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タカシの外資系物語

「ギブ・アンド・テイク」 の違い ( その 1 )2008.01.22

Every good relationship involves “ Give and Take “ ( いい関係というのは、ギブ・アンド・テイクを伴う ) … みなさんは、この言葉を聞いて、どのように感じますか ?

 

「お互いに持ちつ持たれつというのは、人間関係の基本だよね」「いやいや、見返りを求めちゃダメ ! まずは与えることによって、相手との良好な関係を作るべき」 … ま、いろいろと考え方はあるのでしょう。

 

しかしですね、本心としては、「何も与えることなく受け取りたい ! 」というのも正直な気持ち。特にビジネスにおいては、できるだけ手を抜けるにこしたことはありませんよね ? ( 注 : 私はよく、「タカシさんは熱い人なんでしょ ? いつもフルスイング、120% で生きているんでしょ ? 」などと勘違いされるのですが、実は大そうナマケモノです。なので、できるだけ手を抜いて生きていきたいと思っています。しかし、その一方で、手を抜いた結果としてロクなことにならないことも理解しています。よって、仕方なく、「熱い人」になっているにすぎません …(T-T))

 

今回から 2 回にわたり、外資系企業における「ギブ・アンド・テイク」の考え方についてご説明することにいたしましょう。まずは、私のチームで起こった、ある出来事をご紹介します。

カズヤの言い分

「タカシさぁーーん、ちょっと聞いてくださいよ・・・(T-T)」

 

先日のこと、うちのチームのカズヤが、私のところにやってきました。

 

私 「どうしたの ? 」

カズヤ 「実は、リックのことなんですけど … 」

リック (Richard) というのは、アメリカ本社から 3 ヶ月の期間限定でやってきた同僚のコンサルタントです。リックが日本に派遣された目的は、「アメリカの最新事例を日本に紹介する (Give)」とともに、「日本の事例を勉強して持ち帰る (Take)」ことにあります。つまり、リックは日米双方の事例を「ギブ・アンド・テイク」することをミッションとして、来日したわけです。

 

今回の短期派遣の目的を、リックの上司であるマネージャーから事前に聞いていた私は、わがチームで最も事例に詳しいカズヤとコンビを組ませることにしました。私は 2 人に 1 週間の時間を与えて、「ギブ・アンド・テイク」の成果を中間レポートするように指示していたのです。今日はその2 日目、いったい何があったのでしょうか ?

 

カズヤ 「リックなんですけど、アメリカの最新事例なんて、これっぽっちも教えてくれないんですよ。私が日本の事例を一方的に教えてばっか … こんなの、フェアーじゃないですよ ! 」

 

私 「まぁ、ちょっと落ち着きなよ。まだ 2 日目が始まったばっかじゃん。これからリックの事例紹介が始まるんじゃ …」

カズヤ 「いーや ! 絶対にあいつは何も知らない。この 2 日間だって、99% は僕が話してたんですから … 」

私 「そ、そう … じゃ、俺も同席してみるかな … 」

 

私は、カズヤとリックの打ち合わせに参加してみることにしました。

リックが紹介する 「事例」 とは ?

会議室のホワイトボードには、「Banking Branch Strategy ( 銀行の店舗戦略 )」と書かれていました。どうやらカズヤとリックは、日米の銀行店舗に関する事例を情報交換しているようです。

 

私 「Hi, Rick! May I participate in the meeting, too?」 ( やあ、リック。私も参加させてもらうよ )

リック 「Sure!」 ( いいですよ )

 

銀行の店舗戦略というのは、私のチームの得意分野です。昨年も、大手の ○○ 銀行さんに対して、次世代の店舗戦略立案というプロジェクトをやったばかり。私はカズヤに指示して、そのときの最終報告資料をもとに、リックに説明をしました。所要時間は約 1 時間。

 

私 「 … というのが、日本の銀行における Branch Strategy の最新事例だね。ま、アメリカの銀行は、もっともっと進んでいると思うんだけど … じゃ、次はリックから説明してもらえるかな ? 」

リック 「OK!」

この分野なら、明らかにアメリカの方が進んでいるはずだから、それなりの事例を紹介してもらえるはず。さてさて、どんな話が出てくるかな、っと …

 

リック 「That’s all!」

ん ? ザッツ・オールって聞こえたんだが … ま、まさか …

 

私 「T、That’s・・・ all? ( も、もしかして、もう終わりなの ? )」

リック 「Yes! Any question? ( そうだよ。質問ある ? )」

質問ある、って、あんた … ものの 5 分も話しとらんやろーがーーーーーーー。短すぎて、聞き逃したわーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ、ハァハァハァ・・・(T-T)(T-T)

 

「オ、OK! Let’s take a break!」

焦るな、焦るな … こういうときこそ、落ち着かねばなりません。私はカズヤを別室に呼んで、作戦会議を立てることにしました。

 

カズヤ 「ね ? わかったでしょ。昨日から、あんな感じなんですよ」

私 「そうだな、だいたいの状況は把握できたよ … 」

カズヤ 「向こうから紹介される事例なんて、何が言いたいのかわかんないぐらい、薄っぺらい内容だし … それに比べて、こっちの事例は私やタカシさんが何日も徹夜して作ったものじゃないですか ! あんな事例と引き換えじゃ、もったいないですよ。もう、あいつには何も教えたくないなぁ … 」

私 「まぁ、そう言うなって … 同じ会社の仲間なんだから、さ ? 」

 

… と言いつつも、「ギブ・アンド・テイク」には程遠い状況に、私も困ってしまいました。はてさて、どうすればいいのやら …(T-T)(T-T)(T-T)

リックとの会話から得たヒント

10 分ほどの休憩を終え、私はカズヤと一緒に、会議室に戻りました。「リックが知っている事例はあんなもんじゃないはず … それをナントカ引き出さなきゃ、リックが日本に来た意味がない … 」 

 

私はリックと「腹を割って」話をすることにしました。( ちなみに、「腹を割る」「ぶっちゃける」というのは、英語に訳しにくい言葉の 1 つです。Not hesitate to ~ とか、unreservedly とか言うんでしょうかね。でも、仮に「腹を割って話そうよ ! 」と英語で言えたとしても、「じゃ、お前は今まで腹を割っていなかったのか ? 」と突っ込まれるのがオチなので、アメリカ人との会話の中で使うのに適した言葉ではありません … )

 

私 「リック、日本の事例はどうだった ? 参考になったかな ? 」

リック 「ああ、すごく参考になったよ。初日から、あんなに詳細なケーススタディを話してくれて、本当に感謝してる。ありがとう ! 」

私 「で、さ … リックから話してもらったアメリカの最新事例なんだけど … もうちょっと聞かせてもらえないかな ? 」

リック 「何を ? 」

私 「いや、だから事例を … 」

リック 「事例の中の “何” を知りたいの ? 」

… ははーーん、なるほどねぇ、そういうことなんだぁ …

 

私は、リックとの短い会話の中で、あることに気付きました。それは、日本人とアメリカ人における「ギブ・アンド・テイク」の考え方に関する根本的な違いのようなもの。それは … 詳細は、次回のコラムでお話しましょう。ヒントは、リックの言葉 「初日から、あんなに詳細な … 」 と 「“何” を知りたいの ? 」です。みなさんも、考えてみてください。ではまた来週 !

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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