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タカシの外資系物語

仕事はホドホド … は悪いのか ?2007.12.04

今のままでいい … A 子の告白

時節柄、ここ数日間ほど、年度末評価のためのスタッフ面談をしています。年度末評価というのは、文字通り、今年の成果を、本人と上司である私が確認しあうというのが大きな目的です。「成果」については、出来たこともさることながら、出来なかったことについて時間をかけることが重要だと思っています。なぜ出来なかったのか、来年以降出来るようになるためにはどのような経験・スキルを身につければいいのか … このあたりが面談の中心となります。


しかしながら、面談では目先の評価だけを話しているのではありません。中長期的な目標 (Long and mid-term career target) について話すというのも、大きな目的の 1 つです。


いわゆるカッコいいキャリアを描けないと、何かカッコ悪い … という風潮については、前回のコラムでも、「キャリアがないとカッコ悪い症候群」ということでお話をしました。要は、カッコいいキャリアを目標にして、それを実現するために無駄のない経験を積もうとするばかりに、地道で基本的な仕事をバカにしていると、結局ろくなキャリアなど実現しないという主旨です。


人間である以上、他人からカッコ良く見られたいと考えるのは自然なことでしょう。私だって、そうです。だから、「キャリアがないとカッコ悪い症候群」を一概に責める気はサラサラないのですが、一方で近道をして成功したとしても、そのキャリアは薄っぺらいものでしかありません。成功の前段階では、着実な基礎固めというものも重要だということでしょう。


さて、実はうちのチームの若い人たちと話をしていて、最近気付くことがあるのです。A 子さんとの面談でも、そのことを思い知らされました。


私 「さて、中長期的なキャリアの目標を聞きたいと思うんだけど … 例えば 5 年後、どういう風になっていたいのかな ? 」


A 子さん 「うーーん、別に … 今のままでいいです」


… ん ? 俺の聞き方が悪かったのかしら。もう 1 回聞いてみよう …


私 「 5 年後、どういう仕事をしたいとか、どんなポストに就いてとか、そういうことを聞いてるんだけど …」


A 子さん 「だから、今のままでいいです」


… ん ? 俺の聞き方が …


A 子さん 「今のままでいることが、そんなに悪いことなんですか ?! 」

ギラギラしなくてはいけないのか ?

A 子さんの言い分はこうです。人の価値観というのは色々あるでしょう、と。出世することや給料が上がることに価値観を見出す人もいれば、今と同じ仕事を無理なくこなし、家庭や趣味に生きることに価値観を求める人もいる。後者で何が悪いのかと …


ま、確かに。A 子さんの言い分も一理あります。 A 子さんがそれでいいなら、私がとやかく言うことではないのかもしれません。


そもそも A 子さんは、かなり優秀なスタッフです。現状は、「シニアスタッフ」という位置づけで、プロジェクトにおいては、 PM ほど大規模なチームを管理するわけではありませんが、小規模なチームを運営することにかけては天下一品のスキルを持っています。だからこそ、その先にある PM ロールにチャレンジしてほしいと思ったんですがね … もっと上を目指してガリガリやれよ、出来るんだから … という気もします。


A 子さんのような志向は、日系企業における 30 歳前後の若者にも共通してあるようです。先日も、クライアント先の課長さんと飲んでいたときのこと。その課長さんが言うには、「どうも最近の若いやつは、なんちゅうか、ギラギラしたもんがないよね。われわれが若いころは、上へ上への上昇志向を持っていたもんだが … こんなんじゃ、世も末じゃ … ( じじいか、この課長 )」


さて、みなさんの周りには、A 子さんのような若者はいませんかね。そして、A 子さんのような考え方は、ここ数年に出てきた新しい傾向なのでしょうか ?

何事も、バランスが重要

A 子さん、および課長の言い分を私なりに解釈すると、キャリアに関する志向は、以下の 3 通りに分類できそうです。


( 1 ) ガリガリ出世タイプ … 仕事内容よりも、とにかく出世することを目標とする。課長の言う「ギラギラしたやつ」というのは、これに該当する。


( 2 ) キラリ ! エキスパートタイプ … 仕事内容を重視し、出世よりも、ある分野で専門家になることを目標とする。


( 3 ) 仕事はホドホド、ワーク & ライフ・バランスタイプ … 仕事と家庭や趣味などとのバランスを重視する。( 1 )( 2 ) と比べると、生活における仕事への比重がそもそも低いため、いきおいモチベーションも低い傾向がある。A 子さんが該当する。


よくよく考えてみると、( 1 )~( 3 ) のどれも、それなりに納得感があります。仕事もしないのに、評価だけを求める人は困ったものですが、( 3 ) はそうではありません。それほど仕事もしない代わりに、評価してくれなくてもいいと割り切っているのですから、同じ役割で使い続ける限りにおいては、こんなに便利な人はいないかもしれません。なぜなら、キャリアアップのための教育や指導をしなくても済むのですから。


前述の課長や私を含め、40 歳以上のバブル以前に就職した人が、一様に ( 3 ) に不満を言う理由は、日本社会の仕組みそのものが、( 1 ) を前提にしていたからではないでしょうか。「仕事をするからには上を目指すのが当たり前。仕事をホドホドにしか考えていないようなやつはダメだ ! 」という画一的な見方です。確かに、アメリカを中心とした市場主義国家の大半は、( 1 ) を前提としてきたように思います。


一方、ワークシェアリング ( 仕事を夫婦やみんなで分け合って、誰も残業をせず、また、誰も失業しないような仕組み ) に積極的なオランダなどでは、( 3 ) が主流の考えなのかもしれません。 
  
欧米企業では、このような価値観の違いに対応するように、人事制度の仕組みそのものを見直してきました。20 年前には ( 1 ) 一辺倒だったキャリアについて、( 2 ) のような人材を認めることにも積極的です。私の会社でも、経営層になるには ( 1 ) のようなメンタリティが必要ですが、( 2 ) のような志向の人には「SME(Subject Matter Expertise)」をいう役割を与えて、部長並みの待遇を保証しています。もちろん、SME は特定分野での卓越したスキルや経験が求められることは言うまでもありませんが。


また最近、( 3 ) のような志向の人の存在意義を認め、その人たちのライフスタイルをサポートするような策も打ち出しています。いわゆる職種 (Job title) に差をつけるもので、見た目は日系企業の総合職・一般職と似ています。しかし、多くの日系企業のそれと違うのは、「社員自らの意思で、出世が限定的な一般職を選ぶことができる」という点でしょう。一般職の人は、高い要求がされない代わりに、出世もしません。でも、それは自分で選んだことなので、納得済というわけです。


社員の意欲など全く関係なく、単に高卒または短大卒か、大卒か、というだけで職種を設定していた多くの日系企業とは、一味違うわけです。


個人的には、私も ( 1 ) が前提のような考え方で、これまでの人生を送ってきたような気がします。しかし、結婚して、子供が生まれてみると、( 1 ) だけが人間の価値を決めるものでもないというのも、わかるようになってきました。問題は、その多様な考えを受け入れる仕組みを、社会や企業にいかにして根付かせることができるか、ということなのかもしれません。 
  
A 子さんの面談が終了し、次は B 男くんです。


B 男 「うがぁー、タカシさーーん。なんでもいいから、出世させてください。給料、給料、ハァハァハァ …」( なんか、気持ち悪いが … )


ま、こんなやつもいるわけで …。会社というのは、ほどよいバランスで成り立っているのかもしれませんね。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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