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タカシの外資系物語

タカシの昇進試験 ( その 2 )2008.04.15

痛いところをつかれた 「理由」

前回の続き )

 

審査官 「Who? Who succeeds to you? Who is… “ Post Takashi “ ? 」 ( あなたの跡継ぎ = 後継者 = ポスト・タカシは誰なの ? )
私 「 … 」 ( こりゃ、痛いとこつかれたにゃ … トホホ …(T-T))

 

昇進試験 ( Promotion Interview ) の面接にて。面接官から、「タカシ、あなたの後継者はだれですか ? 」と質問され、即座に答えることができない私 … さて、タカシの運命や、いかに !

 

今回の昇進試験に合わせ、数週間前から、私は綿密な準備をしてきました。「昇進後、1 年間、および 3 年間で、どの程度の収益を上げることができるか ? その詳細なビジネス・ケース ( 実数値の入った計画書 ) は、どのようなものか ? 」 「昇進後、業界紙や関連セミナーなどに、どの程度の頻度で出ることができるか ? 」 「 5 年後、10 年後を見据えた、新規ビジネスの seeds ( 種 ) が作れるか ? 」 … 等々、面接で尋ねられそうな項目を中心に、パワーポイントのスライドを作成し、簡潔に説明する「練習」をしてきたのです。

 

そういえば、ここ数年ほど、プレゼンの「練習」なんて殆どしていませんでした。慣れというのは怖いものでして、コンサルとして人前で頻繁にプレゼンしていると、スライドを作っている段階で、実際のプレゼンのイメージがつかめるので、取り立てて練習などしなくなっていました ( もちろん、どんなプレゼンでも、簡単に練習はしておくべきだというのは言うまでもありません )。 そんな横着者の私が、練習したのです。このことからも、この面接にかける意気込みがわかるってもんでしょう !

 

しかし、現実には、私は回答に窮している。なぜか ? そもそも私が、「痛いところをつかれた」と感じたのには、 2 つの理由があります。

 

( 理由 1 ) 質問される可能性が高い項目として、事前に認識できたはずだから
( 理由 2 ) 仮に、事前に認識できていたとしても、実際にはそれを満たすアクションを取っていなかったから

マネージャーの最も重要な仕事とは ?

まず、( 理由 1 ) について、なぜ「事前に認識できたはずだ」 と言えるのか ? これは、今を遡ること、十数年前のこと。日本の銀行から、外資系コンサル会社に転職して間もない頃のことです。その日私は、同僚と一緒に、外国人のあるパートナーと一緒にランチをとっていました。そのパートナーは面倒見のいい人で、自分の配下にいるスタッフに対して、時々ランチをご馳走してくれたのです。

 

コンサル駆け出しのペーペーだった当事の私にとって、配下スタッフ百名超を抱えるパートナーは、まさに雲の上のような人。おまけに、英語でコミュニケーションしなければならなかったので、非常に緊張したランチだったと記憶しています。

 

食事が一段落して、そのパートナーに対する「質問タイム」になりました。それまでは、英語の得意な同僚が会話を独占していたのですが、黙して語らない私にパートナーが配慮してくれたのか、発言の順番が回ってきたのです。

 

私 「uhhh…ohhhh…」 ( って、怪獣かワシは … お、落ち着け ! タカシ ! )

パートナー 「what?」

私 「uhhhh…Wh, Wha,…What is the most important job, for partner? Ehhhh…」 ( しつこいわーーっ ! )

「パートナーにとって、最も重要な仕事は何か ? 」 よくもまぁ、こんなベタな質問をしたものです。そのときの私は、質問の内容うんぬんよりも、独力で英語を使って質問できたこと、加えてimportantの最上級に「the」をつけて、「the most important」と正しい文法で言えた ( 間違っても、important・estなんて言わなかった ) ことについて、中学生並みの感動を覚えていたものです ( アホか、わしは … (T-T))。

 

さて、私の質問に対して、そのパートナーは何と答えたか ? 彼は一瞬、私を眼光鋭くにらんで、次のように答えました。

 

パートナー 「Good! Very good question, Takashi! It’s to make next Partner, post-me! 」 ( いい質問をしてくれたね、タカシ ! パートナーにとって最も重要な仕事は、パートナーを作ること。つまり、自分の後継者を育てることだよ )

 

私の英語力のなさから、何の相槌も打てず、追加の質問も出来なかったので、彼との会話はこれで終了しました。しかし、その時の事は、私の脳裏に鮮烈に残っています。なぜなら、この事こそが、マネージャー ( パートナーを含め、広く管理職と呼ばれる人たち ) の仕事の「本質」に他ならないと思えたからです。

マネージャー・タカシの「不覚」

「後継者を作る」ということが、マネージャーにとってどれだけ重要かについては、みなさんにも思い当たるフシがあるのではないでしょうか ? 世に「名経営者」と言われる人は数多くいますが、その後継も名経営者だった例は、それほど多くないように思います。特に、自分の子供に継がせた場合などは、うまくいかないケースが多く見受けられますね。それはなぜか ? 私は、跡継ぎがイマイチだったというよりは、先代が自分の後継者を真剣に育成しようとしなかったからではないかと考えます。

 

一般に、企業というのは、一族以外の他人を雇用し、消費者に商品・サービスを提供する組織です。そうだとすれば、短期的に収益を上げて株主に還元すると同時に、長期的かつ継続的に会社を運営し、社員の雇用を守り、消費者に商品・サービスを安定して提供し続けなくてはなりません。つまり、自分一代が良ければいいというわけではない。これは、よりミクロな部・課といった組織についても当てはまることでしょう。

 

昇進試験において、より上位のマネジメントへの昇進にチャレンジしている私にとっては、このことは肝に銘じておくべきことだったはず。また、先のパートナーとの会話で、鮮烈な思い出があったにもかかわらず、そのことを念頭に置いていなかった … なんという不覚 … uhhh…ohhhh… ( って、またかよ、おい ! )

 

さて、次に ( 理由 2 ) です。では、この質問の準備をしておけば、回答できたのか ? 答えは、「No」です。仮に、この質問が思い浮かんだとしても、私はマネージャーになってこの数年の間、そのためのアクションをとってこなかった … なんという不覚 … uhhh…ohhhh… ( しつこいわーーーーーーっ! )

 

実は、私だけでなく、多くのマネージャーが同様の状況にあるのではないでしょうか。なぜ、後継者を育てるアクションが取れないのか ? そして、タカシは審査員の質問に、どのように回答したのか ? そしてそして、結局タカシは昇進できたのか ?! 次回、クライマックス ! 乞う、ご期待 ! ( われながら、引っ張るね … )

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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