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タカシの外資系物語

ホワイトカラー・エグゼンプションに思う (その 1 )2007.02.13

ホワイトカラー・エグゼンプションとは何か ?

「ホワイトカラー」「ブルーカラー」 … みなさんは、これらの言葉から、どのようなことを連想されますか ? 


実は私、大学入試の英作文で、「ホワイトカラー」を、「white-color」と書いて間違えたという苦い経験を持っています。Color ( 色 ) ではなくて、Collar ( 襟 ) 。結局は「色」のことを表現しているのですから、 color でも collar でもどっちでもいいじゃないかと思ったのですが、間違いは間違いです。 


話を戻しましょう。この 2 つの言葉、そもそも職種を色で識別するということで、何となく差別的なニュアンスがあることは否定できません。よって、これまでは、あまり好まれて使われる言葉ではなかったように思います。しかし最近、この言葉が頻繁にマスコミをにぎわすようになってきました。 


「ホワイトカラー・エグゼンプション ( white collar exemption ) 」、日本語では「自立的労働時間制度」とか、「労働時間規制除外制度」と呼ばれています。 Exemption というのは、「除外」ということ。つまり、ホワイトカラー・エグゼンプションというのは、ホワイトカラーの社員を労働時間の規制から除外し、自分の裁量で何時間働いてもいいが、残業代は支給されない … という制度のことを指しています。 2005 年に経団連が提言を行い、 2006 年に厚生労働省の労働政策審議会が素案を作成して立法化を目指していましたが、政府は 2007 年の通常国会への提出を先送りしました。先送りの理由は、労働組合大手の反発と選挙に対する配慮が大きいのでしょうが、制度自身に詰めの甘い部分も多く、導入は時期尚早というのが実際のところでしょう。 


そもそも、日本の労働基準法では、「 1 日 8 時間、週 40 時間以上働いてはいけない」というルールがあります ( これは労働基準法第 36 条で規定されているので、「 36 ( さぶろく ) 協定」と呼ばれています ) 。それを超えて働く場合には、組合と労働者代表が協定を結び、労働基準監督署に届ける必要があります。つまり、みなさんが行っている「残業」という行為は、法律を超えた例外的な扱いなのだということを意味します。残業は例外なのですから、何らかの見返りが必要です。なので、割増賃金や残業分を休日に振り替えてもいいよ、ということになっているのです。 


以上のような措置は、一般社員 ( = 労働組合員 ) にしか適用されず、管理職は規制対象からはずれます。つまり、いくら残業しても、残業代も出なければ、休日振替もできません。ホワイトカラー・エグゼンプションとは、一般社員についても、まるで管理職のように規制対象からはずそうという考え方なのです。

問題の本質

では、賛成派は何が賛成で、反対派は何に反対しているのでしょうか。次のような例を考えてみましょう。いまここに、ある作業を 2 時間でやる A さんと、 3 時間かかる B さんがいるとします。 B さんは、 A さんの 1.5 倍の作業時間がかかるわけですから、同じことをするためには残業しなければなりません。 B さんが残業した結果、 A さんよりも多くの給料をもらうことになりますが、完成した作業は A さんと同じです … 


「何がなんでも、こりゃおかしいだろ ! 」という考えに立つのが、ホワイトカラー・エグゼンプション賛成派です。 A さんも B さんも、同じことしかしていない ( 同じアウトプットしか出していない ) のに、より作業の遅い B さんの方が多くの給料をもらえるというのは納得いきません。 


では、反対派というのは B さんのような人たちなのでしょうか。それは少し違います。ホワイトカラー・エグゼンプション反対派の大半は、基準が曖昧なまま全てのホワイトカラーに制度が適用されてしまうと、結局は会社に言われるままに、無償で残業をしてしまうことを危惧しているのです。では、現状の制度案では、どんな社員に適用されることになるのでしょうか。 


2006 年に厚生労働省が出した素案では、以下のような社員を対象としています。 

( 1 ) 労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事している 

( 2 ) 業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある 

( 3 ) 業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしない 

( 4 ) 年収が相当程度高い 

… 確かに、このような曖昧な ( わけのわからん ) 基準では、反対派の危惧するのもわからないでもありません。そもそも、これら 4 つの基準は並列して並べられるような性質のものではありません。例えば「( 4 ) 年収の基準」は、( 1 ) ~ ( 3 ) が一定の高度なレベルにある結果として導かれる条件なのであって、問題の本質ではありません。( 1 ) ~ ( 3 ) の条件が定性的すぎて計量化できないので、無理やり ( 4 ) の条件を加えたのでしょうが、これを入れたがために、「じゃ、年収はいくらなのか ? 700万か ? 1,000万か ? 」というような、本質を無視した感覚的な議論を生んでしまうのです。

日本企業への導入方法は ?

さて、以上述べたことがホワイトカラー・エグゼンプションとして騒がれている内容の概略です。問題を整理してみると、「ホワイトカラー・エグゼンプションという考え自体は悪くはないが、対象者の基準が曖昧なために、このままでは企業に悪用されかねないので改良が必要」 … と、まぁ、こんな感じでしょうか。 


では、どのように改良すればいいのか ? 外資系企業の立場から考えてみましょう。そもそも、ホワイトカラー・エグゼンプションというのは、アメリカの考え方です。このことは、横文字を使っていることからもわかります。実際に、私はアメリカ系の外資系企業に勤めていますが、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の枠組みの中で仕事をしています。どちらかというと、自分からそれを望んだからこそ、日系企業から外資系企業に転職したのです。上で述べたA さんと B さんの例で言えば、自分は A さんに該当するので、 B さんと同じ ( ないしは、それ以下の ) 評価を得たくないと考えたからこそ転職したわけです。 


私だけではなく、外資系企業に勤めている人の大半は、このように考えていると思います。なので、正直言って、日本版ホワイトカラー・エグゼンプションについても、「何を今さら … 当たり前じゃないの ? 」という感覚を持っていることは否定できません。 


「やるならやればいいさ。でも、きっと失敗するだろうけど … 」なぜ失敗するのでしょう ? どうすれば、ホワイトカラー・エグゼンプションを日系企業にうまく導入できるのでしょうか ? 次回のコラムでは、外資系企業に勤める立場から、その改善策を述べてみたいと思います。 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。

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