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タカシの外資系物語

タカシ流 スキル UP の方法 ( その 3 )2008.07.08

スタッフ A くんの根本的な “誤解”

( 前回の続き ) スキルを短期間で身につけたいと希望するスタッフ A くんに、あるプロジェクトの PM ( プロジェクト・マネージャー ) になることを打診してみたところ、A くんは以下のような条件をつけてきました。

 

A くん 「PM としてのタカシさんの“やり方”を、紙に書いてくれませんか ? お客さんにこんなこと言われたら、こう切り返すとか … タカシさんのスキルをまとめておいて欲しいんですけど … そうしてくれたら、PM 引き受けます ! 」

そう来るかぁ … こいつはちょっと「強敵」ですね。

 

私 「じゃ、君は “奈良タカシ” になりたいんだね。それでいいか ? 」

A くん 「へ ? いや、別にそういうわけじゃ … 」

私 「でも、仮に俺のスキルをそのまま真似しても、“奈良タカシ”以上にはなれないよ。それでいい ? 」

A くん 「 … 」

なーんだ、こいつ … 「タカシさんのようになりたいんです ! 弟子にしてください ! 」とでも言えば、私もそれなりに考えたんですが …ま、その場合でも、私の“やり方”を紙に書いて渡したりはしませんがね。

 

さて、A くんは、根本的にいくつかのことを誤解しています。

 

【 A くんの誤解】
( 1 ) あらゆるスキルは、紙に書いて伝達できる ! という誤解
( 2 ) スキルというのは、黙って座って勉強すれば身につく ! という誤解
( 3 ) スキルは「タダ」だ ! という誤解

スキルは体験しないと身につかない !

まず、「( 1 ) あらゆるスキルは、紙に書いて伝達できる ! 」という誤解から。結論からいうと、世の中にある「スキル」のほとんどは、紙に落とすことなどできないと、私は考えています。例えば、「自転車に乗る」というスキル。「サドルに腰かけて、バランスを取りながら、両足でペダルをこぐ … 」と言われたところで、自転車に乗れるようになるわけではありません。また、「自転車を安全に乗る」というスキルも、「十字路では車に注意 ! 」と言われても、実際にヒヤッとした経験がなければ、実感はわかないでしょう。

 

仮に私が、PM としてのスキルを紙に書いたとします。「ミーティングは事前にアジェンダ ( 議題 ) を明確にして、1 時間以内で終える」 と言ってみたところで、事前にアジェンダを明確にしないとどんなヒドイことになるのか ? 長時間のミーティングが、どれだけメンバーのやる気をなくさせるか ? … などを実際に体験した人でないと、その「こころ」がわからんわけです。

 

そもそも、あらゆるスキルが紙に落とせる ( 可視化できる ) と考えてしまう理由は、学校の勉強がそうだったからです。今思えば、学校の勉強なんて、本さえ読めばわかるものがほとんどです ( 中には、さっぱりわからんものもありましたが … )。なぜなら、答えが 1 つに決まっているからです。例えば物理なら、数式を覚えて最短時間で解けばいいのです。1 つの答えを、最も速く、正確に解いた人の勝ち。その解答に至るプロセスは、基本的に 1 番の人も、2 番の人も、10 番の人も同じですから、要はスピードと正確性の問題です。

 

一方、ビジネスのスキルというのは、ちょっと違います。もちろん、スピードと正確性は重要ですが、ことホワイトカラーといわれる職種のスキルというのは、「いかに臨機応変に対応して、成果を上げたか ? 」ということの方が、ずっと重視されます。「臨機応変」と言っている以上、先方の出方に応じたアクションが必要なわけで、そんなもん、パターン毎に紙に書けるわけありません。「ミーティングは事前にアジェンダを明確にして … 」というのも、極端な話、アジェンダを明確にせずに、ブレーン・ストーミング的に話を進めた方がいい場合もあるわけで、それを見越して紙に落とせるはずなどないわけです。

 

このことは、「( 2 ) スキルというのは、黙って座って勉強すれば身につく ! 」という誤解にも通じますが、要は、ビジネススキルの大半は、実際に体験してみないと身につかないということです。逆に、一度でも体験しておけば、「ミーティングは事前にアジェンダを明確にして … 」という考え方に対して、「フムフム、なるほどねぇ … 」となるわけです。あくまでも、順番は「実地体験→座学→また実地体験→座学 … 」であることを忘れてはいけません。

スキルつけたきゃ、リスクを負え !

次に、「( 3 ) スキルは「タダ」だ ! 」という誤解について。 「人にモノを教えてもらおうってぇのに、タダとは何事じゃ。金出せや、オラオラァー … 」なんてことを言っているわけではありません。私が言いたいのは、「苦しさを経験してから、質問に来い ! 」ということ。つまり、「リスクを負え ! 」と言っているのです。

 

例えば、「タカシさぁーん、今日のミーティング、議論が発散して、ボロボロでしたぁ … 予定時間も軽くオーバーしたしぃ … 助けてぇーー (T-T)」と言ってきたのなら、「ミーティングは事前にアジェンダ ( 議題 ) を明確にする。議論が発散しても、とりあえず時間内に終える。宿題を明らかにして、次回までに考えてくる担当者を具体的に決めておく … 」などのスキルを聞いて、その重要性を実感することができます。しかし A くんのように、自分はリスク ( 苦しさ ) を負うことなく、「さぁ、あんたのスキルを教えろ ! 」と言われても、教える側も困ってしまうのです。なぜなら、何を教えてやればいいのか、わからないからです。

 

少なくとも、人に教えを請うときは、相手を尊重するとともに、相手が教えやすい状況になっておくのが「礼儀」ってもんでしょう。「相手が教えやすい状況」というのは、自分が何に困っているか、具体的に伝えることです。そのためにも、実際に体験して痛い目に遭った後の方がいいのです。まずは、何事もやってみることが重要なのです。

 

巷に溢れる「スキル本」「仕事術本」も同じです。自分が失敗した経験がないと、読んでいても、面白くも何ともない。失敗するリスクは負わずに、仕事をスマートに片付ける方法なんてないのですから。

 

翌日、再度 A くんが私のところにやってきました。

 

A くん 「いろいろ考えたんですが …」

私 「ん ?」

A くん 「とりあえず、PM は引き受けたいと思います。1 つ条件がありまして …」

私 「( まだ言うか、こいつぅ … ) 何 ? 」

A くん 「最初の 1 週間、お客様との打ち合わせには、タカシさんも同席してください。その後は私一人でやりますが、相談には乗ってください … 」

私 「俺のスキル … 紙に書かなくていいの ? 」

A くん 「いいです、その都度で … 」

私 「( よっしゃ、よっしゃ … ) なんだ、急に態度変えたな ? 」

A くん 「タカシさんと同じにはなりたくないんですが、少なくとも、タカシさんを超えないと話にならないんで … 」

私 「( 超えないと話にならない … っちゅうのは、かなり失礼だぞ、オイ ! ま、いっか … ) あ、そう … 」

… とまぁ、A くんとはこんな感じで落ち着きました。「タカシもなんだか、説教くさくなってきたな …」と思ったみなさん。ま、連載 400 回記念ということで我慢してください。

 

あ、そうそう、この 7 月 19 日で、私もとうとう「40 歳」になります。どうりで、おっさんくさくなるわけですね …

 

何はともあれ、これからも、『おっさんタカシの外資系物語』を、どうぞよろしくお願いします !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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