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タカシの外資系物語

“ えらいさん ” に呼び出された理由 ( その 2 )2007.03.06

ジョーンズの言い分

( 前回の続き ) ジョーンズ 「私は同僚のマネージャーに、活躍の機会を奪われました … 」

 


AP ( アジア・パシフィック ) のヘッドであるバートに呼び出された、マサシや私をはじめとする金融部門のマネージャーたち。どうも、チームワークの観点で問題があったようなのですが、苦情を言った ( つまり、バートにチクッた ) 本人が、よりによって同僚の金融部門マネージャーであるジョーンズだったのです !


バート 「では、ジョーンズから話をしてもらおう … Jones, please!」


ジョーンズ 「OK, Bert!」


ジョーンズの言い分は、以下のようなものでした。

 

1 ) 1 週間前のこと、ジョーンズが懇意にしているクライアント ( お客様: 某保険会社 ) から、ある案件について提案依頼があった 
2 ) 早速、ジョーンズは提案活動を開始するために、プロジェクトチームを組成しようとした。しかし、ジョーンズは 2 ヶ月前に中途入社したばかりで、どのようなスタッフがいるのか、どうすればメンバーを集められるのか、わからなかった 
3 ) そこでジョーンズは、同僚のマネージャーにメンバーを紹介してくれるようメールを出して依頼した。しかし、同僚のマネージャーからは、だれ一人として返事が来なかった 
4 ) このままでは、このクライアントに対する提案を失敗してしまうかもしれない。いや、もうすでに失敗しそうだ … 失敗したら、どうしてくれるんだ … ニャロメー !


… 私は急いで自分のメール Box を探しました。「ジョーンズ、ジョーンズ … あ、あった ! 」

 

Title : Staffing request for XXX project 

This opportunity is closely in-line with XXX's overall strategy of cost reduction. 

We need these resources to start on mid-March : 

Senior Consultant : Part-time (about 50%). Experienced / expert with process model 

Junior Staff : Full time. Very good at insurance operational process. … 



私 「Jones, when did you send the mail to us? ( そのメールって、いつ送ってくれたの ? )」 


ジョーンズ 「night before last! ( おとといの夜だ ! )」 


ジョーンズ以外のマネージャー 「お、おとといの夜 !? 」 


われわれが驚いた … というか、あっけに取られたのには、 2 つの理由があります。


・理由 1 「おとといの夜に出したメールの返事が来ないからって、これほどまで大騒ぎにせずに、もう少し待てなかったのか ? 」 
・理由 2 「こんなことぐらいで、いきなり AP ヘッドにチクる必要があったのか ? 」


思わず、「ふざけんなよ、ジョーンズ ! 」と言いたくなりますよね。しかし、ジョーンズがとったこの 2 つの行動こそ、外資系企業において外国人と仕事をする上で、肝に銘じておくべきことなのです。

Request には、すぐに返事

常、日本人の感覚ですと、メンバー募集のリクエストが来た場合、まず自分配下のメンバーの状況を十分に把握した上で、 Yes なり No なりの返事を返すと思います。それを調べるのに 1 日や 2 日程度かかるのは、日本人的には「許容範囲」でしょう。ですから、おとといの夜に来たメールに現時点で返信していなくても、まだ「調査期間」なわけですから、責められる筋合いもないわけです。

 


しかし、外国人の感覚は違います。彼らは、「 Request を出しているのだから、確定ではないにしても、見通しぐらいはすぐに返して欲しい」と考えています。だから、ジョーンズのメールを見た瞬間に、「ちょっと当たってみるが、無理そう … 」とか、「 1 人なら出せそう。 2 日以内に最終確認して連絡する … 」といった返事を出すのが常識だということになります。


実は私、この考え方については十分理解しているつもりでした。特に外国人から来たメールには、原則その場で返事をように心がけていたにもかかわらず … ふ、不覚にも、ジョーンズのメール、見過ごしてたんじゃーーーーー ( T-T )  ここ 2 、 3日、忙しかったんじゃーーーーーーーーーー ( T-T ) ( T-T ) 許してくれやーーーーーーーーー ( T-T ) ( T-T ) ( T-T ) ヒックヒック …


日本企業から転職して間もないマサシなどは、「どうして上司でもないジョーンズに、速攻返事してやらないといけないのか、ブツブツ … 」と言っていました。が、外資系では、上司も同僚も部下もないのです。 Request が来たら、相手がだれであろうが、まず状況を伝えてやる。状況が伝えられないような場合でも、「私はあなたの Request を見ましたよ。今、対応していますよ」ということを返す。これが基本なのです。


もちろん、相手が部下の場合には、放置されるケースもままあります。しかし、私の経験では、よくできる上司ほど、部下に対するレスポンスも恐ろしく早いように思います。

外資の Escalation

今回のように、階層を何段も飛び越えた上司に直接チクることを、 Escalation ( エスカレーション ) といいます ( 辞書には、「上申」という意味で載っているのですが、外資でいう Escalation というのは、いきなり社長や役員クラスに ( 中間をすっ飛ばして ) 告げ口をするような、かなり強烈な語感があります ) 。実はこの Escalation という行為、外資では頻繁に見られます。

 


そもそも、なぜ Escalation が行なわれるかというと、それは「意思決定の時間を短縮するため」に他なりません。日本人的には、まず同僚のマネージャーに苦情を言って、それでもダメなら直属の上司である Thomas に言って … というように、段階を経るのですが、このやり方では時間がかかるのも事実。外資の考え方は、人間関係で多少波風を立ててでも、時間を節約する方がいいという考えなのです。


あと、今回の件で言えば、ジョーンズがわれわれ日本人マネージャーに対して、自分の力を誇示する意味合いもあったように思います。「なめんなよ ! オレを怒らせると、こうなるんだぜ ! 」てな、感じでしょうか。


「OK, Jones … 少しコミュニケーションがうまくいかなかったようだ。だけど、われわれは Jones の邪魔をする気はないし、 Jones の力を必要としている。リソース ( 要員 ) リクエストについては、俺のところは 1 名出せるかも … マサシのところは … 」


状況を理解した私は、即座にジョーンズと他のマネージャーを取り持つよう、働きかけました。こんなとき、「 I’m sorry, Jones...」などと、謝る必要はありません。謝ること=故意に、ジョーンズの邪魔をした、と取られかねません。あくまでも、「コミュニケーション・ミス」でいいのです。一方のジョーンズも、早く仲を取り持って欲しいと思っているはずです。いつまでもスネていても、何も始まりません。


「 I’m very happy... ( とてもハッピーだ … )」 さっきまで怒っていたバートも、ニコニコ顔。単純といえばそれまでなのですが、ま、外資のえらいさんというのも、つくづく大変です。 
バート 「Thank you, everyone. Keep working. Thomas and Takashi, please stay here for a while … ( みなさん、ありがとう。仕事に戻ってください。トーマスとタカシは残ってくれるかな …)


私 「へ ? 」


バート 「I’d like to know the reason why proposal to A bank was failed … ( A 銀行への提案が失敗した理由について聞きたいんでね … )」


や、やばっ ! 今度こそ、本格的に怒られる … トホホ、また 「 I’m very sad...」が始まっちゃうよーーー、助けてーーーーーーーーーーっ ! ( T-T ) ( T-T ) ( T-T )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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