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タカシの外資系物語

ロールプレイができますか ? ( その 1 )2008.02.19

ケンジが断った理由

私 「ケンジさぁ、ちょっと時間あるかな ・・・ 」

ケンジ 「は ?  なんすか ? 」

私 「ケンジの “プロジェクト評価シート” なんだけど、【Manager’s Comments】の欄、自分なりに、ちょっと埋めておいてくんないかな ? 」

ケンジ 「は? おっしゃっている意味がわかんないんですけど?」

私 「いや、だからさ、最終的には俺が書くんだけど、仮にケンジ自身がケンジのマネージャーになったとしたら、どんなこと書くか想像しながらさ ・・・ 」

ケンジ 「その欄は、上司であるタカシさんが記入する欄じゃないですか ?  ルール上、そんなことできません ! 」

私 「 ・・・ ( 試しに書いてみろ、って、言っているだけなのに ) 」

みなさん、上記の会話から、私がケンジにどのような話を持ちかけているか、わかりますかね ? わが社には、”プロジェクト評価シート” なるものがありまして、簡単に言うと、スタッフが自分の関与したプロジェクトにおいて、どのような成果を上げたのかを記述する評価表があるのです。その表中に、評価者として私がコメントする欄があるのですが、私はケンジにその欄を自分で埋めてみなさいと言っているのです。

「そんなことが許されるのか ? タカシは手を抜こうと思っているんじゃないのか !? 」 いやいや、確かにそういう側面もないわけではありません。しかし、私がやりたいことの本質は、そんなことじゃないのです。

実は、ケンジはそろそろマネージャーへの昇進にトライする時期が来ています。マネージャーになれば、近いうちに部下を評価してコメントすることになるわけですから、そのときの「練習」を兼ねて、自分の評価をさせてみようか、というのが真の目的なのです。

しかし結果的には、ケンジはそれに同意してくれませんでした。ケンジが記入を拒んだ理由は、以下の可能性が想定できます。

 

( 1 ) ケンジはルールに厳格なので、マネージャーが記入する欄に自ら書き込むことを拒んだ

( 2 ) ケンジには 【Manager’s Comments】 を埋めるスキル ( 能力 ) がないので、書きたくても書けない


さて、どっちだと思います ?

結論から言うと、その両方、どちらかというと ( 2 ) の要因が大きいと思います。ケンジは(1)の理由を強調していますが、現実には、ケンジにはマネージャーとして適切なコメントを書く能力が、まだ十分に備わっていないのです。

実は、この手のスタッフ、つまりそろそろマネージャーになってもおかしくない年次・経験なのに、マネージャーとしてのスキルが備わっていない ( マネージャーの役割を要求すると、それに応えられない ) 人材が、外資系企業には一定数います。そして、そういうスタッフには、ある共通した特徴があるのです。それは、「日本の大学を出て、外資系企業にプロパーで入社した社員」ということ。これは一体、どういうことなのでしょうか ? 今回から数回にわたり、この謎について迫ってみたいと思います。

「ロールプレイ」のできる人材とは ?

さて、上記のようなスタッフの特徴を私が提示したのには、それなりの裏付けがあります。私はケンジに対するのと同じような申し出を、他のスタッフにもしています。で、私の申し出を受け入れて、自分がマネージャーになったと仮定して、自分の評価をしたスタッフも多数いるのです。そのスタッフに共通する特徴は、以下の2つに分類できます。

( A ) 外国人 ないしは 主に外国で教育を受けた者 ( MBAホルダー含む )

( B ) 日系企業から外資系企業に転職した者

 

上記 ( A ) ( B ) の人材は出来るのに、

( C ) 日本の大学を出て、日本の外資系企業にプロパーで入社した社員

に出来ないのはなぜでしょう ?  それは、「ロールプレイできる能力の有無」ではないかと、私は考えています。

 

「ロールプレイ」というのは、自分がそのロール ( 役割 ) になったと仮定して、その役割を演じることをいいます。自分が上司になったとき、自分がお客様になったときなど、ロールプレイをすることで、違う立場に立つ人の考えを理解し、交渉や仕事の進め方を円滑にする上でのヒントをつかむことができるのです。もちろん、自分が評価する立場として管理職になったときの模擬訓練をすることも含まれます。

 

この「ロールプレイ」、実は意識的かつ継続的に訓練しないと、身につきません。もちろん、人事部が提供するプログラムの中にも、これに似たものはありますが、単発的な研修では限界があるのです。

欧米の高等教育におけるロールプレイ

一般に外資系企業というのは、役割が明確に分かれていて、「エグゼクティブ ( 役員 ) 」「マネージャー」「スタッフ」ごとに、やるべきこと (Job Description) が規定されています。なので、日常の業務においては、やるべきことをやっていれば、それで事足ります。

 

しかし、やるべきことだけをやっていたのでは、ロールプレイの訓練にはなりません。ケンジはスタッフとしては優秀なのですが、マネージャーになるための事前演習としてのロールプレイが足りないのです。よって、いざマネージャーの仕事を振られると、四苦八苦してこなせないのです。

 

では、同じ外資系企業の社員なのに、( A ) の人材ができるのはなぜか ? それは、欧米の教育( 特に、大学や MBA における高等教育 ) において、ロールプレイが非常に重視されているからです。 ( A ) の人材は、ロールプレイに慣れていますから、いきなりマネージャーの役割を求められても、ある程度の準備ができています。だから、自分で自分の評価をすることも、ロールプレイの一環として、それほど抵抗感なくできるのです。


一方、日本国内で高等教育を受けた人は、ロールプレイの経験がほとんどありません。日本の教育体系では、大学や大学院においてさえ、一方的に知識を受けるだけで、自分が当事者として思考する機会を与えられていないのです。例えば、「ディベート (Debate) 」 などはロールプレイの基本となる訓練なのですが、そんなことを実践している大学など皆無です ( 「ディベート」については、『外資系とディベート』の回を参照のこと ) 。そういう教育しか受けていない人材が、役割が明確化された外資に入社したわけですから、ロールプレイ方式の訓練など受ける機会に恵まれなかったわけです。


さてさて、では ( B ) の人材は、いつどこでロールプレイの機会を得たのでしょうか ? 教育という意味では、( C ) と同様に、日本で教育を受けたはずなのに ・・・ これについては、次回お話することにいたしましょう。
( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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