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タカシの外資系物語

タカシが考えるメンターの要件とは ? ( その 1 )2007.10.02

メンターの重要性

みなさんは、ビジネス社会で成功する上で、最も重要なことは何だと思いますか ?


「まずは能力 ( スキル ) がなくちゃ、話にならないよね ! 」「結局、学歴に尽きるよ ! 」、その他「リーダーシップ」「やる気」「先見性」 … 数え上げればキリがありません。もしかしたら、「運」なんていうのも、大きな要素かもしれません。しかしこれらの要素、よくよく見てみると、全てその人個人の問題 ( 要素 ) であることに気づきます。本当に、個人の要素さえ満たしていれば、ビジネス社会で成功することは可能なのでしょうか ?


このような話を外国人の同僚としていると、上記に加え、もう 1 つ重要な要素を挙げてきます。それは、「メンター ( 指導者 ) 」です。「個人としての要素は当然必要だけれど、それを表に引き出すためには、よきメンターの存在が不可欠だ」と言うのです。自分の長所を引き出してくれたり、決断をすべきかどうか悩んでいるときに、ポンっと背中を押してくれたり … といった存在でしょうか。


ここで興味深いのは、「メンター」という回答は、日本人からはなかなか出てこないということです。一般的には、外国人 ( 特に、アメリカ人 ) は個人主義で独立心が強いので、他人には頼らないように思われがちですが、実際には違います。彼らは、他人、特に自分にとって指導的立場にある人に対して自分をさらけ出して、指導を仰ごうとします。例えば、現在私は数名の外国人部下を管理する立場にあるのですが、彼らからよく 「Would you please have the time of interview for my career in the future ? ( 今後のキャリアアップのために、面談の時間をいただけませんか ? )」 といったリクエストを受けることが頻繁にあります。


一方、日本人の部下からは、そのようなリクエストはほとんどありません。これは、私が指導者として認められていないからというわけではなく、日本人の一般的な傾向だと思います。多くの日本人 ( 特に、日系企業に勤める日本人 ) は、自分のキャリアアップなどに関する相談を、上司などにすることはほとんどないように思います。また上司の方も、目の前の仕事に直接関係ない話について、部下とやり取りをすることは少ないのではないでしょうかね。

メンターとコーチの違い

さて、そもそも「メンター (mentor) 」とは何か ? 辞書を引くと、「指導者・助言者・相談相手」と出ています。「指導者」というくらいですから、課題に対する自分なりの回答を持っていて、相手を導く力が必要となります。よって、少なくとも相談をしている相手 (menteeといいます ) 以上の経験が必要となるため、職場の上司や先輩などが該当するケースが多いと思います。


一方で、最近流行の「コーチング」における「コーチ (coach) 」との違いは何でしょうか。基本的に、コーチというのは課題解決のサポートはしますが、課題に対する回答を与えたりはしないことになっています。答えは全て、コーチングを受ける側 (coachee といいます ) が持っているという前提で話が進むのです。


以前このコラムでも紹介したように、実は私、外部の専門機関によるコーチングを受けたことがあります (No.311 & 312 『コーチングを受けよう ! 』参照のこと )。そのときにも思ったことなのですが、コーチングというのは、自分なりの目標を持っている人が、その目標を見失わないように、ペースメーカー的に活用する代物であって、そこから回答を得ようとしてはいけないようです。


つまり、「自分の目標は A である。それを達成するための伴走者が欲しい」というときに機能するのがコーチングです。「自分の目標が、A か B かどちらかわからない。悩んでいる … 」という場合には、コーチングよりは、むしろメンターから具体的な意見や助言をもらった方がいいということになります。


もちろん、メンターの意見や助言が絶対というわけではないので、その通りにする必要はありません。しかし私の経験に照らし合わせてみると、信頼できるメンターの助言には、これまで全て従ってきたように思います。銀行員時代においては、「この銀行はもうすぐ破綻するから、すぐに転職しなさい ! 」という H 部長の助言を聞き入れ、本当に転職しました (No.196 - 198 『 H 部長との思い出』参照のこと )。


また、前職の外資コンサル会社では、私が短期間で昇進したことに対する社内の不平不満を鎮めるため、「とりあえず、降格してくれ。近いうちに、もっと昇進させてやっから ! 」という H パートナーの申し入れも受け入れました (No.253 - 255 『降格人事ヲ命ズ』参照のこと )。 H 部長も H パートナーも、私にとってはかけがえのないメンターだったわけですが、どうして私は彼らの助言を受け入れたのでしょうか ? その理由を、今の会社における私のメンター、M 氏 ( 役員 ) とのある出来事をお話しすることで、ご説明したいと思います。

メンター M 氏との、ある出来事

昨年春ごろの話、私はある外資系ソフトウェア会社から、転職のオファーを受けていました。そのオファーとは、「金融コンサルティング部長で、給料は現状の 1.2 倍」というもの。破格のオファーというわけではありませんでしたが、当時の私にとっては、それなりに魅力的なものでした。


何が魅力的だったのか ? それは、金融コンサルティング部長として、あるセクションを任せてもらえるということ。当時の私は、「マネージャー」という肩書きはあったものの、自分で営業戦略を立てて、スタッフを使うという裁量は認められていませんでした。


かなり悩んだ挙句、私はこの転職話に乗ることにしました。そして、直属の上司であった A 部長に話をしました。当初、 A 部長は強く慰留していたのですが、最終的には「仕方ないな … 」と言って認めてくれました。


「よし、俺もとうとう、外資 3 社目か … 」 私は、直属の上司ではありませんでしたが、お世話になっていた M 氏 ( 当時は部長格だったので、A 部長と同じランク ) に、一言話しておくことにしました。


私 「M さん、ちょっと話が … 」


M 氏 「何 ? 」


私 「私このたび、転職することにしました … 」


M 氏 「あ、そう。そりゃ、ご苦労だったね」


… なんちゅう淡白な反応。ちょっとぐらい、引き止めるとか、いなくなったら寂しいわとか、ないんかい ! (T-T)


それから数日後のこと。転職先企業との契約書へのサインを明日に控えた私は、徐々に、自分の仕事の後片付けを始めていました。と、M 氏から突然の電話。「ちょっと、飲みに行くか ? 」 私は、「何を今さら … 」と思ったのですが、「ま、今後もどこかで縁があるかもしれないし … 」ということで、しぶしぶ指定の居酒屋へ駆けつけました。


M 氏 「辞めるんだって ? 」


私 「は、はぁ … ( こないだ、言ったろうが ! ) 」


M 氏 「転職先は、ソフトウェア会社らしいな。営業のノルマ、大変だぞ … 」


私 「そうすね … ( ま、それは事実なんだが … )」


M 氏 「ところで、話変わるんだけど … 」


私 「は、はぁ … ( えーーっ ! もう終わりかい ! )」


M 氏 「俺さ、今度昇進することになったから。役員 ! 」


私 「は、はぁ … ( 自慢かい ! )」


M 氏 「で、俺のチームの面倒を見るやつがいないから、お前やれ。来週、人事異動出すから … 」


私 「は、はぁ …… って、何ですとーーーーーーーーーーーーっ ! 私は辞めると言うとるやないですかーーーーーーーーーーー(T-T)(T-T)(T-T)」

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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