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タカシの外資系物語

「自分探しの旅」 って、何 ?2007.07.03

やりたい事がわからない …

先日のこと、 B くんから次のような相談を受けました。 


B くん 「タ、タカシさん … 実は、自分のやりたい事がわからないんです … (T-T)」 


私 「やりたい事がわからない … って、言われてもねぇ … IT コンサルタントになりたいから、うちの会社に転職したんでしょ ? で、それなりに難関の中途採用をクリアしたんでしょ ? それで、わからない … はないんじゃない ? 」 


B くん 「はぁ … それはそうなんですが … 」 


実は私、この手の相談には非常に厳しく接するようにしています。なぜか ? それは、そもそもやりたいことがわからない人には、「こうすればいい」といったコメントが、できないからです。例えば、「提案書がうまくまとまらない」「クライアントとのセッションがうまく仕切れない … 」という悩みに対しては、私の経験を踏まえたコメントもできるでしょう。英語ができないなら、( それなりに ) うまくなる方法も伝授できるでしょう。しかし、何をしたいのかわからん人に対して、コメントなどしようがありません。 


B くん 「タカシさんは、これまでのキャリアの中で、自分のやりたい事がわからなくなった経験はないんですか ? 」 


にゃ、にゃにぃ ? 新卒で入った銀行員時代、外資コンサルに転職して IT コンサルとして駆け出しだった時代、前の会社を辞めようと思ったとき … うーーむ、どの時代も自分が半人前だと嘆くことはあっても、やりたい事がわからん、というのはなかったな … 


私 「ないね。だって、自分のやりたい事って、結局は、自分が関わっている仕事をいかにうまくやり遂げるか、ってことじゃないの ? または、その仕事を通じて、いかに自分にスキルをつけるか、ってことじゃないの ? 普通にやってりゃ、そんなことに悩んでいるヒマなんてねーだろ ! ( 怒 ! )」 


B くん 「やっぱりね … 結局タカシさんだって、やりたい事が見つからずに、自分がやってきた事を肯定してるだけじゃないですか ! ( 怒 ! )」 


私 「は、はぁ ? 」( 逆切れだよ、コイツ … 困ったにゃ、こりゃ … こっちが泣きたいよ … (T-T)) 

目的のない 『自分探しの旅』

さて、以上の議論について、みなさんはどのようにお考えになりますか ? 


文字にしてみて気付いたのですが、私も相談を受ける態度ではないですね。そもそも、 B くんの相談なんてありえないとばかりに否定モードから入っているし、これでは相談のしようもありません ( ちょっと反省 … )。 


一方、 B くんはどうでしょうか ? 「自分のやりたい事がわからない」というのも、相談する側としてはイマイチな気がします。建設的な意見も出しようがないってもんです。 


最近、自分の部下やそれ以外の若いスタッフ ( 20 代 ) から、このような質問 ( というか、悩み ) をしばしば受けるようになりました。で、彼らの口から次に出るのは何か ? それは、「やりたいことを探すための 『自分探しの旅』 をしたい」です。会社をしばらく休職、または退職して、自分のやりたい事を探しにいこうというものです。 


『自分探しの旅』というのは新しい概念ではなく、私が若い頃にも存在しました。そういえば、大学の同級生の一人も、自分探しのために大学を 1 年留年して世界各国を放浪していた輩がいます。しかし、学生時代ならいざ知らず、就職して転職も経験し、社会人経験がそろそろ 10 年にもなろうという人間が、今さら『自分探し』というのは、どうでしょう。これは、ここ 1 年ほどの間に顕著に現れた傾向のように思います。 


1 つには、サッカーの中田選手がワールドカップ後に電撃引退し、その後『自分探し』と言って世界中を回ったことに感化された部分もあるのかもしれません。しかし、中田選手の『自分探し』と、B くんの『自分探し』では、決定的に違う部分があります。中田選手のそれは、サッカー選手として1 つの偉業を成し遂げた後に、「次に何をすべきか ? 」を考えたものです。では、 B くんの『自分探し』とは、一体何なのでしょうか ? 

仕事の中で、『自分』を探す

これは私の意見ですが、 B くんの『自分探し』とは、前向きに「自分がしたい何か」を探すというよりもむしろ、まず「自分がしている仕事を否定している」にすぎないように思います。自分がやっている事、組織の中での位置づけや顧客との関係がうまくいかない事の言い訳として、「今やっている仕事がうまくいかないのは、自分のやりたい事ではないからだ。自分のやりたい事なら、もっとうまくいくはずだ … 」と、無理に理由付けているように思います。 


そりゃ、理想的には、自分のやりたい何かが明確にあって、それに向かって邁進している姿はカッコよく感じますよね。でも、神の啓示を受けでもしたならいざ知らず、自分のやりたい事がそもそも設定されている人など、この世にいないのではないでしょうか。 


では、自分のやりたいことをどうやって探すのか ? それは、今やっていること ( ex.. 仕事 ) の中から探すほかないように思うのです。今やっている仕事が、ある企業の情報化を手助けする仕事なら、いかに安く ・ 早く効果を上げてもらうか、そしてその効果を企業のお客様に還元して、社会の役に立つか … それが「自分のやりたいこと」のはずです。そういうことを積み重ねていけば、自分に欠けている部分も見えてくるわけで、そのように自分に足りない部分を認識して、必要なスキルを身につけることこそが『自分探しの旅』に他ならないように思うのです。 


一般に、外資系企業では、長期的な視点での目標、例えば 10年後に自分はどのようになっていたいか ? といった観点で、社員に目標設定をするように促します。 (No. 351 『キャリアプランにおける “ 10 年後の自分 ”』 参照)しかし、こんな大目標がササッと書けるような日本人は少ないのが現実です。なぜなら、多くの日本人は、常に大目標を持って生きていくというスタイルに慣れていないからです。 


例えば、私もそう。私の目標シートの「 Career aspirations or long term goals ( キャリア上の志望 または 長期的なゴール ) 」 の欄には、「 within 3 years - to be a partner ( 3 年以内にパートナー = 役員 になる ) 」と書いてあります。「結局、出世かよ … 」 確かに、出世が目標になっていることを否定するわけではありませんが、単にそれだけではないのです。パートナー ( 役員 ) になれば、お客様ともより広く深い接点で仕事ができるからこそ、パートナーになりたいのです。パートナーになるために自分に欠けているのは、より豊富な経験と複雑なプロジェクトをマネージするスキルだとわかっているからこそ、日夜経験を積んでいるのです。これって、結局、仕事を通して、自分探しをしているのと同じなのではないでしょうか。 


Bくんと同様に、自分のやりたい事がわからずに苦闘されている方、今一度、自分の仕事を見つめ直してみてはいかがでしょうか。今の仕事の中にこそ、探すべき「自分」と「やりたい事」が転がっているような気がするのですが、いかがでしょうかね。 


翌日、再度 B くんが私のところにツカツカとやってきて、次のように言いました。 


B くん 「タカシさん、いろいろ考えたんですが、 1 年以内を目処に、やっぱり退職しようと思います。でも、あと 1年はやってみます。自分のやりたいことがわからずに辞めるのって癪だし、それに … 」 


私 「それに ? 」 


B くん 「今お世話になっているクライアントの成功を少しでも見届けたいんで … 」 


やれやれ、ひとまずホッ ! 


1 年後、「『自分探しの旅』 ? そんなこと言ってましたっけ ? それよりタカシさん、忙しいんですから邪魔しないでくださいよ ! 」と言っている B くんに期待したいと思います。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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