをさんのマンガ 『サバイバル』 を思い出される方も多いのではないでしょうか ? 日本人的には、ちょっとオーバーな感じもします。

 

しかし、外資の現実は、マンガ 『サバイバル』に匹敵するほど過酷なことも、また事実。実際に、年末や中間期の layoff を免れた社員は、
「I’m surviving, somehow…( なんとか、生き残ったよ … )」
などといった会話をしたりします。

 

さて、前回のコラムで取り上げた「musical chairs ( イス取りゲーム )」の必勝法についてお話しましょう。ここまで引っ張っておいて何なのですが、実は、これといった必勝法はありません。

 

「なんじゃ、そりゃーーーーーーーーーーーーー ! ( 怒 ! )」

 

まぁまぁ、そう言わないでください。結局のところ、イス取りゲームというのは「運」でしかありません。人を押しのけるほどの強靭な体力を身につけ、ストップの笛に対して敏感に反応する、ずば抜けた反射神経を身につければ、ゲームに勝てる可能性も少しは増すでしょう。しかし、努力して体力や反射神経を鍛える労力の割には大した効果はない。つまり、費用対効果が低いのです。結局、「運」ですから。

 

では、どうすればいいのか ? 最も効果的なのは、初めから「イス取りゲームに参加しないこと」です。参加しなければ負けることはないので、運もへったくれもありません。少し、わかりやすく説明しましょう。

 

そもそも、イス取りゲームに参加している ( させられている ) という状況を考えると、ゲームの主催側 ( つまり、経営者・ボス ) は、参加者の「人格」を問題にしていません。つまり、勝ち残る強さがある人なら誰でもいいのです。営業なら、最も収益を上げそうな「営業マシーン」が生き残るのだろうし、バックオフィスなら最も迅速かつ正確に処理する「事務処理マシーン」が生き残るということ。「奈良タカシ」などという、具体的な名前は関係ありません。

 

上記のような、人格を無視したゲームでは、結局は「運」の問題に収束します。だから「運」に左右されない、「人格」ベースのゲームに持ち込まねばなりません。

 

要は、「あなたならではの … 」「かけがえのない … 」「奈良タカシ以外の人はできない … 」 といった何らかの要素で勝負することで、イス取りゲームには参加せずに、初めからイスに座っている状況を作ることが重要です。

 

では、私の場合は、なぜ survive できているのか ? つまり、「奈良タカシ以外の人はできない」こととは何なのか ? これは、若手からの信頼が厚いことだと思っています。私のチームには 30 名の若手がいることに加え、社内勉強会などで他チームの若手と接していく中で、「若手のメンター」のような位置づけを確立することができました。この事についてはボスも評価してくれているようで、よって、私は今のところイス取りゲームには参加せずに、最初からイスに座っている立場を保持できています。

 

しかし、これも明日にはどうなっているかわかりません。いきなりボスが変わって、「全員入れ替えじゃーーー ! 」となれば、私もイス取りゲームに参加しなければなりません。ま、そうなったら、そうなったで、実はある「作戦」を考えています。それは … 今の会社のイス取りゲームには参加せずに、別の会社のイス取りゲームに参加するのもアリかな、と。そのためには、「参加資格」を得るべく、一層のスキルアップをはかる必要があるのですが。

 

さて、皆さんの会社ではどうですか ?
「うちは平和だよ、イス取りゲームなんて一切ないからね~」 
そういうのが、本当に平和なのかどうかは、何とも言えませんがね。たまには走った方が、いざという時に体が動きまっせ !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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