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タカシの外資系物語

ロールプレイができますか ? ( その 2 )2008.02.26

前回の続き ) 前回のコラムでは、外資系企業において「ロールプレイができる社員、できない社員」について、以下の 3 類型で説明しました。

 

( A ) 外国人、あるいは、主に外国で教育を受けた者 ( MBA ホルダー含む )
( B ) 日系企業から外資系企業に転職した者
( C ) 日本の大学を出て、日本の外資系企業にプロパーで入社した社員

 

私の主張は、ロールプレイができる社員= ( A ) ( B )、できない社員= ( C ) ということでした。( A ) の社員ができるのは、「ロールプレイを念頭に置いた教育を受けてきたから」という理由です。

 

「あれ ? 教育の問題なら、( C ) だけじゃなくて、( B ) もできないんじゃないの ? 」 いやいや、( B ) はできるんですよね、これが。まずは、そのことについてお話しましょう。

徒弟制度を通じた 「ロールプレイ」

確かに、日本の学校を卒業するまでは、 ( B ) も ( C ) も同じように、ロールプレイが不得手な人が多いように思います。しかし、就職してからが、両者で異なるのです。

 

日系企業では、入社後の数年間、特定の先輩がマンツーマンで指導するといった、「徒弟」制度的な教育を受けます。その教育体系の中では、一通りの仕事のやり方や社会人として必要な一般常識のほかに、「自分以外の利害関係者がどのように考えているか」 ということを徹底的に学びます。

 

例えば、ミーティングを実施して、議事録を作成するとしましょう。議事録というのは、読んで字のごとく、「ミーティングの 議事 = 事実 をメモしておく」ものです。なので、関係者が周知しておくべき事実が書かれていれば、本来の目的としては事足ります。しかし、多くの日系企業の徒弟制度においては、事実だけを書いていたのではダメだという指導がなされます。

 

「自分が課長になった気持ちで書くとどうなる ? 部長なら、どんなコメントをするかな ? そういうことを含めて書いてごらん … 」 と言われます。つまり、自分の上司が考えそうなことを先回りして議事録を作りなさい、と指導されるのです。

 

なぜこんなことをさせるのか ? 理由は簡単でして、課長や部長は、その議事録をほとんど読まないことを想定しているからです。課長や部長はチラッと見るだけでほぼ素通りする前提ですから、担当者が作成した時点で、課長や部長のコメントも含め、ほぼ完了していなければなりません。それを、担当者が独力で記述する必要があるのです。この原則は、企画書や稟議書など、あらゆる文書について言えることだと思います。

 

私は銀行員時代、極めて厳格な徒弟制度のもとで教育を受けました。その結果、ときには部長、ときには課長 … といった具合に、あらゆる階層の人の立場に立って、文書を書くことができるようになりました。このように、組織に所属する社員を「ミニ課長」「ミニ部長」としてクローン化することが、徒弟制度の大きな目的だったように思います。私が所属していた銀行業界が特に顕著だったのかも知れませんが、日系企業の事務方というのは、おおむねこのような傾向にあるのではないでしょうかね。

外資プロパー日本人の弱点

私は、以上のような日系企業のやり方を肯定しているわけではありません。こんなことをするから、否定すべき時に上司を否定できない「イエスマン」ばかりが生まれてしまうというのも事実なので … 。しかし、このような教育を受けることで、「ロールプレイ」の能力がついたことも事実です。自分が何かアクションを起こす際に、「ボスならどのように考えているだろう ? 」「クライアントの部長はどのような意見を持つかな ? 」… などと考え、無意識のうちに、常に先手を打つ対応ができているように思います。

 

一方、外資系企業にプロパーで入社した社員というのは、このような徒弟制度のもとで教育を受ける機会がありません。一般に外資系企業では、自分の与えられた仕事をスピーディに黙々とこなすことを要求されます。議事録は事実だけを伝えればよし、部長や課長がどのような意見を持っていようが関係なし。文句があるなら、部長が自分でコメントしろ … というスタンスです。

 

それはそれで正しいのでしょう。この方が明らかに、議事録担当者としての作業時間は早いですから。しかし、この仕事のやり方では、社員に「ロールプレイ」の能力が身につかないというのもわかると思います。

 

ロールプレイができないと、マネージャー等の管理職になったときに不都合が出ます。管理職というのは、自分の作業をスピーディに黙々とこなすだけでは済まされません。作業をしているスタッフを管理しながら、会社として必要な策を打つためには、「スタッフ & マネージャー & 経営層」の 3 つの人格で考えることが必須となるからです。

 

これは私の感覚なのですが、外資系企業では、「スタッフとしては優秀なのに、マネージャーになった途端に伸び悩む人」というのが、結構います。で、こういう人は、( C ) 「日本の大学を出て、日本の外資系企業にプロパーで入社した社員」 に非常に多いのです。一方で、日系企業では、スタッフとして優秀な人は、マネージャーになっても優秀な人が多い傾向にあると思います。

外資プロパー日本人の 「ガラパゴス化」

さて、話は変わりますが、みなさんは、ガラパゴス諸島をご存知ですよね。大昔は大陸の一部だったこの島は、大陸移動によって、今ではインド洋に孤立する島になってしまいました。外界から隔離されたこの島では、ガラパゴスリクイグアナなど、島独特の生物が多数生息していることでも知られます。

 

最近、「ガラパゴス化」という言葉をよく耳にします。これは、ある特定地域において、独特の進化を遂げたようなものに対して使われます。よく言われるのは、日本の携帯電話です。日本の携帯電話は、そのアプリ ( 機能 ) や OS などが、他の国にはない形で発展したものとして、「携帯電話のガラパゴス化」という言い方で引き合いに出されます。

 

私は外資にプロパーで入社した日本人に対しても、同様の「ガラパゴス化」が起こっているように思うのです。それも、悪い意味での進化 ( 退化というべきかも ? ) です。

 

先に述べた「ロールプレイができるか、できないか ? 」は、その典型的な例でしょう。外資系・日系の違いではなくて、外資系プロパーの日本人だけが不得手な傾向にあって、それ以外の人はできるというもの …、つまり 「外資系プロパーの日本人によるガラパゴス化」です。

 

このような私の意見に対しては、反論される向きも多いと思います。もちろん、私も外資系プロパーの日本人すべてに当てはまると言っているわけではありません。しかし、私と同じ意見を持つクライアントや同僚が多いのもまた事実なわけで、大きくはずしているとも思えません。

 

重要なことは、教育という観点で欠けている部分については、すぐにでも拡充すべきだということでしょう。欧米の外資系企業が当たり前のように前提としているスキルであっても、日本の教育において対象としていないケースがあるわけで、そのような部分は真摯に改善しなければなりません。一昔前のように、 MBA や帰国子女だけが外資に勤める時代ではありません。普通の日本人も外資に勤めるようになったのです。日本に進出する外資は、このような「普通の日本人」のための特別な教育体系を検討する必要があるように思うのですが … みなさんはどのようにお考えでしょうかね ? この話題については、今後も機会を見つけてお話していきたいと思います。では、また !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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