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タカシの外資系物語

「地頭力」と外資系 ( その 1 )2008.03.25

“地頭力” とは何か ?

「“地頭力” ねぇ、ふーーん … 」

 

1 ヶ月ほど前のこと、私は会社の会議室で、ある説明を受けていました。会議の議題は、ズバリ『本年度新卒採用の実施要領』。つまり、来年入社の新卒学生に対する、人事面談の段取りについて話を聞いていたのです。

 

わが社の今年の採用面接は、以下の 3 段階に分かれています。

( 1 ) グループ・ディスカッション ( 学生さん 5 ~ 6 名 対 面接官 1 名 )
( 2 ) プレゼンテーション面接 ( 学生さん 2 名 対 面接官 1 名 )
( 3 ) 役員面接 ( 学生さん 1 名 対 面接官 1 名 )

各段階において、学生さんの人数が減っているのは、次の段階に行けずに落とされるからです。今回、私は ( 1 ) の面接官を担当することになったのですが、そこでのディスカッションの題材が、冒頭に書いた “地頭力” というわけです。

 

では、“地頭力”とは何か ? 実は最近、この言葉が注目を浴びています。細谷功さんという、私と同業のコンサルタントが書いた本 『地頭力を鍛える』 ( 東洋経済 ) がベストセラーになり、ブームに火をつけました。細谷さんいわく、地頭力というのは、「考える力のベースとなる知的能力」とのこと。わかりやすく説明すると、こういうことです。

 

例えば、「日本に公園はいくつあるか ? 」という問いに対して、みなさんならどのように回答を導きますか ? 日本の公園数であれば、インターネットを調べれば、どこかに掲載されているかもしれません。しかし、それは「情報処理能力」や「検索能力」であって、地頭力ではない。地頭力というのは、自分の頭の中にすでに存在している情報だけを使って、いかにして回答を推測するか … という能力のことを言っています。

 

上の問題であれば、こんな感じで解けるかもしれません。

 

【タカシの解法】
・日本の国土を、「市街地」と「郊外」に分ける
・市街地では 1.000 人に対して 1 つの公園があり、郊外では 500 人に対して 1 つの公園があると仮定する
・日本の人口を 1 億 2,000 万人として、その 70% が市街地に住み、残り 30% が郊外に住んでいると仮定する
・市街地の公園数 = 1 億 2,000 万人 × 70% / 1,000 = 84,000
郊外の公園数 = 1 億 2,000 万人 × 30% / 500 = 72,000
・よって、日本の公園数は、156,000 個

地頭力 = 「仮説」を構築する能力

「156,000 個 ? ほんとにぃ~ ? なんか、怪しいなぁ … 」 
そもそも、怪しいんですよ、こんなもん。だから言ってるじゃないですか、あくまでも「仮定」だって … 。

 

地頭力で重要なことは、「正確さ」ではなく、回答を導くための「仮説」を構築する能力なのです。私の解法を見ていただくとわかると思うのですが、なんか怪しい一方で、明らかに間違っているとも言えないことに気づくと思います。 それはなぜか ? まず、「市街地」と「郊外」を場合分けすることによって、モデルを分解している点が重要です。日本の国土を 2 種類に分けることによって、説得力を出しているわけです。また、「市街地では 1.000 人に対して 1 つの公園 … 」「( 日本の人口のうち ) 70% が市街地に住み … 」 なーんていう辺りも、それらしい説明になっていると思いませんか ? このように、常識的に考えて、「なるほど、そんなもんだろうなぁ … 」という感覚を聞き手に抱かせるのも、地頭力では重要な要素です。

 

モデルを分解してそれらしく見せ、使っている数値を常識的なレベルで説明する … これによって、聞き手に「なるほどね ! 」と思わせることが出来る人が、地頭力が高い人と言えるかもしれません。

 

「単なる屁理屈じゃねぇか … 」と思われる方、実はこの能力って、非常に重要なんですよ、これが。

 

例えば、みなさんの職場で、「日本に公園はいくつあるか ? 」という問題が出されたら、上司や同僚はどのように回答するかを考えてみて下さい。

 

・「インターネットや参考資料で調べようとする人」 … いますよね。でも、その統計がどこにも存在しなかったら、結局答えはわからずじまいです。
・「こんなもの、わかるはずがない ! と、ハナから諦めている人」 … これもいますね。でも、何かアクションを取らなければ、答えは一生得られません。
・「調べといてね、よろしく ! と他人に振る人」 … みなさんの上司はこのパターン ?

 

このように、多くの人は地頭力を使って考えようとはしません。どこかに答えがあればラッキーですが、ビジネス課題の大半は、答えなどないような話ばかりです。つまり、誰も考えようとしなければ、新しいものなど生み出しようがないわけです。
この地頭力を使った思考法、 IT 業界やコンサル業界では以前から知られていました。またの名を「フェルミ推定」といいまして、数年前にマイクロソフトが入社試験に使ったことで有名になりました。ここにきて、またブームが来ているというのは、答えのない問題をじっくりと考えるという取り組みの重要性が、再認識されてきたからなのかもしれません。

“地頭力”よりも重要な能力 とは ?

「では、グループ・ディスカッションを始めます。これから、ホワイトボードに課題を提示しますので、皆さんは制限時間 20 分を使って、自由に議論してください。いいですか ? 課題は、『日本に公園はいくつあるか ? 』です … 」

 

というわけで、実際の人事面接の日になりました。私の目の前には、 6 名の学生さんが座っています。これからの 20 分、学生さんの “地頭力” を評価すべく、グループ・ディスカッションを実施してもらうわけです。

 

私 「では、始めてください ! 」
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私 「ふーん、なるほどねぇ … ( 最近の学生さんは、しっかりしてるなぁ … )」

 

議論が終わって、学生さんからの説明を聞いた私。完璧とは言えないまでも、それなりに納得感のある回答だったもので、感心していました。

 

学生 A さん 「あのぅ、1 つ質問いいですか ? 」

私 「はい、どうぞ ! 」

学生 A さん 「このような能力って、コンサルタントにとっては必須なんでしょうかね ? 」

私 「もちろん、必須といえば必須だね … だけど、もっと重要な能力があるんだけどね、それは … 」

 

… っと、今週はここまで ! コンサルタントにとって、「もっと重要な能力」って何なんでしょうか ? 次回のコラムでは、実際の学生さんのディスカッションも紹介しながら、“地頭力” よりも重要な能力についてご説明したいと思います。

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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