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タカシの外資系物語

外資の顧客戦略 ( その 1 ) : 差別化は悪くない ?2008.01.08

タカシ、差別化される !

みなさん、明けましておめでとうございます ! 本年も、『タカシの外資系物語』 をよろしくお願いいたします !


「おかしいなぁ … どこに入れたかなぁ … 」

 

先日のこと、銀行のカードを紛失していることに気付きました。「カードを無くすなんて、大騒ぎじゃないの ?」 実はそうでもありません。紛失したカードというのは、10 年ぐらい前に作った、某外資系銀行のもので、残高はほとんどありません。海外出張時に、現地でドルなどの外貨を引き出す目的で作ったものでして、普段はほとんど使っていないのです。

 

「残高がほとんどない … 」とはいえ、確か 2,000~3,000 円程度は残っていたように記憶しています。2,000 円あれば、紙オムツが買える ! 子持ちの今となっては、たとえ少額でも貴重です。ということで、私はカードを再発行してもらうために、通勤途中にある某外資系銀行に立ち寄ったのです。

 

「あのぅ …」

「はい、何でございましょう ? 」

 

カウンターでは、いかにも「外資~ ! 」「私、英語できまっせ~ ! ペラペラでっせ~ ! 」みたいな風情のお姉さんが、満面の笑顔で対応してくれました。

 

私 「カードを紛失したようなんですが … (T-T)」

銀行員のお姉さん 「申し訳ありませんが、お名前と生年月日を記入いただけますでしょうか … 奈良 … タカシさんですね。しばらくお待ちくださいね ( 笑顔 ! )」

なかなか雰囲気いいじゃない ! 日本の銀行ではまず見られない対応です。これぞ、サービス業の鑑 ! よっ ! ○○ 銀行のお姉さんっ !

 

しばらくすると、奥からそのお姉さんが出てきました。ん … ? 何だか、さっきと様子が違います。その表情からは笑顔が消え、全く別人のようです。

 

銀行員のお姉さん 「奈良さん、こちらの申し込み用紙に記入して、郵送していただけますか ? 」

私 「は、はぁ … 再発行は … ? 」

銀行員のお姉さん 「切手は貼らなくてもいいですから。記入方法は、中に書いてありますから。わからないことがあったら、そこに書いてあるコールセンターに電話して聞いてください。じゃっ ! 」

 

… この対応の差はなんじゃーーー ! わしゃ、客やねんどーーーーー(T-T)(T-T)(T-T)

そのお姉さんは、裏で何をしたのか ?

さて、この短時間の間に、一体何が起こったのか ? 実は私、こう見えても銀行が専門の IT コンサルタントですから、このお姉さんが裏で何をしていたかについては、重々理解しています。種を明かすとこういうことです。

 

まず、このお姉さん、私の名前と生年月日を顧客データベースに入力して、現時点の残高を確認したはずです。

 

( お姉さんの独り言 )「げ ! 残高 2,000 円 … ナメとんのか、こいつ …」

 

次に、これまでの取引履歴を確認したと思われます。仮に、現時点の残高が 2,000 円ぽっちだったとしても、過去に数百万円の取引を行っていたかもしれませんから。

 

( お姉さんの独り言 )「これまでの最大の残高が 100,000 円。それも、入出金しか取引実績なし。外貨預金や投資信託を購入した経験もなければ、住宅ローンも借りてない。ダメだ、こりゃ ! 」

 

… というわけで、私は見事 ( ! ) に、「銀行にとって収益をもたらしてくれそうにない客 =VIP 待遇しなくてもいい客」として、このお姉さんに認識されたわけです。お姉さんとしては、私に時間をかけても仕方ないわけですから、カードの紛失届を手渡して、「あとは自分でやっとけ ! 」とばかりの対応をしたわけです。なんだか、このお姉さんが極悪非道のように感じるかもしれませんが、このような対応をすることは、銀行内で規定したマニュアルに書いてあるのです。お姉さんは、マニュアル通りに行動しただけですから、彼女に非はありません。この銀行を問わず、外資系企業にとっては、顧客を差別化するのは当たり前のことなのです。

 

一方、これが日本の銀行だったら、どのような対応になるでしょうか ? 日本の銀行なら、たとえ私に残高が 2,000 円ぽっちしかなかったとしても、ほかの客と同じように対応してくれるはずです。確かに、このお姉さんほどには、満面の笑みで対応してくれないかもしれませんが …

日本における顧客の差別化の成功要因

外資系企業が日本でビジネスを展開する際、「いかにして、顧客を差別化するか ? 」ということが、大きな問題となります。私が上記の例で感じたように、欧米では当たり前の戦略が、日本人には違和感を持ってとらえられるケースが多々あるのです。

 

そもそもヨーロッパでは一般的に、階級社会を前提に社会が成り立っているため、一般大衆自身が、自己が差別化されることに「慣れ」ています。自由の国といわれるアメリカでも同様でして、お金持ちと一般人が分類されて扱われるという現実を、それほど抵抗なく受け入れる文化があります。お金持ちが順番待ちすることなく、赤絨毯を悠々と歩いている一方で、一般大衆が長蛇の列に並ばされているような状況が、そこかしこで起こりえるのです。もちろん、一般大衆にとっては、気分がいいものではありません。しかし、この状況を受け入れているからこそ、「いつかは自分も、あの赤絨毯を歩いてやる ! 」というアメリカン・ドリーム的な発想が成り立つわけで、この状況を否定することは、すなわちアメリカ自体を否定することになりかねないという意識もあるように思います。

 

一方で、日本においては、金持ちだろうが一般大衆であろうが、基本的には平等に扱う文化があります。“超” がつくほどのお金持ちでない限り、例えば、会社勤めをしている家庭ならば、役員だろうがヒラ社員だろうが、まず同じ扱いを受けて生活しているはずです。この点が、日本と欧米の最大の違いです。

 

ビジネスにおいて、欧米では成功しているにもかかわらず、日本に進出して失敗する外資系企業 ( 特に、サービス業 ) の多くは、この違いを理解していないケースが多いように思います。日本では、一般大衆に対してサービス品質を落とすことはご法度です。逆に富裕層 ( お金持ち ) も、露骨に特別扱いされるのを嫌う傾向があります。外資の経営陣にとってみれば、「日本人というのは、なんて扱いにくい人種なんだ … 一体、どうすればいいんだ ! 」ということになるのですが、要は「さりげなく、差別化する」というのが重要なのです。日本人も欧米人と同じ人間ですから、自分が特別扱いされて、気分が悪くなる人はいません。その表現の仕方が重要だということです。

 

企業同士の付き合いにおいて、相手のランクに応じてどのように対応するかという点でも同じことがいえます。日本企業同士の付き合いでは、相手のランクに関係なく、先方の社員に会えば、「お世話になっております … 」と、丁重に挨拶を交わします。一方で、外資の場合は、仮に相手が自社の顧客企業の社員であっても、末端の社員に頭を下げるようことはしません。なぜなら、末端の社員が、ビジネスに結びつくような意思決定に関与することがないからです。

 

確かに、外資の合理的な考え方もわからんでもないですが、なんか殺伐とした寂しい印象を受けるのは私だけではないでしょう。挨拶ぐらい、気持ちよくしようよ、って感じですね。

 

次回のコラムでは、「新規顧客」と「既存顧客」について、外資と日系の考え方の違いをお話しいたしましょう。

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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