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タカシの外資系物語

外資系への就職、どっちがお得 ? ( その 1 ) 新卒 or 中途2007.05.08

「外資系企業で働くことを目標にしているのですが、新卒か中途か、どちらがいいのでしょうか ? 」「日系企業から転職する場合には、大手企業からの方が有利でしょうか、それともベンチャーの方がいいのでしょうか ? 」 …


皆さんから頂くお便りの中で、一番多いのが上記のような質問です。そこで、今回から 2 回にわたり、これらのご質問に私なりの回答をしたいと思います。今回は、「新卒 or 中途」編 ( その 1 ) です。

「うどんこ」はあるか ?

結論から言うと、私は「中途の方が有利」だと思っています。外資系企業の経営者というのは、短期間 ( 四半期 = 3 ヶ月ごと ) の収益で評価されるのが一般的ですから、数年かけて、じっくりと人材育成しようなどという気がハナからありません。なので、社内の仕組み自体が、中途採用の即戦力人材がいかに実力を発揮できるか、ということを一番に考えて設計されています。

 


皆さんも小さい頃に鬼ごっこをして遊んだことがあるでしょう。その際、捕まっても鬼にならなくても済む「特権」を持った子がいたと思います。私の田舎では、それを「うどんこ」と呼んでいました ( 一般には、「みそっかす」「おまめ」などと呼ぶようです )。私には 4 つ上の姉がおりまして、姉はよく私の子守をさせられていました。姉としては同世代の友達と鬼ごっこをしたいわけですが、私の面倒を見ないとピーピー泣くので、仕方なく「うどんこ」として仲間に入れてくれました。


冷静に考えてみると、鬼ごっこの醍醐味をいうのは、捕まったら鬼になるから必死に逃げ回るところにあるわけで、捕まっても鬼にならない「うどんこ」というのは、そりゃもう空しい存在です。しかし当時の私は、少し世代が上の子供たちに混ざることで、何だか背伸びした気分になって、優越感を味わっていたように思います。もちろん、「うどんこ」として参加することを通して、上の世代のルールを知り、経験するというような教育的な側面も大きかったように思います。


さて、話を戻しましょう。外資系企業には、「うどんこ」のような仕組みが一切ありません。一緒に仕事をする以上は、年齢や経験は一切関係なく、全ての人が一人前として扱われます。一方、日系企業の場合には、入社 3 年目ぐらいまでは、はっきり言って「うどんこ」扱いです。収益目標や責任も持たされない代わりに、評価の対象にもなりえません。なぜなら、あくまでも「うどんこ」として教育される期間にすぎないからです。


私が「中途の方が有利」だと言っている大きな理由は、この「うどんこ」期間の有無にあります。どんなに潜在能力が高くて優秀な人材であっても、新卒時において業務経験はないわけで、一定期間は「うどんこ」として経験を積む方がいいわけです。なので、私の経験からしても、「新卒→外資入社→外資で成功」というパターンよりも、「新卒→日系入社→日系で実績を積む→外資入社→外資で成功」というパターンの方がはるかに多く、リスクも少ないように感じています。


( 以上の内容は、拙著 『外資流!「タカシの外資系物語」』 ( あさ出版 ) のオリジナル書下ろし部分にも詳しく述べていますので、機会があれば目を通していただければと思います )

熾烈なプロパー競争に打ち勝て !

「でも、多くの外資系企業が新卒採用してるよね ? あれって一体 … 」 その通り。多くの外資系企業では、中途採用を中心としながらも、新卒採用も実施しています。これはどういう意図によるものなのでしょうか ?


1 つには、純粋に、「中途だけでは戦力が賄いきれないこと」が挙げられます。中途の即戦力の人数は限られているわけで、それを同業他社と取り合っているだけでは、いずれ破綻します。日本市場での業容拡大を念頭に置くならば、多少時間はかかっても、自社で人材育成する必要があるわけです。また、中途採用というのは、即戦力である分、新卒採用に比べて、べらぼうにコストがかかります。中途採用時に、エージェントやヘッドハンターに支払うコストだけでも、数百万に及ぶケースはざらです。となると、その中途採用コストの一部を新人の教育コストに振り向けるという考えも出てくるわけです。


もちろん多くの外資系企業では、新卒採用の場合にも、上記で述べたような手厚い「うどんこ」制度があるわけではありませんので、必要最小限の研修を経た以降は、基本的に一人前の人材としてやっていかなければなりません。で、このときの競争が極めて熾烈なのです。中途入社の場合は、自分の強みを会社が評価してくれた結果として採用されているので、その強みを活かして、実績を積んでアピールすれば、それなりの評価は得られやすくなっています。


一方、外資に新卒入社したプロパー社員というのは、横一線でスタートするわけですから、みんなと同じことをしていたのでは一切評価されません。私の感覚では、仮に新卒で外資に 100 名が入社したとして、 10 年後に生き残っているのが 10 名、成功 ( 出世 ) しているのは 1、2 名ではないかと思います。現に、私と同ランクの N は、現在 32 歳のプロパー入社です。私は 38 歳なので、なんと私より 6 歳も若いという、何とも羨ましい限りなのですが、彼が新卒入社したときの同期 15 名のうち、すでに 12 名がドロップアウトし、退職しているとのこと。本当に厳しい世界です …

管理系社員は新卒が適任 ?

外資が新卒を採用する、もう 1 つの理由は、「管理系人材を育成すること」ではないかと思います。一般的に外資系企業というのは、支社や現場に、権限はほとんどありません。すべての仕事は本社が作ったルールのもと動いており、そのルールをグローバルで標準化しているところが強みなのです。そのルールを維持、運営していくためには、本社の意向をローカル支社に伝える管理系の人材が必要になってくるというわけです。


管理系人材の主な仕事は、経理や契約処理、人事関連の仕事そのものではなくて、それらの仕事がルールにのっとって行われているかどうかをチェックすることにあります。最近でこそ、日本でも「コンプライアンス ( 法令順守 ) 」という言葉が一般的になってきましたが、外資では何十年も前から当たり前のこととして存在していました。


私も外資に転職した当初は、「どうして、ルールを守っていることをチェックする人が必要なんだろう。そんな暇があれば、営業の 1 つでもやればいいのに … 」と思っていました。無駄に思えて仕方なかったのです。しかし、エンロンの粉飾問題や日系大手の様々な不祥事を目の当たりにして、コンプライアンスの大切さというのを身にしみて感じました。売り上げが多少落ちたところで会社はすぐには潰れませんが、コンプライアンス違反は会社の倒産に直結するケースもあるわけですからね。


管理系人材の育成は、相手が若い人であっても、教育次第で何とかなります。必要な素養としては、「( ずば抜けた ) 英語力」と、どんな小さな不正をも許さない「厳格性」でしょう。外資系の管理に「例外」はまずないので、応用力はそれほど問われません。しかし、不正を一切許さない、というのは、言うは易しでして、それを貫き通すというのはかなり難しい。日系企業における柔軟な ( 悪く言うと、優柔不断な ) 管理体系に触れたことのある人は、適さない仕事なのです。よって、外資は管理系人材については、新卒社員を登用するケースが多いように思います。


さて、次回は「外資に転職するなら、日系大手からの転職か、ベンチャーからの転職か ? 」についてお話したいと思います。

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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