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タカシの外資系物語

A子説得作戦 ( その 1 ) … MBA ホルダーは戦略立案だけやりたい ?2007.09.04

A 子の言い分

「私はこんな仕事がしたくて、この会社に入ったんじゃありませんっ ! これまでの経験は、全て無駄だったと思います ! 」


「あ、あのなぁ … ( 「全て無駄」と言い切ったな、こいつ … ) 」


私は今、チームメンバーの A 子さんと面談をしています。かなり緊迫した状況。そもそも、このような事態の発端は、昨日 A 子さんから届いたメールでした。


【 A 子さんからのメール】 

タカシさん 
今後のキャリアに関してご相談があるのですが、お時間いただけますか ? A 子


【これを見た私の第一印象】 

げげっ ! こりゃ参ったな … ( 汗っ ! )


本人の話も聞かずに何を困っているのか … と思われるかもしれませんが、「今後のキャリアに関してご相談」と言われた段階で、だいたいの察しはつきます。私の経験上、部下から「キャリアの相談」と言われた場合、その 99% は「辞めたい・転職するぞ」という話です。「相談」する気なんてありゃしない …


この手の話は先延ばしするとロクなことにならないので、私は早速、面談の機会を設けることにしました。で、いきなり冒頭の会話となったわけです。


A 子さん 「私は大学を卒業して、外資系金融機関に勤めた後、○○大学のビジネススクールでMBA を取得しました」


私 「ふむふむ … ( んなことぐらい、知っとるわい ) 」


A 子さん 「そして、この会社を選んだわけですが、私がこの会社に入った理由は、経営戦略を立案するようなコンサルティングがしたいからであって、末端の業務プロセスを改善していくようなコンサルではありません … 」


私 「で ? 」


A 子さん 「で ? ここまでお話して、私の言いたいことがわかりませんか ? こんな無駄なことに時間を浪費しているぐらいなら、転職した方がマシです ! 」

A 子の言い分を分析

「じゃ、辞めれば ? 」 と言いたいところですが、このように「熱く」なってしまっている相手には、冷静に話をしなければ、単なるケンカで終わってしまいかねません。客観的に、 A 子さんの言い分を分析してみましょう。


A 子さんは、「経営戦略を立案するようなコンサルティングがしたい」と言っています。わが社はコンサルティング・ファームである以上、経営戦略立案のお手伝いもしています。しかし実際問題として、システムの開発につながるような、IT コンサルティングや業務プロセスコンサルティングのような分野の仕事の方が、全体から見た割合は多くなっています。


もう少しわかりやすくお話しましょう。ある企業が、「富裕層 ( お金持ち ) 向けの営業体制を強化する」という経営方針 ( 戦略 ) を立てたとします。今までと同じ仕組みのままでは、この戦略を実現することは難しいので、「富裕層向けのマーケティングシステムを作る」とか、「富裕層営業専門の部隊を作って、その営業プロセスを検討する」という、具体策を検討します。これらの内容は、コンサルティングの種類として、以下のように分類できます。


( 1 ) 「富裕層向けの営業体制を強化する」 … 経営戦略コンサルティング 
( 2 ) 「富裕層向けのマーケティングシステムを作る」 … IT コンサルティング 
( 3 ) 「富裕層専門の部隊を作って、プロセスを作る」 … 業務プロセスコンサルティング


A 子さんの言い分は、「( 2 )( 3 ) はやりたくない。私は MBA ホルダーなんだから、( 1 ) をやりたい」ということになります。


賢明な読者のみなさんは、すでにおわかりかと思いますが、これら ( 1 ) ~ ( 3 ) には、次に挙げるような相関関係があります。


● ( 1 ) だけで ( 2 )( 3 ) が存在しない、または、( 2 )( 3 ) だけで ( 1 ) が存在しないということは考えにくい。つまり、( 1 )( 2 )( 3 ) の全てが揃って、はじめて意味がある。


● 1 つの ( 1 ) に対して、複数の ( 2 )( 3 ) が存在する。つまり全体で見ると、( 1 ) に比べて、( 2 )( 3 ) の割合が圧倒的に多い。

 

以上のことからわかるように、コンサルティング・ファームの業務範囲が ( 1 ) ~( 3 ) だとすると、( 2 )( 3 ) の割合が多くなるのは、至極当然のことなのです。もちろん、コンサル・ファームの中には、それぞれの得意分野がありますので、( 1 ) が得意なファーム、( 2 ) が得意なファーム … とあるわけですが、( 1 ) しかできないファーム、( 2 ) しかできないファーム … というのは、お客さんから相手にされません。なぜなら、( 1 ) をベースにして ( 2 )を決めたり、( 3 ) の落としどころを見据えながら ( 1 ) を考えたり … という具合に、そのどれもが密接な関係を持っているからです。

説得開始

私 「… という仕組みになってるんだけど、わかるかな ? つまり、戦略立案がやりたいからといって、そればかりやってるわけにはいかないんだけど、ね」


私は努めて冷静な口ぶりで、以上のことを A 子さんに説明してみました。


A 子さん 「そんなことぐらい、わかってます ! でも、私は戦略コンサルのエキスパートになりたくて、そのために MBA まで取ったのに、IT や業務プロセスばかりでは、無駄なことをやっているように思えてならないんです … 」


私 「無駄 ? そうかな … どうして無駄だと言えるの ? 」


A 子さん 「だって、1 つ 1 つのシステムや業務プロセスって、戦略実現の 1 要素に過ぎないんですから、そんな末端のことばかりやっていても、戦略に行き着かないじゃないですか ? 」


私 「( アホか、君は … )」


A 子さん 「えっ、今なんて ? アホか ? 」


私 「いや、何も … 」


A 子さん 「とにかく、無駄なんです ! 」


私 「それは違うよ。どんな末端の事象だって、経営戦略立案において、無駄にはならない。どんなにくだらないと思える仕事だって、無駄なものは 1 つもないんだよ」


A 子さん 「どうしてそんなことが言えるんですか ? なんか、理念的なこと言って、私をごまかそうとしてるんじゃないでしょうね ? 」


私 「アホか ! 」


無駄なものは 1 つもない … その理由は、次回お話するとしましょう。 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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