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タカシの外資系物語

暗いオフィスで独り言 …2008.06.03

午後 10 時にオフィスが …!?

ブチッ !

ただ今、午後 10 時過ぎ。私のオフィスでは、午後 10 時を過ぎると、部屋の電気が自動的に消える仕組みになっています。「び、びっくりしたぁー、何だよ一体 ! 」と驚いている人は、残業の素人。私のように、毎日のように電気が消えるのを目の当たりにしていると、「あ、10 時なのね … 」としか感じなくなってきます ( 決して褒められたことではない )。

 

もちろん、電気のスイッチを入れなおせば、部屋の電気は点きます。では、会社はなぜこんなことをしているのか ? 単なる嫌がらせなのか ? いやいや、そんなことはありません。1 つの目的としては、「省エネ」が挙げられます。すでに全員帰宅したにもかかわらず、部屋の電気が点いている場合には、この策は効果的です。もう 1 つの目的としては、「もう 10 時ですよー、そろそろ帰ったらいかがかねー ? 」という合図の意味合いです。

 

しかし、いくら合図をしてみたところで、それに反応しなければ意味はありません。私のように、10 時になって電気が消えても、「はいはい、点ければいいんでしょ。点ければ … 」と、半ば条件反射的に動いていたのでは、制度を導入した側の会社もやりがいがないってもんです。

 

実はこの制度、アメリカではかなり一般的なようです。同僚によると、アメリカの多くの企業では、夜 8 時になると、一斉にオフィスの電気が消えるようになっているのだそうです。その時オフィスにいるスタッフはどうするのか ? 殆どの人は、電気が消えるとそそくさと帰宅するとのこと。電気が消えても余裕をかましている日本とは大違いです。

 

では、どうしてこのような違いが生まれるのか ? これは、日米における「残業」に対する認識の差のせいではないかと思います。つまり、日本においては、残業は「仕方のないもの」、または「他人より働いているのだから、褒められてしかるべし … 」くらいのイメージだと思います。一方、アメリカにおいては、残業は「回避できるもの」、または「残業しなければならないのは、自分に能力がないことをあらわしており、カッコ悪い … 」 と考えられています。この認識の違いが、オフィスの電気が消えた時の反応として、如実に現れているわけです。

残業をする理由

私も外資に転職するまでは、「残業がカッコ悪い … 」という認識を持っていませんでした。日系企業にいた頃は、毎日定時に帰るようなやつは、仕事のできないやつだと勝手に決めていたように思います。

 

もちろん、「カッコいい / 悪い」というのは、本質的には「仕事ができる / できない」で判断されるべきですから、「残業する / しない」は一切関係ありません。当然のことながら、「残業しないで仕事ができる人」 が一番カッコいいに決まっています。にもかかわらず、日本においては、残業をすることを前提に、仕事をするようになったわけで、これには何か深いワケがありそうです。

 

日本では、結果よりもプロセスを重んじる傾向があります。これも、残業を生む大きな要因です。アメリカのように、「結果さえ良ければ、多少手を抜いてもいいじゃん ! 」という合理主義は、どちらかというと「悪」ですから、常にきちんとした作業が要求される。つまり、適当にやっても上手くいきそうな場合でも、手を抜くわけにはいかず、残業をしてでも全作業をやり遂げる必要があるわけです。

 

なるほど、確かにそれはあるかもしれませんね。しかし、1 つ納得いかないことがあります。私は外資に転職して早 10 年以上になります。アメリカ式の仕事術にも慣れ、かなり合理的に考えられるようになっています。なのに、どうして毎日残業をしてしまうのでしょうか ?

“日本人・タカシ” と “アメリカ人・マイケル” の差

どうして外国人の同僚は残業をせずに、日本人の私は残業をしていまうのか … それを探るには、両者の行動パターンの「差」を特定しなければなりません。

 

例えば、同僚のマイケルと私。2 人とも同じ職位で、同じぐらいの成果を上げています。クライアントを訪問して、ニーズをヒアリングして、提案書を書いて、提案作業をする … うーーん、殆ど同じことをしています。同じことをしているのに私だけ残業をしているということは、私はマイケルに比べて仕事が遅いということなのでしょうか ?(T-T)

 

「そういえば … 」 1つだけ違うことがありました。マイケルはやっていないことで、私だけがやっていること、それは、「準備作業」です。「準備作業」というのは、クライアントを訪問するに際して、そのクライアント ( 面談していただく方 ) がどのような会社・人物なのかを調べたり、提案書を書くに際して、過去の同様事例を詳細に調べたり … という作業のことです。もちろん、マイケルも準備作業をしていますが、明らかに私の方が多い。私はその分だけ、残業をする羽目に陥っているわけです。

 

私 「マイケルってさぁ、クライアントをコール ( 訪問 ) する際の準備に殆ど時間かけないよね ? 」

マイケル 「そうかな。( 会社の LAN にある ) クライアント情報 DB ( データベース ) ぐらいは見てるけど … 」

私 「それ以外の情報は見ないの ? クライアント情報 DB って、最小限の情報しか載ってないだろ ? 」

マイケル 「それ以外の情報、てったって … そりゃ、あるにこしたことはないけどさ、時間かかるだろ、集めるのに。どっかで割り切らないと、いくら残業したって足りないぜ ! 」

… 全くその通りなんですがね。

 

私が事前準備に時間をかけるのは、一種の「保険」みたいなもんでして、それをやっておかないと落ち着かないというか、なんというか … マイケルの方が、事前準備が少ない分だけ、突っ込まれる可能性が高い。しかし、マイケルはそのような局面に「慣れて」いるので、突っ込まれた時の機転は、それなりに利くように思います。

 

では、私とマイケルでは、どちらが優れたやり方なのでしょうか ? もちろん、残業をしないことについては、マイケルの方が上です。しかし、私の方が仕事を受注する率が高いのです。仮に、私が残業を全くしなかったとしても、私の方が高確率で受注していると思います。これはやはり、事前準備を入念に行っているからなのではないでしょうか。マイケルは、ある意味、「下手な鉄砲、数打ちゃ … 」方式なのです。

 

残業はしない方がいいに決まっています。だから、私も今後は、何とか定時に帰るようにしたいと思っています。しかし、こと仕事のやり方に関しては、その人なりの方法があるわけで、全てにおいてアメリカ式がいいとは言い切れないように思います。「自分流を貫いて、定時に終えることができるか ? 」これこそ、カッコいいビジネス・パーソンが追究すべきテーマなのでしょうな。

 

ブチッ !
オフィスの電気がまた消えました。え ? 10 時だぞ、早く帰れ ! って ? 定時に帰るカッコいいビジネス・パーソンを追究してるんじゃなかったのか、って ?

 

ま、徐々に、徐々に。そんなにすぐ変えられませんから … あ、そうそう、ちなみに今は、夜中の 12 時ですな。実は、うちのオフィスは、午後 10 時から 2 時間おきに電気が消えるんで、今日 2 回目というわけ … 次消えたら、午前 2 時かな、ハハハ …

 

早よ、帰れって、かーーーーーーー ! もうちょっとだけ、あと 30 分で終わるからーーーーーーーーーーっ !(T-T)(T-T)(T-T)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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