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タカシの外資系物語

フォーマットに気をつけろ !2007.06.05

例のフォーマット

「よし、これで材料は揃ったな … じゃ、例のフォーマットに埋めといてよ、よろしく ! 」

 


フーーッ ! 私は今、部門の若手連中と一緒にブレーン・ストーミングをしていました。え ? 何について話したんだって ? ズバリ、「わが社のあるべき営業体制」について。近いうちに役員会議で話題になるらしく、そのときのネタとして、ボスの Thomas からスタッフの意見をまとめるよう指示されていたのです。


わが社では、このような議論をする際のまとめ方のパターンがだいたい決まっており、話した内容は以下のような「フォーマット」にまとめることになっています。


( 1 ) TO-BE ( あるべき姿 ) … 理想的な状態  
→ ( 例 ) チーム一丸となって、顧客に対応する


( 2 ) AS-IS ( 現状 ) 
→ ( 例 ) 各担当がバラバラにアプローチしている


( 3 ) GAP … TO-BE と AS-IS の差、つまりこの GAP が埋まればいいということになる  
→( 例 ) 担当毎の役割分担が明確でない


( 4 ) SOLUTION … GAPを埋めるための解決策  
→ ( 例 ) 提案毎に、各部門の担当者を必ず明記し、役割を明確化した上で提案書作成に入る


( 5 ) EFFECT … 期待効果  
→ ( 例 ) 準備作業の重複がなくなり、提案作業が早くなる


( 6 ) RESOURCE/RISK … SOLUTIONを実施する上で必要な人員や実施上の留意点 
→ ( 例 ) 担当者が関連提案すべてに関与する時間がない


話をより具体化しなければならないときは、上記の項目に追加して、 SOLUTION 実施のスケジュールや担当者も割り振るのですが、今回はそこまでやらなくていいでしょう。


さて、今回のような指定のフォーマットにまとめるという作業、外資系企業では標準的な仕事のやり方として定着しています。あらかじめ議論すべき内容をフォーマットとして指定しておけば、論点がブレることもありませんし、後からまとめるのにも便利です。また、このフォーマット、実はパワーポイントのテンプレートとして準備されています。私は冒頭で、「例のフォーマット … 」と言いましたが、わが社のスタッフは、「例のフォーマット」と言われれば、何を指しているかわかっています。逆に言うと、社員全員が同じことを思い浮かべるくらいにまで、フォーマットが標準化されているのですから、議論そのものをスムースに進めることができる素地が出来上がっているというわけです。

新項目の追加

「 ところで、タカシさん … 」 「ん ? 」

 


セイジが、議論した内容をフォーマットに記入しながら、私に話しかけてきました。


セイジ 「前から気になってたんですけど、この『 Gap 』って、いまいちパッとしないと思いませんか ? 」


私 「どういう点が ? 」


セイジ 「あのですね、『 Gap 』というからには、それなりの証拠というか、エピソードというか、その『 Gap 』が確かに存在していることを客観的に説明する必要があると思うんですよ。そうしないと、声の大きい人が個人的な思い込みで『 Gap 』だと言う恐れが出てくる … 」


私 「なるほど … 」


セイジ 「例えば、『担当毎の役割分担が明確でない』というだけでなく、『○○案件において、複数の担当者が提案書の同じパートを重複して作成していた。よって、担当毎の役割分担が明確でない』 と言わないと、何でもかんでも、あることないこと言ったもん勝ちになっちゃうと思うんですが … 」


私 「 ( こいつ、なかなかいいこと言うじゃん … ) OK! じゃ、 GAP のあとに、GROUNDS/FACTS ( 根拠・事実 ) という item ( 項目 ) を追加しといてよ ! 」


セイジ 「はい、わかりました ! 」


セイジは自分の意見が認められたことに気をよくしたのか、みるみるうちに新項目が追加されたフォーマットにまとめていました。確かに、標準化も重要ですが、よりよくするための「改善」も重要です。どんなに普遍的なことも、環境の変化に応じて陳腐化してくる部分があります。その都度、フォーマットを見直すという視点が重要なのかもしれません。

フォーマットを変えるな

さて、私は完成したフォーマットを持って、 Thomas のところに行きました。それなりの自信作です。

 


私 「 Thomas、this is the sheet you need  ( トーマス、例のフォーマットだよ ) 」


Thomas 「 Do over again! ( やり直し ) 」


私 「 ( は、早っ ! なんでやねん ! 中身、全然見とらんやんけーーー(T-T) ) え ? ど、どうして ? 」


Thomas 「フォーマットの項目が違う。勝手に変えるな ! 」


私 「あ、いや、でもね。この方が、より議論の内容がわかりやすいし、 SOLUTION も検討しやすいかなーー、なーーんて思ったんで … 」


Thomas 「ダメ ! お前はフォーマットの意味がわかっとるのか ? 作業の途中で気付いたからって、お前のところだけで勝手に変えてどうする ! そういう local rule を作っちゃいかん。変えるなら、みんなが議論をする前に、全社的に変えてみろ。それができるんなら、このフォーマットでも見てやる」


全社的に変えろだとぉ … 無理に決まっとるやんけーーー (T-T)。 私は泣く泣く、セイジくんが作ってくれたフォーマットを持ち帰って、修正することにしました。修正といっても、追加した GROUNDS/FACTS ( 根拠・事実 ) の項目を消去するだけなんですけど … トホホ …


外資系企業に勤めていると、会社のマネジメントが異常なまでに「標準化」にこだわっていることに気付きます。それはそれで、痛いほどわかります。異国の地にやってきて、本国の考えを浸透させるためには、徹底した標準化政策を取ることで、思考プロセスを同じように誘導する必要があるからです。しかし、それはわかった上で、もう少し、現場における日々の改善を認めてもいいのではないでしょうか。欧米のスタンダードが未来永劫続くわけではありません。また、トヨタがなぜ、あれほどまでに強いのかを考えてみてもわかります。欧米の標準をベースに、日本的な改善を加えることで、より強固な企業体へと変革できるに違いないのです。


さて、今度のマネージャーミーティングでは、「例のフォーマット」に項目を追加することを提案したいと思います。それまでに、再度セイジくんと、理論武装をしておかねばなりません。タカシとセイジの戦いは、これからもまだまだ続きますからね !

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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